「人生100年時代」とも言われる今、人材一人ひとりに長期的なキャリアプランを描いてもらうことは、企業にとって欠かせない取り組みとなっています。そこで注目を集めているのが、「キャリアデザイン研修」です。今回は、「キャリアデザイン研修の効果」や「研修の効果を最大化させるポイント」を分かりやすく紹介します。
※「キャリアデザイン」については、「【手法例つき】キャリアデザインの正体とは?目的・メリットを解説します」で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
キャリアデザイン研修とは、人材が自分の経験を振り返り、自己理解を深め、今後の職業人生を設計するための研修を指します。研修と聞くと専門スキルや知識を習得するイメージがあるかもしれませんが、キャリアデザイン研修は「マインド」を変えるための研修です。そのため、研修では一般的に以下のような内容が行われます。
◆「自己診断による強みの理解」
◆「周囲からの期待・役割の理解」
◆「キャリアの棚卸し」
◆「中長期的なキャリアプラン・行動目標の設定」
そして、専任講師の指導のもと、受講者自らが「キャリアプランニングシート」と呼ばれる職業人生の設計図を作成するイメージです。また、キャリアデザイン研修は30代・40代・50代など人生の節目ごとに開催されることが多く、各年代で自分の人生を見つめ直し、次のステージへ進むための重要な契機として活用されます。
ちなみにキャリアデザイン研修が注目されている背景には、VUCA時代(※)と言われる先行き不透明な社会状況があります。市場のグローバル化やIT技術の進化、消費者ニーズの多様化など、企業を取り巻く環境の変化はめまぐるしく、企業も柔軟な対応を求められているのが現状です。そこで、「時代に即応しながらキャリアを描けるような、自律的な人材を育てたい」という狙いからキャリアデザイン研修を導入する企業も増えています。
※VUCA(ブーカ)......Volatility(不安定)・Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をとったもの。
録画セミナ-「はじめてのキャリアデザイン研修」
キャリアデザイン研修の説明、自社に適した研修構築のポイント、他のキャリア施策との組み合わせ方についてご説明します。
マンパワーグループの調査(※)によれば、「キャリアデザインを実施している」「実施を検討している」と回答した企業は全体の56.9%にのぼります。また従業員数1,000名を超える大手企業では、その割合が69.3%です。人材の定着率や満足度向上を目的に導入する企業も多く、キャリアデザイン研修の注目度の高さがうかがえます。
ちなみに受講者側へのアンケート調査では、「受講してみたい研修内容」について、どの年代も「自己理解・自己分析」を最も多く挙げています。また、次点として20代以外の全年代が「自分の市場価値を知り、社外から見た伸ばすべきポイントの把握」と回答。「自分の客観的な強みを知りたい」という受講者が多い傾向が読み取れます。このように企業だけでなく、受講者側の関心が高いのもキャリアデザイン研修の特徴と言えるでしょう。
※参考:キャリアデザイン研修を実施・実施検討している企業は56.9%|マンパワーグループ
それでは、キャリアデザイン研修を実施することのメリットとは何でしょうか。
研修の効果について、大きく3つ紹介します。
※キャリアデザインの役割について詳しくは、「キャリアデザイン研修が果たす役割とは」をご一読ください。
キャリアデザイン研修の狙いは、自分のキャリアを自身で描けるような、主体的な人材を育成することにあります。主体的な人材は、他人から細かく指示を受けずとも、自分の価値観に沿って業務を進められるようになるものです。つまり、キャリアデザイン研修を通じて、自分で考え、判断し、行動できる「自律型人材」の育成にもつなげられます。現在は環境の変化が激しく、必要なスキルを自己研鑽で身につけられる自律型人材が求められる時代です。そのため、企業としても自律型人材を増やすことで、より永続的な発展につなげられるでしょう。
≪一緒に読みたい記事≫自律型人材がなぜ今求められるのか?具体的な"7つ"の育成方法も紹介
キャリアデザイン研修で作成する「キャリアプランニングシート」は、普段の業務で何度も見返すことができます。従業員一人ひとりが自分の進みたいキャリアをいつでも再確認できるため、業務における目標意識を常に持ち続けることが可能です。努力の方向性が分かるようになれば、業務に対するモチベーションもおのずとアップします。従業員の意欲が高まることで、自然と社内の活性化につながり、生産性の向上も期待できるでしょう。
人材一人ひとりの目標が分かれば、企業としても支援しやすくなります。例えば、図書費用の援助で自己研さんをサポートしたり、キャリア相談窓口を設置して面談をしたりするのもひとつの方法です。また、「社内公募制度」や「社内FA制度」など、従業員が自由に異動先を選べる人事異動制度を導入するのも有効でしょう。自発的なキャリア形成を会社として支援することで、従業員の自社に対するエンゲージメント(愛着心や貢献心)も高まります。結果として定着率の向上が期待できるため、長期的に見て人材不足の解消につなげることも可能です。
≪一緒に読みたい記事≫【保存版】社員の定着率を上げるリテンション手法"7選"
人は年代によって組織や社会から求められる役割が変わってくるため、キャリアの描き方にも違いが出てきます。そのため、キャリアデザイン研修の目的も、受講者の年代によって違いが設けられていることが多いです。そこで今回は、30代・40代・50代・定年前と、年代に分けてキャリアデザイン研修の目的や方向性を紹介します。
より詳しいカリキュラムや企画方法について知りたい方は、「キャリアデザイン研修の企画方法とは?プログラムの作り方や具体例も紹介!」をご覧ください。
成長実感を味わいやすい20代と比べて、30代になると成長に"行き詰まり"を感じる人も多いです。そのため、30代のキャリアデザイン研修では、「今までのキャリア・成果の棚卸し」「不成果の見直し」「自身の強みの再確認」などを重点的に行います。また、自分のなりたい姿に向けて、「何を・いつまでに・どうするか」という具体的な行動目標を設定。キャリアの方向性をあらためて再認識し、閉塞感を打破するための機会として活用します。
40代ではマネジメントを担う人材も増え、30代よりもさらに広い視点での組織貢献が求められます。そのため、40代を対象としたキャリアデザイン研修では、「マーケットや業界の動向が自社に与える影響」「組織内における戦略や人事制度の変化」などの理解を目的とすることが多いです。そして、組織内で求められている役割を再認識し、あらためてアクションプランを立案。自身の活動領域をさらに広げるための、契機として活用します。
50代になると、プレイヤーから育成や管理にまわる機会が増え、キャリアの停滞感・今後への不安を感じる人も少なくありません。そこで50代向けのキャリアデザイン研修では、「定年を見据えて自身の"働く意味"を考える」「自身の強みを再認識し、貢献できる領域を定義する」といった内容に軸足が置かれることが多いです。「組織にどう貢献できるか」をあらためて考え直し、新しいキャリアを設計することで、働く原動力を高めます。
「人生100年時代」と言われる今、定年は決して終着点ではありません。人生における再出発地点として、地域社会や家族との関わりに目を向け直すタイミングでもあります。そこで定年前(50代後半)のキャリアデザイン研修では、「人や地域とこれからどう関わるか」「人生の目的や生きがいは何か」「余暇や趣味の時間をどう使っていくか」などを考察。今日までの軌跡を振り返り、自分らしい人生を歩み続けるための準備を行います。
キャリアデザイン研修は、日常から離れて自身のキャリアを内省し、モチベーションを高める機会としては非常に有意義です。ただ、「しばらくすると意欲が下がった」「設計したプランを実行に移せなかった」というケースも少なくありません。キャリアデザイン研修は、キャリアプランを実行するための"受け皿"が社内にあってはじめて、高い効果が期待できるのです。そこで今回は、研修の効果を最大化させる4つのポイントを紹介します。
キャリアプランと業務を結びつけるためには、日々の意識づけが欠かせません。そのため、上司が積極的に働きかけ、部下が研修内容を活かせているかどうかを確認するようにしましょう。代表的な取り組みのひとつが、四半期に1回・年1回など、定期的に行う「キャリア面談」です。面談では、研修中に作成したキャリアプランニングシートを見ながら、目標の振り返りやズレの確認を行います。上司が相談に乗りながら、目標をかなえるために必要なスキルや行動をすり合わせることで、本人も高いモチベーションで業務に臨めるようになるでしょう。
従業員がキャリア形成について迷ったとき、すぐに誰かに相談できるような環境を作ることも大切です。ひとつの取り組みとして、キャリア相談窓口の設置が挙げられます。キャリア相談窓口では、社内のキャリアカウンセラーが、ライフイベントや転職をはじめとするキャリアパスの相談に乗り、アドバイスを行います。話題によっては直属の上司には相談しにくいこともあるため、キャリアカウンセラーは非常に心強い存在になるでしょう。
また、「社外の人間になら本音を言いやすい」という例も少なくありません。その場合には、社外のキャリアカウンセラーを活用するのも効果的です。あえて第三者に相談に乗ってもらうことで、客観的な視点でアドバイスをもらえます。このように従業員がキャリアに関して気づきを得られる機会を、積極的に作るようにしましょう。
キャリアデザインブックとは、自社のキャリア支援に関する情報をまとめた冊子のことです。例えば、「自社におけるキャリア開発の定義」「キャリア相談窓口の利用方法」「自己診断のチェックリスト」などを掲載します。こうしたハンドブックを作っておくことで、従業員がキャリア形成に迷ったときすぐに必要な情報を得ることが可能です。また、企業として真摯(しんし)にキャリア支援へ向き合う姿勢を、従業員に伝えるきっかけにもなるでしょう。
従業員一人ひとりにキャリアを自由に選択してもらえるようにするには、企業として柔軟な人事異動制度を導入することも大切です。例えば、各部署が必要な人材を公募する「社内公募制度」や、従業員自ら希望の部署へ売り込む「社内FA制度」、従業員が希望の部署を申請できる「自己申告制度」があります。また、異動まではいかないまでも、希望部署の仕事を一定期間体験できる「社内留学制度」を活用するのも有効です。人材不足が叫ばれる今だからこそ、社内に豊富なキャリアの選択肢を用意しておくことで、定着率の向上も図れるでしょう。
キャリアデザイン研修の効果を高めるには、研修での学びを普段から従業員に意識させることが大切です。まずは「キャリアプランニングシートを普段から持ち歩かせる」「面談で定期的に振り返らせる」などの小さな取り組みから始めていきましょう。研修後の効果的な取り組みについては、研修サービスの専門会社に相談するのも有効です。キャリアデザイン研修からその後の人材育成まで、ぜひ一度相談してみることをおすすめします。
ライトマネジメントのキャリア開発サービスは、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40代・50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。
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お役立ち資料|社員の"キャリア不安"に効くキャリアデザイン研修の重要性と正しい進め方とは?