「従業員エンゲージメントを向上させたいけれど、具体的な施策が分からない」
と悩んでいる方も多いと思います。近年はテレワークが浸透し、従業員間のコミュニケーションが減っていることに伴い、従業員エンゲージメントも低下しがちです。そこで今回は、従業員エンゲージメントを向上させる主な施策について、実施のポイントも交えて解説します。また本稿では「従業員エンゲージメントの定義」や「従業員エンゲージメントが今重要とされている理由」から詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも従業員エンゲージメントとは、どのような意味の言葉なのでしょうか。
本章では、従業員エンゲージメントという言葉の定義を紹介します。
従業員エンゲージメントとは、「会社に貢献したい」という従業員の自発的な意欲のことを指し、「愛社精神」や「愛着心」とも訳されます。そもそも「engagement(エンゲージメント)」には「契約」という意味があり、従業員と企業間における双方向の強い結びつきを指す言葉です。従業員エンゲージメントの高い従業員はモチベーションや自社への帰属意識が高いことから、従業員エンゲージメントの向上に力を入れる企業も増えています。
従業員エンゲージメントの尺度は正式には定義されておらず、高低の判断も企業によって多少異なります。そのため、自社で独自に基準を設けながら、従業員エンゲージメントの状態を観測することが必要です。ちなみに従業員エンゲージメントの高い従業員の共通した特徴として、大きく「職場環境や評価に満足している」「仕事で十分な成長の機会がある」「自社の方向性に共感している」という3つが挙げられます。従業員エンゲージメントを向上させるには、従業員の「満足度」「成長度」「共感度」を高められるよう、施策を考えることが大切です。
従業員エンゲージメントは、なぜ近年注目を集めるようになったのでしょうか。
ここでは、従業員エンゲージメントの重要性が高まっている時代的な背景について説明します。
近年は終身雇用の崩壊に伴って、「生涯一社に勤め上げる」という従来の労働観が薄れ始めています。転職や再就職で人材の流動化が進むなか、企業としてはいかに優秀な人材を引き留められるかが問われているのです。その点、従業員エンゲージメントの高い従業員は自社への帰属意識が高いため、退職リスクも低い状態と言えます。だからこそ、自社の定着率を高めるために、従業員エンゲージメントの向上に注力する企業も珍しくありません。
現在はAIの浸透や市場の国際化、消費者ニーズの多様化をはじめ、変動の非常に激しい時代です。こうした先読みの難しい状況においては、従業員一人ひとりに自発的なスキルのアップデートを促し、社会の変化に柔軟に対応させる必要があります。その点、従業員エンゲージメントの高い従業員は仕事へのモチベーションや成長に対する欲求が高い状態なので、自律的なスキルアップが期待できます。つまり、従業員エンゲージメントを高めることで従業員のキャリア自律を促し、企業としての成長スピードを格段に高めようという背景もあるのです。
キャリアデザイン研修をはじめ、社員のキャリア不安を解消し自律的にキャリアを捉えるために効果的な施策と、導入のポイントについて解説した資料も合わせてご覧ください。
お役立ち資料|社員の"キャリア不安"に効くキャリアデザイン研修の重要性と正しい進め方とは?
近年は新型コロナウイルスの影響でリモートワークが浸透し、コミュニケーションの非対面化が進みつつあります。従業員間のコミュニケーションが極度に少ない状態では、従業員が「自分は組織から必要とされているのだろうか」「正当に評価されているのだろうか」といった不満を抱え、従業員エンゲージメントも低下しかねません。従業員の予期せぬ退職を生まないためにも、従業員エンゲージメントを改善する必要性が高まっています。
従業員エンゲージメントを高めることで、企業にとってどのような利点があるのでしょうか。
ここでは、従業員エンゲージメントを向上させるメリットについて解説します。
従業員エンゲージメントを高めることで、組織に対して貢献意欲の高い従業員が増えることになります。そのため、「目標を達成するにはどうすればよいか」「組織をより良くするにはどんな方法があるか」といった前向きな意見が従業員から生まれやすくなるでしょう。また、仕事の"やらされ感"も減るため、従業員がより生産的に仕事へ取り組めるようになります。このように職場が活性化することで、業績への好影響も期待できるでしょう。
従業員エンゲージメントが高いということは、従業員が自分の仕事に対して意義を感じ、こだわりを発揮しやすい状態です。当然ながら、従業員の取り組み方が前向きになれば、提供する商品やサービスの品質も高まりやすくなるでしょう。結果として顧客の満足度につながり、企業としての信頼度もより向上させることが可能です。
退職意向のある人材というのは、「仕事にやりがいがない」「経営方針に共感できない」など何かしらの不満を抱えているものです。一方で従業員エンゲージメントが高い従業員は、自組織への不満が少なく、むしろ貢献意欲にあふれています。そのため、従業員の帰属意識や愛社精神を高めることで、離職率の低減が期待できるでしょう。
従業員エンゲージメントを高めるためには、具体的にどのような取り組みをすればよいのでしょうか。
ここでは、従業員エンゲージメントを向上させる施策を7つに分けて紹介します。
従業員が企業の方向性を理解し、共感しているほど、「企業に貢献したい」という想いは強くなります。そのため、従業員エンゲージメントを高めるためには、企業としての理念やビジョンを明確にすることが大切です。「顧客や社会に提供できる価値は何か」を明らかにすることで、従業員からの賛同も集めやすくなるでしょう。また、せっかく良いビジョンがあっても、浸透していなければ意味がありません。だからこそ、キックオフミーティングや社内報、企業の目指すべき姿をまとめた「ブランドブック」などで従業員への周知を図ることも重要です。
企業理念をスムーズに浸透させる方法については、お役立ち資料の「全社的なエンゲージメントを醸成する企業理念の浸透」でも解説しています。無料でダウンロードが可能ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
人は正当な評価を得られない職場では、組織に貢献しようというモチベーションも湧かないものです。そのため、従業員エンゲージメントを向上させるには、公平性の高い人事制度へ改善することも有効でしょう。例えば、成果だけを評価するのではなく、「企業理念の体現度」や「成果に至るまでのプロセス」を評価基準に加えるという方法もあります。評価への納得度を上げることで、従業員の仕事への積極性や意欲を高めることが可能です。
人事評価制度の見直し・改善のポイントについては、「人事評価への不満にどう対処すべき?評価制度の見直し方法・ポイントを解説!」にて解説しています。ぜひ合わせてご覧ください。
「個人として尊重してもらえている」と従業員が感じる環境ほど、それに報いようとして自社への貢献意欲も一層高まります。そのため、上司が部下の意見をできる限り承認したり、信頼して権限を委譲したりすることも従業員エンゲージメントを高めるポイントです。また、従業員に仕事を依頼する際には、「君の○○の実績・○○のスキルを信頼して任せるね」という期待の言葉をかけることで、従業員も働きがいを感じやすくなるでしょう。
そして、従業員の頑張りを「称賛」することも、従業員の自尊心を高め、さらなる貢献意欲につながります。具体的には、社長賞やMVPをはじめ定期的に表彰の場を設けることで、従業員の意欲も高めやすくなるでしょう。
人は「一緒に働いている人のことをよく知らない・信頼できない」という状態では、自組織への愛着も持ちにくいものです。そのため、社内コミュニケーションを活発化させ、従業員同士の関係性を深めることも大切です。例えば、従業員同士が感謝の言葉を紙に書いて贈り合う「サンクスカード」や、定期的なランチミーティングが挙げられます。近年はリモートワークが中心の職場も多いため、オンラインでの1on1ミーティングや社内SNSの活用なども有効です。上司や同僚との接点を常に感じさせることで、従業員の帰属意識も高めやすくなります。
社内コミュニケーションの活性化でおこまりですか?
⇒実践的なアドバイス動画はこちら
従業員が「正当に評価されている」と感じるかどうかは、上司の伝え方にも左右されます。そのため、従業員エンゲージメントを向上させるには、上司のフィードバック能力を高めることも重要です。具体的には、管理職向けに「フィードバック・評価面談研修」を実施し、部下との効果的な面談方法や評価の伝え方を学ばせるのもひとつの施策でしょう。上司のマネジメント手法を改善することで、チーム全体の意欲を高めることにつながります。
・「デンソー人事責任者が語る」事例セミナー
年上部下や若手社員との向き合い方、個人のWILLの引き出し方、上司部下面談の進め方などについて、リアルに語っていただきました。
「休みが十分に取れない」「長時間の残業が常態化している」という職場環境では、従業員も自組織に貢献したいとは感じなくなるでしょう。そのため、休日制度や勤務時間を見直して、従業員のワーク・ライフ・バランスを整えることも重要です。例えば、柔軟に勤務時間を調整できる「フレックスタイム制」や、あらかじめ有給休暇の取得日を決めておく「計画的付与」、残業しない曜日を決める「ノー残業デー」などの施策が挙げられます。心身ともに無理なく働ける職場をつくることは、従業員の組織に対する愛着を醸成する第一歩と言えるでしょう。
従業員が自らの成長を感じられる職場ほど、「もっと組織のために働きたい」という意欲も高まります。そのため、従業員の成長を支援できるようなキャリア開発の施策を取り入れることも効果的です。例えば、「キャリアデザイン研修」を実施して従業員に今後のキャリア設計を促したり、「管理職研修」や「中堅社員向け研修」をはじめ階層別のOff-JTを手厚くしたりという方法があります。キャリア開発支援を充実させることで、「会社が自分のことを大事にしてくれている」という従業員の満足度につながり、帰属意識の向上も期待できるでしょう。
キャリアデザイン研修については、「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」をあわせてご一読ください。
従業員エンゲージメントを向上させるためには、人事制度や育成施策を抜本的に見直し、改善を図っていく必要があります。その際、人材育成や研修サービスの専門企業へ相談することもひとつの方策です。人材育成の専門家にアドバイスを受けながら、自社に足りないノウハウを補うことで、より効果的な施策を企画できるでしょう。
ライトマネジメント事業部は、人材育成と組織開発の分野におけるパイオニアとして、人事制度のコンサルティングから各種研修サービスに至るまで、幅広いサポートを提供しています。私たちは、従業員のエンゲージメントを向上させるために、最適な人事施策と研修カリキュラムをご提案いたします。従業員のエンゲージメントに関するお悩みがある場合は、下記の問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。