

キャリアデザイン研修(キャリア研修)とは、社員が自身の強みや組織での役割を再認識し、今後のキャリアを設計・見直すための研修です。
キャリアデザイン研修を企画する際は、プログラムの内容だけでなく、研修の目的や対象者、研修後に期待する行動、上司との対話まで含めて設計する必要があります。
この記事では、キャリアデザイン研修を企画する5つのステップと、Will・Can・Mustを用いたプログラム例、研修の効果を高めるポイントを解説します。
キャリアデザイン研修は、次の5つのステップで企画します。
それぞれのステップについて、具体的に見ていきましょう。
キャリアデザイン研修を企画する前に、そもそも「なぜ」研修を実施するのかを明確にする必要があります。研修の目的が明確になっている方が、期待した効果がより得やすくなるためです。そのため、まずは各部署の管理職や社員にヒアリングを行い、現場の課題感を把握することから始めましょう。例えば、「社員が自身のキャリアを考える機会が少なく、将来の方向性を描きにくくなっている」「上司との対話や社内でのキャリア形成の選択肢が十分に伝わっていない」といった課題がある場合には、キャリアデザイン研修が施策の一つとして考えられます。
また、現場だけでなく経営者の要望も事前に知っておくことが大切です。経営者の合意を得ておくことで、より研修の優先順位を高めることができ、対象者に参加を促しやすくなるためです。例えば、「時代の変化に対して柔軟に対応できる人材を育てたい」「事業や役割の変化に対応できるよう、社員のキャリア自律を促したい」といった意図が経営者にある場合には、キャリアデザイン研修の効果とも合致するため、実施する意義も深まるでしょう。
この段階では、次の点を整理しておきましょう。
例えば、「社員のキャリア自律を促進する」といった抽象的な表現だけで終わらせず、「30代社員が今後の役割や成長の方向性を整理し、上司との対話につなげる」のように、対象者と期待する変化まで具体化することが重要です。
キャリアデザイン研修を実施することが決まったら、研修のゴールを設定します。目標を明確にすることで、プログラムを設計しやすくなり、実施後の効果検証や改善にもつなげられます。
ゴールを設定する際は、「考えが整理された」「気づきが得られた」といった内省だけで終わらせず、研修後に期待する行動や上司との対話まで見据えることが重要です。
例えば、次のように具体化します。
この段階で、「研修後に誰が、どのような状態になっていればよいか」を明確にしておきましょう。
研修のゴールを実現するために、次の項目を具体化します。
| 検討項目 | 決める内容 |
|---|---|
| 対象者 | 年代、階層、役割、受講人数 |
| 研修内容 | 扱うテーマ、講義とワークの構成、成果物 |
| 実施形式 | 対面、オンライン、eラーニング、組み合わせ |
| 時間・日程 | 半日、1日、複数回などの実施時間と時期 |
| 講師 | 社内講師、外部講師、両者の役割分担 |
| 研修前後の施策 | 事前課題、上司への説明、研修後の面談や実践 |
特に重要なのは、内容を盛り込むことではなく、研修のゴールに必要な要素を選ぶことです。
参加者の年齢・階層を決定します。キャリアデザイン研修は、20代・30代・40代・50代・定年前のようにキャリアの節目となる年代や役割の変化に合わせて実施されることがあります。特にどの年齢層の課題が大きいのかを把握し、参加者を決めるようにしましょう。ちなみにマンパワーグループの調査(※1)では、キャリアデザイン研修の対象として企業が考えている年代は「30代」が70.1%と突出していました。30代は、管理職を目指すのか、専門性を深めるのかなど、今後の役割や方向性を考える機会が増える年代です。キャリアに迷う年代ほど、キャリアデザイン研修の必要性も高まります。
実際の研修の流れ・プログラムを企画します。一般的なキャリアデザイン研修では、社員本人にWILL(自分のしたいこと)・CAN(強み)・MUST(組織における役割)を検討させたうえで、具体的なアクションプランを立てさせることが通例です。「自己理解」と「キャリア設計」をバランスよく実施できるよう、内容と時間を配分しましょう。また、研修の効果を高めるためには、参加者に集中力を維持させるための工夫も必要になります。例えば、「講義でキャリアデザインの意義を伝える」「組織からの役割についてグループディスカッションをさせる」など、座学とワークを織り交ぜながら行うことも大切です。
研修の日程を検討します。一般的にキャリアデザイン研修は、1~2日間かけて行われることが多いです。1日で行う場合は、「午前中:キャリアデザインの意義を知り、自己理解を深める」「午後:自身のキャリア目標を定め、行動計画を立てる」など、各時間帯でテーマを明確に決めると参加者の意識も醸成しやすいでしょう。研修中は参加者が業務を行えなくなってしまうので、スケジュールは現場の管理職と話し合って決める姿勢も大切です。
講師は、研修の目的や社内の実施体制を踏まえて選定します。社内講師には、自社の方針や社員の実情を踏まえて伝えやすいという良さがあります。一方、参加者の内省や対話を深めたい場合には、キャリア研修の実施経験やファシリテーション力を持つ外部講師を活用する方法もあります。
複数拠点の社員が参加する場合や、柔軟な受講機会を設けたい場合には、オンラインやeラーニングも選択肢になります。
※参考1:キャリアデザイン研修を実施・実施検討している企業は56.9%|マンパワーグループ
研修の効果を正しく振り返るためには、効果測定の方法をあらかじめ決めておくことが大切です。キャリアデザイン研修で主に使われる手法としては、「アンケート」と「キャリアプランニングシート」の2つがあります。
アンケートは、研修の直後に参加者に回答させます。「どのくらい効果を実感できたか」「研修で良かった点・改善してほしい点はあるか」「具体的な学びはどのようなものか」などの設問を置くことで、研修の効果を定性的・定量的に把握することが可能です。また、「キャリアプランニングシート」とは、自身の目指すべき姿と具体的な行動計画をまとめたシートのことを指します。キャリアプランニングシートは研修中に参加者本人に作成させ、研修後にも定期的に上司と進捗を振り返らせることで、日々の業務における研修の効果を測定できるでしょう。
効果測定は、研修直後だけでなく、一定期間後の行動や対話の変化まで含めて設計します。
| 確認する時期 | 確認する内容 | 方法の例 |
|---|---|---|
| 研修直後 | 理解度、納得度、気づき | 受講後アンケート |
| 研修終了時 | 今後の目標や行動 | キャリアプランニングシート |
| 1~3か月後 | 行動の実践状況 | 本人へのアンケート、振り返り |
| 上司との面談時 | 対話や役割認識の変化 | 上司との面談、ヒアリング |
ただし、アンケート結果やシートの完成度だけで研修の成否を判断してしまうと、「やったつもり」で終わってしまう恐れがあります。重要なのは、研修後に上司との対話が実際に行われているか、行動や役割意識にどのような変化が生まれているかといった、現場での変化を継続的に確認することです。
研修の骨子が決まったら、当日までに準備や手配を進めます。具体的には、「講師の手配」「会議室の予約・セッティング」「参加者への告知」「事前課題の配布(必要な場合のみ)」「テキストの作成」「PC環境の設定」「アンケートの作成」などが必要です。現場とも連携しながら、できるだけ早期から準備を進めるようにしましょう。
「キャリア研修(キャリアデザイン研修)で何を行えばいいか分からない」「研修プログラムの作り方を知りたい」という方も多いかもしれません。そこで本章では、キャリアデザイン研修に盛り込むべき効果的なプログラム例を紹介します。
まずは研修の意義を参加者へ伝えるうえでも、「キャリアの意味」や「キャリアデザインの必要性」などについて座学で解説します。例えば、働く期間の長期化、社員の価値観・キャリア観の多様化などのキーワードと関連づけて、「キャリアを自律的に考える重要性」を伝えるのもひとつの方法です。また、計画的偶発性理論やプロティアン・キャリアなど、キャリア形成に役立つようなキャリア理論も紹介することで、参加者の興味喚起を図れるでしょう。
人は自身の「強み」を最大限生かすことで、自分らしいキャリアを歩めるものです。そのため、参加者に過去の経験を振り返らせ、自分のスキル・知識・能力などを再認識させるパートを設けます。過去に乗り越えた修羅場体験や成長の機会なども内省させることで、より今後のキャリアに対して自信を持たせることができるでしょう。
人は自分の進みたい道を思い描くことで、より主体的にキャリアを築けるようになります。そのため、参加者に「自分の実現したいキャリアの方向性」「この先どのような姿になりたいか」などを考えさせることも重要です。自分の興味・関心の方向性に気づかせることで、研修後のモチベーションもより維持させやすくなるでしょう。
キャリアデザイン研修が形骸化する要因の一つに、「キャリアは本人が考えるもの」として、組織や上司の関与が曖昧になっていることがあります。キャリア自律は本人任せにすることではなく、本人の意思と組織から期待される役割を、対話を通じてすり合わせていくことが重要です。
研修では、受講者自身が「組織から期待されている役割」「今後どのように貢献したいか」を考えます。そのうえで、直属の上司からも期待や役割を伝え、研修後の対話につなげることで、本人のWill・Canと組織の方向性を接続しやすくなります。
最後はWILL・CAN・MUSTを踏まえて、参加者に「キャリアの目標」と「詳細なアクションプラン」を立てさせるフェーズです。具体的には、「1年後・3年後・10年後にどんな姿になっていたいか」「そのためにどんな行動をすべきか」「どんな能力を身につけるべきか」などが挙げられます。キャリアの目標・行動計画をキャリアプランニングシートにまとめさせることで、研修後の業務でも定期的に進捗を確認させやすくなるでしょう。
Will Can Mustの概要については「Will Can Mustとは?3つにズレがある人材への企業の対処法」で詳しく解説しております。
キャリアデザイン研修を成功させるためには、どのような点に気をつけて企画すればいいのでしょうか。
ここでは、キャリアデザイン研修の効果を高めるためのポイントを紹介します。
キャリアデザイン研修を実施する目的や、効果を高めるための基本的な考え方については、「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」で詳しく解説しています。
キャリアデザイン研修の効果を高めるには、事前の告知・集客によって参加者の意識を醸成しておくことも大切です。というのも、事前告知が十分でないと、「人事から言われて仕方なく参加した」「何のための研修かよく理解していない」という受け身な参加者を増やしてしまいます。そのため、キャリアデザイン研修の意義をメールで発信したり、事前課題としてモチベーショングラフを作成してもらったりという工夫が求められるでしょう。
キャリア課題は、年代だけで一律に決まるものではありません。一方で、役割やライフステージの変化に伴い、年代ごとに生じやすいテーマもあります。
対象者の年代だけでなく、現在の役割、今後期待される役割、社員が置かれている状況を踏まえて、プログラムを設計することが重要です。以下は、年代別に考えられる研修テーマの一例です。
| 年代 | 主な課題 | 研修の主なテーマ | 重点ポイント |
|---|---|---|---|
| 20代 | 自己理解が浅く、方向性が定まりにくい | Willの発見・Canの開発 | 自己分析、強みの言語化 |
| 30代 | 管理職か専門性深化かの分岐点に立つ | Will・Can・Mustの統合 | キャリアの意思決定支援 |
| 40代 | 役割の変化やモチベーション低下が起こりやすい | 役割の再定義・組織貢献の意味づけ | 強みの棚卸し、Mustの再確認 |
| 50代〜 | 定年後を見据えたキャリア・ライフの再設計が必要になる | 経験の再評価と今後の役割・貢献の再設計 | 将来設計、働く意味の再発見 |
特に定年が近い社員に対しては、業務上の役割だけでなく、家族との関わり方や生きがいなども含めた、より踏み込んだライフプランニングを取り入れることで、研修の納得感が高まるケースもあります。ライトマネジメントでは、そうした定年前の社員を対象としたキャリアデザイン研修もご用意しています。
キャリアデザイン研修の実施形式は、対象者や研修の目的に応じて選ぶことが重要です。
参加者同士の対話や内省を深めたい場合には、対面研修やオンライン研修が適しています。一方、キャリアに関する基礎知識を広く届けたい場合や、社員が自分のペースで学べる機会を設けたい場合には、eラーニングも有効です。
例えば、研修前にeラーニングでキャリアの基本的な考え方を学び、集合研修では自身の経験の振り返りや参加者同士の対話に時間を使う方法があります。また、集合研修後の振り返りや学び直しにeラーニングを活用することもできます。
一つの形式だけで完結させるのではなく、それぞれの特徴を生かして組み合わせることで、学習機会を広げながら、研修の効果を高めやすくなります。
ライトマネジメントでは、キャリア開発のテーマを中心に、独学でも内省を深められるeラーニングコースをご用意しています。
資料ダウンロード|eラーニング版キャリア開発プログラムのご案内
キャリアデザイン研修は、アクションプランを日常業務のなかで実践させてはじめて高い効果が期待できます。そのため、参加者には定期的に振り返りの機会を設けさせることが重要です。例えば、期末・年度末ごとに上司と面談させ、アクションプランの達成度を確認させるようにします。「目標の進捗はどのくらいか」「理想のキャリアを実現するには今後どう動けばいいか」などを適宜考えさせることで、より積極的な成長を促せるでしょう。
なお、管理職向けのキャリア開発支援研修について、カリキュラムの説明や実際のコンテンツ体験を含む無料セミナーの録画を公開しています。
セミナー録画|はじめてのキャリアデザイン研修<管理職向け編>
キャリアデザイン研修は、自社で企画・実施することも、専門企業の支援を受けて実施することも可能です。
内製には、自社の人材戦略や制度、社員の実情を反映しやすく、社内にノウハウを蓄積できるという良さがあります。一方で、プログラムの設計や教材作成、講師の育成、当日のファシリテーションなどには、一定の専門性と工数が必要です。
専門企業を活用する場合も、すべてを任せる必要はありません。プログラム設計や講師、効果測定など、自社だけでは対応が難しい部分に外部の専門性を取り入れる方法があります。
内製と専門企業の活用には、次のような違いがあります。
| 比較軸 | 内製で実施する場合 | 専門企業を活用する場合 |
|---|---|---|
| 自社との適合 | 自社の制度や社員の実情を反映しやすい | 自社の課題を整理し、研修内容に反映できる |
| 企画・運営 | 企画、教材作成、講師、運営を社内で担う | 必要な範囲の設計・運営を任せられる |
| 専門性 | 社内に知見があれば独自性を出しやすい | キャリア理論や他社事例を活用できる |
| 講師 | 社内事情を理解した講師が伝えられる | 内省や対話を促す専門講師を活用できる |
| 継続・改善 | 社内にノウハウを蓄積できる | 効果検証や内製化の支援を受けられる場合がある |
費用を検討する際は、外部への委託費用だけでなく、社内での企画、教材作成、講師育成、運営にかかる工数も含めて考える必要があります。
内製と専門企業の活用は、どちらか一方を選ぶものではありません。例えば、自社の人材戦略や社員へのメッセージは社内で整理し、プログラム設計や講師を専門企業に依頼する方法もあります。
自社に蓄積したいノウハウや実施体制を踏まえ、必要な部分に外部の専門性を取り入れることが重要です。
キャリアデザイン研修の具体的な内容や、自社に合った研修を構築するポイントを知りたい方は、こちらの無料セミナー録画もご活用ください。
セミナー録画|はじめてのキャリアデザイン研修
キャリアデザイン研修は、社員一人ひとりが自身のキャリアと向き合うための重要な起点です。ただし、研修を実施すること自体がゴールになると、職場での行動や対話にはつながりません。
研修の目的を組織課題と結びつけ、対象者に合ったプログラムを設計するとともに、上司との対話や研修後の実践まで含めて考えることが重要です。
ライトマネジメントでは、若手からミドル・シニア、定年前の社員まで、対象者や企業の課題に応じたキャリアデザイン研修の設計・実施を支援しています。自社に合った研修の進め方を検討されている場合は、ご相談ください。
なお、研修を企画して終わりにせず、社内のキャリア開発支援の仕組みにどう組み込むかは、こちらの記事で解説しています。 キャリアデザイン研修が果たす役割とは?企業が導入する目的と効果