70歳までの就業確保が企業の努力義務となった今、シニア社員の活性化に向けて対策を検討している方も多いかもしれません。そこで今回は、シニア社員を活躍させるうえでの課題や活性化の方法について分かりやすく解説します。また、各種調査を参照しながら各企業の現状・実態も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
シニア社員の活性化施策については、こちらのお役立ち資料でも解説しております。
お役立ち資料:ミドルシニア人材を活躍させる効果的な手法とは?
企業はシニア社員(50代後半~60代の社員)に対して、具体的にどのような課題を抱えているのでしょうか。
ここでは、大きく4つの観点から解説します。
シニア社員は定年や役職定年といったキャリアの節目をきっかけに、モチベーションが低下しがちです。例えば、「役職定年で役職から退き、やりがいを見失った」「補佐的な業務に就いたのを機に、仕事への意欲が湧かなくなった」などの声もよく聞かれます。いかにシニア社員の動機づけを図れるかが、大きな課題だと言えそうです。
シニア社員がモチベーション低下に陥る原因や活性化の方法について、お役立ち資料にて詳しく解説しています。
お役立ち資料:ミドルシニアはなぜキャリアに停滞感を覚えるのか?
マネジメントが難しい点も、シニア社員における課題のひとつです。というのも、役職定年や定年でシニア社員に役職を退いてもらうことで、年下上司がシニア社員をマネジメントすることになります。その結果、年下上司がシニア社員に対して気を使いすぎてしまい、組織の雰囲気がギクシャクしてしまうという問題も起こりがちです。
シニア社員は長年のキャリアがある分、人によって能力やパフォーマンスレベルに差が出やすいです。そのため、業務内容や配置を決めるのが難しいという課題が生じることもあります。またシニア社員には、健康への配慮も必要です。「いかに体に無理なく働いてもらえるか」という入念な検討が求められることも、難しさのひとつです。
「【企業向け】定年後の再就職・再雇用、社員にどちらを勧めるべき?メリット・デメリットを解説!」もあわせてご一読ください。
シニア社員については、処遇を決めにくい点も課題です。というのも、シニア社員は一人ひとりの能力や適性が大きく異なります。そのため、一律の賃金体系では不満の声が寄せられてしまう可能性もあるでしょう。「何を基準に給与体系を決めるか」「パフォーマンスの違いをどう報酬に反映するか」も、大きな課題と言えそうです。
シニア社員の活性化に対して、各企業ではどのように取り組んでいるのでしょうか。
マンパワーグループのアンケート調査(※)によれば、シニア社員の継続雇用に向けて導入した施策として、「給与体系の適正化」(32.5%)、「勤務時間や日数のフレキシブルな対応」(31.5%)、「定年前の役職に応じた配置や異動」(28.8%)などが挙げられました。その一方で、「特に行っている施策はない」と答えた企業が28.5%にものぼっています。シニア社員の活性化に関して、有効な手を打てていない企業も少なくないというのが実情なのです。
※参考:約6割は「65歳以上の継続雇用」を導入済み。シニア雇用の取り組みや課題とは?|マンパワーグループ
そもそもシニア社員を活性化させることで、企業にとってどのような利点があるのでしょうか。
ここでは、大きく3つのメリットについて紹介します。
シニア社員はこれまで会社を発展させてきた功労者であり、豊富な経験やノウハウを有しています。例えば、営業職として活躍してきたシニア社員は、「顧客と関係構築する技術」や「業界内での人脈・ネットワーク」を持っているはずです。企業としてこうした貴重なリソースを有効活用できることは、大きなメリットだと言えます。
シニア社員の再雇用によって、採用・教育コストを削減できる点もメリットです。新卒や中途で新しく社員を採用する場合、求人広告の出稿費や説明会の準備費、面接の人件費など、多くの予算が必要になります。その点、シニア社員を再雇用で迎え入れる場合、当然ながら採用に費用はかかりません。また、シニア社員は社会人としての基礎力や豊富な専門スキルをすでに備えています。そのため、育成コストを抑えられるのも魅力でしょう。
シニア社員の活躍を促すことで、ほかの社員の安心感につながるという効果もあります。というのも、シニア社員が生き生きと働いている職場であれば、周囲の社員から「この会社なら自分も長く働けそう」「キャリアプランを描きやすそう」という印象を持たれやすいです。結果として、社員の定着率にも好影響が期待できるでしょう。
シニア社員を活性化させるには、「シニア社員がどんな働き方を求めているか」を理解しておくことも大切です。ここでは、シニア社員を対象にしたアンケート調査を参照し、施策を考える際のポイントについて解説します。
一般財団法人 企業活力研究所がシニア社員を対象に行った調査(※)によれば、「仕事をする上で重視するものは何か」という質問については、「仕事の貢献に見合った金銭的報酬が得られること」(30.3%)という回答が最多でした。また、「仕事とプライベートを両立できること」(25.5%)と、「これまでの経験を活かせる仕事に就けること」(25.9%)という回答がほぼ同率で並んでいます。つまり、シニア社員の満足度を高めるうえでは、「公正な報酬体系」「公私を両立できる環境」「経験を生かせる仕事」という要素が重要なポイントだと言えそうです。
※参考:令和元年度 これからのシニア人材の活躍支援の在り方に関する調査研究報告書|一般財団法人 企業活力研究所(PDF)
同じく一般財団法人 企業活力研究所の調査では、以下のような結果も明らかにされています。
◆50代後半の時点で「60歳以降の働き方」について個別面談を行ったシニア社員は、60代以降も意欲が高い
◆「キャリアについて考える研修」を受講して「役立った」と感じたシニア社員は、60代以降も意欲が高い
◆「フレックスタイム制」や「自己申告制度」をはじめ、柔軟な働き方のできる制度が整備された会社では、シニア社員が意欲的に働いている
上記の結果から、50代時点での個別面談やキャリア研修、柔軟な勤務制度にも一定の効果が見込めることが分かります。シニア社員の活性化施策を検討するうえでは、こうした人事制度の整備もポイントと言えそうです。
シニア社員向けキャリアデザイン研修の考え方、50歳からの意識づけ、上司の関わり方、外部のカウセリングの活用といった会社全体の仕組みとしてどのようにシニア社員の意識醸成を実現していくのかについて解説した動画セミナーもご覧ください。
セミナー|再雇用・定年延長も視野に入れたキャリアデザイン研修構築のポイント
シニア社員を活性化させるためには、具体的にどのような手法が効果的なのでしょうか。
ここでは、大きく5つの施策について解説します。
「役職定年後の社員を活性化させる"7つ"の方法」についてもあわせてご一読ください。
シニア社員のなかには、一律の賃金体系に対して不満を抱いている人も少なくありません。また、シニア社員はキャリアが長い分、人によってスキルや知識にも差が出やすいです。そのため、シニア社員一人ひとりの能力や仕事内容に応じて、適切に処遇を決める取り組みが求められます。仕事における成果やパフォーマンスを定期的に評価し、その結果を給与や賞与に正しく反映させることで、シニア社員の動機に火をつけやすくなるでしょう。
シニア社員は体調や健康状態との兼ね合いもあり、柔軟な働き方を希望する傾向にあります。そのため、勤務時間や休日などを柔軟に決められるような制度を導入することも有効です。例えば、始業・就業の時間を自由に決められる「フレックスタイム制」、労働時間を本人が調整しやすくなる「裁量労働制」、場所に縛られず働ける「テレワーク」が挙げられます。体に無理なく働ける環境であれば、シニア社員の活躍も促しやすくなるでしょう。
シニア社員には、長いキャリアの中で積み上げてきた豊富なスキルや知識があります。だからこそ、今までの分野とはまったく違う仕事を任せてしまうと、「自分のキャリアを否定された」というネガティブな感情をシニア社員に抱かせてしまう可能性もあるでしょう。そのため、役職定年や再雇用後の社員に対しては、できるだけ本人の希望や適性、専門性を考慮した仕事を任せることが大切です。人事や管理職が普段からシニア社員の適性や価値観を把握し、ミスマッチのない業務を割り当てることで、本人のパフォーマンスも引き出しやすくなります。
シニア社員に対しては、早期から役職定年後・再雇用後のキャリアに備えさせることが大切です。例えば、50代前半~中盤の社員向けにキャリアデザイン研修を実施し、定年後を見据えた新たなキャリアの設計を促すことも効果的でしょう。キャリアデザイン研修の効果や目的については「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」で詳しく解説しています。
また、年金の受給額やマネープランの立て方については別途説明会を開き、シニア社員の不安を解消してあげることも有効です。「たとえ定年を迎えても自分の好きな仕事に打ち込める」「給与は下がっても十分に生活できる」という事実を伝えることができれば、シニア社員にも安心して働いてもらえるでしょう。
シニア社員は業務の第一線から退くことを機に、会社からの期待を失ったように感じてしまいがちです。だからこそ、普段から人事や上司がシニア社員に期待をかけ、組織内での役割を言語化して伝えるべきでしょう。例えば、1on1ミーティングで定期的にシニア社員と振り返りを行い、成果を称賛することもひとつの方法です。「周囲から必要とされている」という自己肯定感をシニア社員に持たせることで、モチベーション向上が期待できます。
シニア社員のモチベーション向上施策について詳しくは「シニア社員のモチベーション向上に効く"3つ"の秘策とは?【田中研之輔教授に聞く】」をご覧ください。
シニア社員の活性化がうまくいかない原因として、「本人の自己評価」と「周囲からの期待・役割」にギャップがある場合が考えられます。そのため、組織内での役割を正しく本人に伝えることでモチベーションの向上につなげられるケースも少なくありません。そこで当社では、シニア社員と企業間での認識のギャップを埋める方法について下記のお役立ち資料にまとめました。無料でダウンロード可能ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
事例:シニア社員と企業の間にある認識と期待のギャップを埋めるソリューション
また、シニア社員を活性化させるためには、再雇用前に一度時間を設けて、本人に中長期的なキャリア設計を促すことが欠かせません。その際、キャリアデザイン研修をはじめ外部の研修サービスを活用すれば、人材育成の専門講師のもとで効果的なキャリア設計を実施することが可能です。当社では「58歳キャリアデザイン研修(定年前)」「ミドル・シニア活性化研修」といった豊富な研修を実施し、シニア社員の動機づけやマインドセットの形成をご支援しています。シニア社員の活性化に課題をお持ちの際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。
ライトマネジメントのキャリア開発は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。
組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40~50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。