終身雇用制度が崩れ、自ら人生を設計する必要がある今、注目を集めているのが「キャリアデザイン」という言葉です。最近では、キャリアデザインを目的とした数多くの研修も開催されています。そこで今回は「キャリアデザインの意味」「キャリアパス・キャリアプランなどとの違い」「具体的なキャリアデザインの手法」などを紹介します。
より具体的なキャリアデザインの流れや実施方法については「「"未来逆算"のキャリアデザイン」が社員を変える?専門家の語るキャリア設計術とは」で解説しておりますので、あわせてご一読ください。
まずは「キャリアデザイン」の意味、そして「キャリアパス・キャリアプランなどとの違い」から説明します。
キャリアデザインとは、職業(仕事)で何を目標とするのかを中心に、個人の生き方も含めて総合的に構想することです。構想の範囲が仕事だけでなく、広く人生全般にまでわたっていることが、キャリアデザインの特徴だといえるでしょう。また、"自ら"決めるという部分も大切です。というのも、終身雇用の文化が薄れてきて、企業が主体となって社員のキャリアを決める時代は終わりつつあります。個人一人ひとりが自分の人生を設計する必要があるのです。
◆「キャリアパス」との違い
キャリアパスとは、「パス(path)=道筋」という言葉のとおり、昇格・昇給をはじめ企業で出世していく過程のことをいいます。キャリアパスの特徴は、それが「企業内での成功」に限定された言葉だということです。その点、キャリアデザインは職業人生すべてにおける構想なので、後者のほうが幅広いです。
◆「キャリアプラン」との違い
キャリアプランとは、「プラン=計画」という言葉どおり、自分が仕事でどんな経歴を積んでいくかの計画です。これは「転職」や「独立・起業」も含まれるため、キャリアパスよりも広い範囲になります。また、キャリアデザインはそこにプライベート・ライフプランなども含まれるため、キャリアデザインのほうがより包括的です。
キャリアデザインに取り組むときは、will・can・mustの3つで考えるとより計画を立てやすいです。
1つめの「will」は、「仕事においてやりたいこと」を意味します。例えば、「スポーツに関わる仕事がしたい」「絵を描く仕事がしたい」など、自分の好きなこと・将来の夢・趣味などを思い浮かべると出てくる内容です。
2つめの「can」は、「できること」を意味します。例えば、「宅建の資格を持っている」「C言語を使ってプログラミングできる」という資格・経験に加え、「人前で恥ずかしがらずに話せる」といった能力も含まれます。
3つめの「must」は、「やるべきこと」を意味します。例えば、「上司からあと1年でリーダーになれといわれている」「会社の公用語が英語になるので英語を学ばないといけない」といった、組織・社会から求められることです。
これら3つを円で描いて、ちょうど重なる領域が自分の進むべき道だといわれています。もちろん「若いうちは"やりたいこと"を優先したい」「不況のなかでも地に足をつけて生計を立てるために"できること"を大切にしたい」など、年齢や世のなかの状況によっても変わってくるものです。自分のライフステージに合わせて、職業人生を設計していく必要があるでしょう。
Will Can Mustのそれぞれの意味や従業員のWill Can Mustを満たす方法は「Will Can Mustとは?3つにズレがある人材への企業の対処法」で詳しく解説していますので、ご一読ください。
上記で紹介した「can(できること)」「must(すべきこと・期待されること)」の輪を、相乗効果で広げていける能力が「ラーナビリティ」です。詳しく説明するとラーナビリティ(learnability)とは、会社から必要とされる人材であり続けられるよう、スキルを素早く定着させ環境に適応する意欲・能力のことをいいます。1つの企業から終身雇用される可能性が低くなった今、社員はいかに企業から求められ続けるかが大切です。ラーナビリティを高めておけば、どんな変化がおきても企業に重宝される存在になれるため、近年大きな注目を集めています。
大きく2つあり、「一人ひとりが価値を高める必要があること」と「働き方が自由になっていること」です。
まず「一人ひとりが価値を高める必要があること」について説明します。今は「人生100年時代」ともいわれ、一人あたりの働く期間は延びる傾向にあります。一方、グローバル化で競争が激しくなり、企業は常に倒産・人員削減と隣りあわせです。つまり働く側からすれば、「どこでも通用し認められる能力を高めること」が大切です。そのためにどんなキャリアを築き、どんな能力を身につけるのか。その設計が必要になるのです。
もう1つは、「働き方が自由になっていること」です。今では「副業・兼業」や「在宅ワーク」など、働き方の多様化が認められ始めています。つまり、キャリアを選択する幅も広がっているということです。そのなかからどんな職業を選び、どんな働き方をしていくか。その想像をしておくこともまた、大切になってきています。
では、企業が社員のキャリアデザインを支援するメリット・デメリットとは何でしょうか。それぞれ紹介します。
◆優秀な人材の確保・採用ができること
社員のキャリア設計を親身に支えてくれる企業は、社員から見ても魅力的ですし、対外的にイメージが良いです。またマンパワーグループの調査によると、約40%の従業員が、新しい就職先を選ぶ指標として「キャリア開発」のチャンスを優先しています。だからこそ、キャリアデザインに力を入れることで既存社員のモチベーションが上がるだけでなく、社外から優秀な人材を確保できるチャンスも高まるのです。
◆企業の生産性が上がること
キャリアデザインによって、自らのライフプラン・価値観で主体的に仕事を進められる人材(自律型人材)が増えていきます。自律的に働ける人材が増えれば、企業としての生産性も高まるでしょう。コストや時間が削減できれば、そのぶん新規事業に割くリソースも増やせます。企業にとって社員のキャリアデザインを支援することは、業績向上にもつながる施策だといえるでしょう。
◆退職意向が出ること
キャリアデザインを行った結果、新しいキャリアのために退職を選ぶ社員も出てくるかもしれません。ただ、上記で紹介したように、「能力開発を支援してくれる会社で働きたい」と考える社員は多いです。新しい人材が外から入ってくるケースもあります。また今では、退職してから再び同じ職場へ戻ってくる社員も少なくありません。中長期的に見て、キャリアデザインの効果・価値を考えることが大切です。
いざキャリアデザインを実行に移すとき、何から始めればよいのでしょう。ここでは具体的な手法を紹介します。
キャリアデザイン研修とは、社員が今後のキャリアを設計するための研修です。基本的には外部の研修会社と連携して実施し、社員はプロの講師によるアドバイスを受けながら、自己分析・キャリアプランニングを進めます。研修企業に依頼すれば、講師がキャリアデザインの価値から教えてくれますし、自己分析のために最新の「市場価値分析ツール」も有効に活用してくれるでしょう。研修は外部と二人三脚で進めることで、より効果を発揮します。
詳しくは「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」で解説しております。あわせてご覧ください。
上司や先輩が社員と面談をしながら、社員の将来のキャリアを一緒に考えるのも効果的です。具体的には、年次の近い先輩が助言役となり、後輩の相談に乗る「メンター制度」を活用する企業もあります。また、キャリアデザイン研修と合わせて外部のキャリアカウンセラーに依頼すれば、より客観的な視点からカウンセリングすることも可能です。そして、計画が現実的かどうか確かめる意味でも、社員には1年後・3年後・5年後など、定期的に振り返らせることが大切です。
社員が柔軟に「職種・部署」を変えられる仕組みを作ることで、自律的なキャリア形成を支援できます。例えば、自分の強みを希望の部署へアピールできる「社内FA制度」、欲しい人材を各部署が会社全体から募る「社内公募制度」、希望部署を自分の実績・キャリア計画と合わせて人事に申告する「自己申告制度」などが代表的です。また、定期的に部署を異動する「ジョブローテーション」も多くの企業に浸透しています。キャリア研修やカウンセリングで自分のキャリアを設計し、その受け皿として異動制度を整えておくことが大切だといえるでしょう。
キャリアデザインに有効な研修は、専門ノウハウを持つ外部企業と協力することで、よりスムーズに進むケースが多いです。ぜひ社員の現状・なりたい姿などに合わせて、研修サービスを活用いただければと思います。
ライトマネジメントのキャリア開発は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。
組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40代・50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。
キャリア開発の具体的な取り組み方法や成功させるポイントついてはこちらのEbookで解説します。あわせてご覧ください。