「管理職研修を導入したいけれど、どんな内容が自社に適しているのか分からない」
――という方も多いのではないでしょうか。働き方の多様化やテレワークの浸透などを背景に、管理職に求められる役割は年々幅広くなっています。だからこそ、今や管理職の育成は企業にとって喫緊の課題であり、管理職向けの研修も重要性が高まっているのが実情です。そこで今回は、「管理職に求められている役割」「管理職研修の目的や必要性」を踏まえたうえで、「今実施すべき管理職研修の内容」について分かりやすく解説します。
管理職はプレイヤーと違い、組織に対して強い影響力を持ちます。管理職の成長が組織の成長に直結するため、管理職研修の目的も本人の能力開発だけにとどまりません。本章では、管理職研修の主な目的をいくつか紹介します。
近年は少子高齢化の影響もあり、企業は限られた人材リソースで成果を出すことが求められています。そのため、いかに組織の生産性を高められるかが喫緊の課題です。その点、管理職は部下一人ひとりのモチベーションや業務進捗を管理する立場なので、組織の生産性にも大きな影響力を持ちます。だからこそ、研修を通じて管理職にチームマネジメントの能力を身につけさせることで、組織全体の生産性向上を図ろうという目的もあるのです。
近年は社員の労働観や働き方が多様化しているため、部下を動機づける方法も一様ではなくなり、マネジメントは非常に難しくなっています。また、直近はリモートワークの浸透によって社員間のコミュニケーションが減少し、社員の帰属意識や愛社精神も希薄化してきているのが現状です。だからこそ、管理職には研修を通じて、部下の多様な働き方・価値観に対応できる新しいマネジメント手法を習得させる必要があります。結果として、組織全体として働きやすい風土を醸成し、従業員エンゲージメントや定着率を向上させたいというのもひとつの目的です。従業員エンゲージメントについて詳しくは、「従業員エンゲージメントを向上させるには?"7つ"の効果的な施策を解説!」にて解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
現在は市場の国際化や消費者ニーズの多様化などに伴い、企業にとって変化の絶えない時代となっています。そのため、企業が時代に合わせて成長していくには、いかにスピーディーに経営判断を下し、現場を迅速に変革させられるかが重要です。だからこそ、経営層と現場をつなぐ管理職の役目が非常に重大になってきています。つまり、管理職研修には管理職に変化への対応力を身につけさせ、組織としての柔軟性を高める狙いもあるのです。
管理職研修の内容を決めるには、大前提として組織における管理職の役割を知り、管理職に身につけさせるべき能力を理解しておくことが大切です。そのため、ここでは管理職の役割について大きく5つに分けて解説します。
管理職の役割のひとつは、部署内で行われているプロジェクトの責任者として、業務の進捗管理を行うことです。部下の適性に合わせて最適な仕事を割り振ったうえで、スケジュールの管理や必要なフォローを行いながら、滞りなく業務が完遂されるよう支援します。そのため、全体的な視点を持ってPDCAサイクルを回す能力が必要です。
部下の目標を管理し、業務の結果に対して正当な評価を行うのも管理職の役割です。具体的には、部下に対して能力に見合った目標を立てさせ、適宜コミュニケーションを取りながら達成に向けて動機づけを図ります。また、会社の人事評価基準を正しく理解したうえで、部下の評価を決め、納得してもらえるように本人へ伝えることも大切です。そのため、部下の動機づけを行う技術や評価面談・フィードバックのスキルが求められるでしょう。
フィードバックを効果的に行うためのポイントは「フィードバックの意味・やり方を分かりやすく解説!効果を出すコツとは?」で解説しております。
管理職には自身のパフォーマンスを上げることはもちろん、部下一人ひとりの能力開発・キャリア開発支援を行う責任もあります。例えば、部下が業務のやり方について困っている際にはアドバイスしたり、1on1ミーティングでキャリア形成の相談に乗ったりします。そのため、コーチング・ティーチングの技術やキャリアデザインへの理解も必要です。
「1on1ミーティングで何を話すべき?効果を高めるためのテーマ・ポイントを解説!」もあわせてご一読ください。
充実したキャリア面談を実施するために、1on1ミーティングをどのように進めるべきか、実践的なアドバイスをしたセミナーもご利用ください。
録画セミナー|今さら聞けない「キャリア面談」と「1on1」の基本と具体的な進め方
管理職には、経営層と現場の社員をつなぐ、橋渡しとしての役割があります。例えば、経営理念や経営方針をかみ砕いて部下に伝えたり、組織改革をスムーズに実施できるよう部署内で陣頭指揮をとったりします。また、逆に組織内の業績進捗や現場での課題をすくい上げて、経営層に報告することも重要な責務です。そのため、経営理念やビジョンに対する理解、経営的な視点、組織改革の中心人物であるという自覚などが求められるでしょう。
近年はコンプライアンス違反が経営に大きな影響を与えるため、組織のリスクマネジメントも管理職の重要な役目です。例えば、情報管理の徹底を部下に呼びかけたり、パワハラが起こらないような組織風土を醸成したりします。そのため、今後はコンプライアンスやハラスメントに関する知識もより強く管理職に求められるでしょう。
管理職にはどのような内容の研修を受講させるべきなのでしょうか。
ここでは、管理職研修の代表的な内容・プログラムを紹介します。
新しく着任した管理職に対して、管理職としてのマインドを醸成させ、必要なスキルセットを形成するための研修です。具体的には、「自部門の方向性」や「管理職の役割」について本人に内省を促し、「基本的な労務管理の知識」や「部下との効果的なコミュニケーション方法」、「目標管理・業務管理の手法」などについて教示します。マネジメントの基礎を習得させることができ、プレイヤーから管理職へのスムーズな移行を支援できる研修です。
※新任者向け基礎研修の具体的なプログラム例については、「管理職基礎研修」をご覧ください。
キャリア開発支援研修とは、管理職に部下のキャリア形成を支援するためのスキルを習得させる研修です。終身雇用の崩壊が叫ばれる今、部下のキャリア自律を支えることは管理職にとって重大な課題となっており、キャリア開発支援研修の重要性も高まっています。具体的な研修内容としては、「will-can-mustを活用したキャリアデザインの手法」「キャリア自律の必要性」「効果的なキャリア面談の進め方」などを教示することが一般的です。
※キャリア開発支援研修の具体的なプログラム例については、「上司向けキャリア開発支援セミナー」をご覧ください。
フィードバック研修とは、管理職に効果的なフィードバックの手法を学ばせる研修です。具体的には、「部下の動機づけ方法」「ネガティブフィードバックの重要性」「フィードバックの効果的な流れ」などを教示します。また、人事評価の伝え方次第で部下のモチベーションも変わるため、評価面談の進め方をカリキュラム化した研修も効果的です。管理職に正しいフィードバック方法を習得させることで、組織全体の士気向上にもつながります。
※フィードバック研修の具体的なプログラム例については、「評価面談研修/フィードバックスキル向上研修」をご覧ください。eラーニング版のネガティブフィードバック研修、評価者研修もご用意しています。
※効果的なネガティブフィードバックの方法については、お役立ち資料の「現場のパフォーマンスを高めるネガティブフィードバックとは?」にて解説しています。無料でダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。
チームマネジメント研修とは、人材を適正に管理し、継続的に目標達成が可能なチームを作るための研修です。例えば、業績管理や目標設定の手法を習得させる「パフォーマンスマネジメント研修」や、部下の多様な価値観に対応するための手法を教示する「ダイバーシティマネジメント研修」などがあります。管理職のチームビルディング能力を高めることで、チームの結束力を高め、組織全体のパフォーマンス向上を図りやすくなるでしょう。
※チームマネジメント研修の具体的なプログラム例については、「パフォーマンスマネジメント研修」「ダイバーシティマネジメント研修」をご覧ください。
リスクマネジメント研修とは、コンプライアンスやハラスメントをはじめ、経営リスクを防止するための研修です。管理職に組織内のリスクを予防・早期発見させることで、企業としての信頼性も高めやすくなるでしょう。具体的な研修例としては、法令順守の姿勢やコンプライアンス違反の基準を学ばせる「コンプライアンス研修」、パワハラやセクハラの防止方法を教示する「ハラスメント研修」などがあります。また、部下のメンタル不調を早期にケアするための「メンタルヘルス研修」も、リスクマネジメントの一環として重要性が高まっています。
※メンタルヘルス研修の具体的なプログラム例については、「管理職用メンタルヘルス研修」をご覧ください。
組織改革研修とは、管理職に「経営層と現場をつなぐ」役割を自覚させ、自社の構造改革をスムーズに現場へ浸透させるための研修です。具体的には、管理職に中期経営計画やビジョンなどを理解させ、部下の意識を変革するためのノウハウを教示します。現在は変化の激しい時代だからこそ、ときには人事制度や人員配置、組織構成を抜本的に見直し、組織改革を図るタイミングも少なくありません。その際、管理職に変化を受容するマインドを持たせることで、社内の構造改革も円滑に進みやすくなり、組織としての柔軟な成長も期待できるでしょう。
※組織改革研修の具体的なプログラム例については、「変革推進者研修」をご覧ください。
管理職研修の効果を高めるためには、どのような点を意識すればよいのでしょうか。
ここでは、管理職研修を成果につなげるポイントについて解説します。
育成上の目的や習得させるべき能力を明確にすることで、最適な研修内容を選びやすくなります。例えば、部下の動機づけに課題がある場合には「フィードバック研修」、部下の価値観に応じたマネジメントができていない場合には「ダイバーシティマネジメント研修」が最適です。また、研修の目的を明らかにするには、管理職に対して入念にヒアリングを行い、現場の課題感や管理職の抱える悩みを把握しておくことも重要でしょう。理想の管理職像と現状にどのようなギャップがあるかを知っておくことで、研修を課題解決につなげることが可能です。
企業の現状に応じて、研修内容を柔軟にアレンジすることも大切です。例えば、同じ「チームマネジメント研修」を実施するとしても、組織の男女比や年齢構成によって管理職に教示すべきマネジメント手法は少なからず異なります。また、経営戦略や事業方針に合わせて、管理職に任せるべき役割も変わってくるでしょう。そのため、毎年実施している研修であっても、自社の状況や時代の変化に合わせてカリキュラムを改善する姿勢が重要です。
スキル・マインドの双方が身につくような研修内容にすることも、管理職研修の成果を高めるポイントです。「フィードバック研修」の例で言えば、座学でフィードバックの重要性を教示したり、ワークショップで自組織の課題を話し合わせたりすることで「マインド」の醸成が可能です。さらにロールプレイングで動機づけの方法を実践させることで、フィードバックに関する「スキル」の習得につなげられます。このようにマインドだけでなく実践的なスキルも学べるカリキュラムであれば、管理職も学んだことをより現場で生かしやすくなるでしょう。
管理職研修を実施する際には、人材育成に関する幅広い知識とノウハウが求められるため、自社だけでゼロからカリキュラムを組み上げるのは至難の業です。そのため、研修サービスの専門企業をはじめ、外部企業へ依頼することもひとつの有効な選択と言えるでしょう。専門企業を活用することで、各研修テーマに精通した講師に講義を担当してもらえるため、研修の習熟度も高めやすくなります。また、外部の専門家に最新の育成ノウハウや他社での豊富な成功事例などを教示してもらうことで、自社に新たな視点を取り入れることも可能になるでしょう。
企業の現状によって管理職に習得させるべき能力は変わるため、最適な研修も異なります。そのため、研修を企画する際は管理職の育成状況や経営戦略を正しく把握し、現場に必要な内容を選ぶことが大切です。その際、研修サービスの専門企業に相談することで、専門家のサポートを受けながら、効果的な研修を企画できるでしょう。
当社は人材育成・組織開発のパイオニア企業として長年の実績を誇り、階層別の研修サービスを豊富に提供しています。まずは貴社の課題を入念にヒアリングし、経営戦略を熟知したうえで、課題解決につながる最適な研修サービスをご提案することが可能です。管理職向けの研修をご検討の際には、ぜひお気軽にご相談ください。