キャリアデザイン研修(キャリア研修)とは、社員に自身の強みや組織での役割を再認識させ、キャリアの設計・見直しを促す研修のことです。社員のモチベーションを高める効果が期待できることから、自社内でキャリアデザイン研修を企画しようと検討している企業も多いかもしれません。そこで今回は、「キャリアデザイン研修を企画する流れ・ポイント」や「キャリアデザイン研修の具体的なプログラム例」などを分かりやすく解説します。
キャリアデザイン研修の基本から知りたい方は、ぜひ「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」も合わせてお読みください。
キャリアデザイン研修を企画する際には、具体的にどのような流れで行えばよいのでしょうか。
ここでは、研修企画のプロセスを5つのステップで紹介します。
キャリアデザイン研修を企画する前に、そもそも「なぜ」研修を実施するのかを明確にする必要があります。研修の目的が明確になっている方が、期待した効果がより得やすくなるためです。そのため、まずは各部署の管理職や社員にヒアリングを行い、現場の課題感を把握することから始めましょう。例えば、「社員が将来のキャリアに迷っており、モチベーション低下の原因になっている」「キャリアを自律的に選ぼうという意識が社員に欠けており、受け身で働いてしまっている」などの課題が挙がった場合には、キャリアデザイン研修は最適です。
また、現場だけでなく経営者の要望も事前に知っておくことが大切です。経営者の合意を得ておくことで、より研修の優先順位を高めることができ、対象者に参加を促しやすくなるためです。例えば、「時代の変化に対して柔軟に対応できる人材を育てたい」「ジョブ型雇用への移行を見据え、キャリア自律を推進したい」といった意図が経営者にある場合には、キャリアデザイン研修の効果とも合致するため、実施する意義も深まるでしょう。
キャリアデザイン研修を実施することが決まれば、研修のゴール(目標)を設定します。目標が明確になっている方が、実施後に効果を振り返りやすく、内容の改善にもつなげやすくなるためです。キャリアデザイン研修の主なゴールとしては、「社員が自己理解を深め、自身のキャリアについて明確なイメージを持てるようになる」「社員がキャリアビジョンを見据えて、具体的なアクションプランを設定できる」などが挙げられます。ゴールを言語化しておくことで、現場の管理職や参加者にも研修の意義をメッセージとして伝えやすくなるでしょう。
研修のゴールに基づいて、プログラムの内容を企画します。具体的には、以下のような項目の検討が必要です。
◆対象者
参加者の年齢・階層を決定します。キャリアデザイン研修は、20代・30代・40代・50代・定年前のようにキャリアの節目ごと(5~10年おき)に実施することが一般的です。特にどの年齢層の課題が大きいのかを把握し、参加者を決めるようにしましょう。ちなみにマンパワーグループの調査(※1)では、キャリアデザイン研修の対象として企業が考えている年代は「30代」が70.1%と突出していました。30代は特に、管理職になるか・ハイパフォーマーになるかといったキャリアの分岐点です。キャリアに迷う年代ほど、キャリアデザイン研修の必要性も高まります。
◆プログラム
実際の研修の流れ・プログラムを企画します。一般的なキャリアデザイン研修では、社員本人にWILL(自分のしたいこと)・CAN(強み)・MUST(組織における役割)を検討させたうえで、具体的なアクションプランを立てさせることが通例です。「自己理解」と「キャリア設計」をバランスよく実施できるよう、内容と時間を配分しましょう。また、研修の効果を高めるためには、参加者に集中力を維持させるための工夫も必要になります。例えば、「講義でキャリアデザインの意義を伝える」「組織からの役割についてグループディスカッションをさせる」など、座学とワークを織り交ぜながら行うことも大切です。(※具体的なプログラム例は次章で詳述します)
◆スケジュール
研修の日程を検討します。一般的にキャリアデザイン研修は、1~2日間かけて行われることが多いです。1日で行う場合は、「午前中:キャリアデザインの意義を知り、自己理解を深める」「午後:自身のキャリア目標を定め、行動計画を立てる」など、各時間帯でテーマを明確に決めると参加者の意識も醸成しやすいでしょう。研修中は参加者が業務を行えなくなってしまうので、スケジュールは現場の管理職と話し合って決める姿勢も大切です。
◆講師
講師の選定も非常に重要なポイントです。基本的には、キャリアデザイン研修の実施経験が豊富な外部講師に依頼することで、効果が期待できます。講師の選定に迷った際は、研修の専門企業へ相談することも検討しましょう。
◆場所
研修を行うための場所を手配します。基本的には自社の会議室やセミナールームで行いますが、昨今は感染症の影響からキャリアデザイン研修をオンラインやeラーニングで実施するケースも珍しくありません。そのため、複数の拠点やテレワーク中の社員をインターネットでつなぐ場合には、オンライン会議ツールの手配も行うようにしましょう。
※参考1:キャリアデザイン研修を実施・実施検討している企業は56.9%|マンパワーグループ
研修の効果を正しく振り返るためには、効果測定の方法をあらかじめ決めておくことが大切です。キャリアデザイン研修で主に使われる手法としては、「アンケート」と「キャリアプランニングシート」の2つがあります。
アンケートは、研修の直後に参加者に回答させます。「どのくらい効果を実感できたか」「研修で良かった点・改善してほしい点はあるか」「具体的な学びはどのようなものか」などの設問を置くことで、研修の効果を定性的・定量的に把握することが可能です。また、「キャリアプランニングシート」とは、自身の目指すべき姿と具体的な行動計画をまとめたシートのことを指します。キャリアプランニングシートは研修中に参加者本人に作成させ、研修後にも定期的に上司と進捗を振り返らせることで、日々の業務における研修の効果を測定できるでしょう。
研修の骨子が決まったら、当日までに準備や手配を進めます。具体的には、「講師の手配」「会議室の予約・セッティング」「参加者への告知」「事前課題の配布(必要な場合のみ)」「テキストの作成」「PC環境の設定」「アンケートの作成」などが必要です。現場とも連携しながら、できるだけ早期から準備を進めるようにしましょう。
「キャリアデザイン研修で何を行えばいいか分からない」「研修プログラムの作り方を知りたい」という方も多いかもしれません。そこで本章では、キャリアデザイン研修に盛り込むべき効果的なプログラム例を紹介します。
まずは研修の意義を参加者へ伝えるうえでも、「キャリアの意味」や「キャリアデザインの必要性」などについて座学で解説します。例えば、人生100年時代やVUCA、終身雇用の崩壊などのキーワードと関連づけて、「キャリアを自律的に考える重要性」を伝えるのもひとつの方法です。また、計画的偶発性理論やプロティアン・キャリアなど、キャリア形成に役立つようなキャリア理論も紹介することで、参加者の興味喚起を図れるでしょう。
人は自身の「強み」を最大限生かすことで、自分らしいキャリアを歩めるものです。そのため、参加者に過去の経験を振り返らせ、自分のスキル・知識・能力などを再認識させるパートを設けます。過去に乗り越えた修羅場体験や成長の機会なども内省させることで、より今後のキャリアに対して自信を持たせることができるでしょう。
人は自分の進みたい道を思い描くことで、より主体的にキャリアを築けるようになります。そのため、参加者に「自分の実現したいキャリアの方向性」「この先どのような姿になりたいか」などを考えさせることも重要です。自分の興味・関心の方向性に気づかせることで、研修後のモチベーションもより維持させやすくなるでしょう。
人は組織に属する以上、自分の好きなこと・できることだけで生活はできません。そのため、研修では「社内から求められている役割」「今後期待される働き」などを参加者に検討させる必要があります。例えば、受講者本人に自身の役割や貢献方法を一度考えさせたうえで、直属の上司からあらためて期待・役割を伝えるのも一つの効果的な方法です。キャリアデザイン研修に上司を巻き込むことで、研修の意義や意図が社員により深く伝わり、効果を向上・持続させやすくなります。また、自社の業績やビジョン、所属組織の方向性などを本人にいま一度考えさせることで、参加者に社内での貢献や定着を促すことも可能です。
最後はWILL・CAN・MUSTを踏まえて、参加者に「キャリアの目標」と「詳細なアクションプラン」を立てさせるフェーズです。具体的には、「1年後・3年後・10年後にどんな姿になっていたいか」「そのためにどんな行動をすべきか」「どんな能力を身につけるべきか」などが挙げられます。キャリアの目標・行動計画をキャリアプランニングシートにまとめさせることで、研修後の業務でも定期的に進捗を確認させやすくなるでしょう。
Will Can Mustの概要については「Will Can Mustとは?3つにズレがある人材への企業の対処法」で詳しく解説しております。
キャリアデザイン研修を成功させるためには、どのような点に気をつけて企画すればいいのでしょうか。
ここでは、キャリアデザイン研修の効果を高めるためのポイントを紹介します。
キャリアデザイン研修の効果を高めるには、事前の告知・集客によって参加者の意識を醸成しておくことも大切です。というのも、事前告知が十分でないと、「人事から言われて仕方なく参加した」「何のための研修かよく理解していない」という受け身な参加者を増やしてしまいます。そのため、キャリアデザイン研修の意義をメールで発信したり、事前課題としてモチベーショングラフを作成してもらったりという工夫が求められるでしょう。
年代ごとに社員のキャリア観は大きく変化します。そのため、参加者の年代に合わせて内容を最適化させることも重要です。例えば、30代であれば外部環境の変化を柔軟に捉えるようマインドセットを促したり、50代であれば定年を見据えて「働く意味」を考えさせたりという工夫が挙げられます。その年代の人材が何に悩んでいるのかを理解したうえでプログラムを作成することで、より参加者の心理に刺さるような研修を行えるでしょう。
近年は感染症対策の観点から、オンラインでキャリアデザイン研修を実施する企業も増えています。オンラインの場合は場所の制約がなくなるため、拠点勤務の社員やテレワーク中の社員にも受講させることが可能です。また、なかには「eラーニング」形式でキャリアデザイン研修を実施する企業もあります。eラーニングであれば社員にいつでも好きな時間に研修を受講させることができるため、より自律的な学びにつなげやすくなるでしょう。研修をよりスムーズに受講させるためには、こうしたオンラインでの実施を見据えて準備することも大切です。
ライトマネジメントでは、キャリア開発のテーマを中心に、独学でも内省を深められるeラーニングコースをご用意しています。
資料ダウンロード|eラーニング版キャリア開発プログラムのご案内
キャリアデザイン研修は、アクションプランを日常業務のなかで実践させてはじめて高い効果が期待できます。そのため、参加者には定期的に振り返りの機会を設けさせることが重要です。例えば、期末・年度末ごとに上司と面談させ、アクションプランの達成度を確認させるようにします。「目標の進捗はどのくらいか」「理想のキャリアを実現するには今後どう動けばいいか」などを適宜考えさせることで、より積極的な成長を促せるでしょう。
※参考:キャリアデザイン研修が果たす役割とは|ライトマネジメント
キャリアデザイン研修を自社で企画するとなると、プログラムの設計からテキストの作成、講師の選定まですべて自分たちで行わなければいけません。ただ、初めての場合はノウハウが不足しているため、難航してしまうケースも考えられます。そのため、研修の専門企業を活用することもひとつの有効な手法です。研修会社に依頼することで、人材育成の専門的な技術と知識に基づき、より効果的なキャリアデザイン研修を設計してもらえます。また、プログラムの企画や資料作成などの工数も削減できるため、よりスムーズに研修を実施できるでしょう。
キャリアデザイン研修を企画する際には、各年代に求められるキャリア観や行動変容の方法・プロセスなど、広範な人材育成の専門知識が必要になります。そのため、専門企業へ依頼し、外部研修を活用することもひとつの効果的な選択肢と言えるでしょう。
当社のキャリアデザイン研修は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇ります。20~30代の若年層から中高年層・定年前のシニア人材まで幅広い階層のプログラムをご用意し、最適な研修を実施することが可能です。キャリアデザイン研修をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。