今や「新入社員の"3人に1人"が3年以内で辞める」ともいわれる時代です。若手人材の早期離職を何とかしたい」と悩む企業は決して少なくありません。離職率の高さは社内の雰囲気や対外的なイメージにも影響を与えかねないため、離職防止の対策を目下検討している方もいると思います。そこで今回は、若手社員の離職防止を図るための方法・施策について分かりやすく解説します。「早期離職の根本的な原因」や「離職防止の対策が必要な理由」から詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
なぜ若手・中堅社員は会社を去るのか?
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現在、若手人材はどのくらいの割合で離職しているのでしょうか。
厚生労働省の調査(※)によれば、就職後3年以内の離職率は、大卒で「32.8%」、高卒で「39.5%」、短大等卒で「43.0%」、中学卒で「59.8%」となりました(平成29年3月卒業者)。大卒では「3人中1人」、中学卒では「5人中3人」が3年以内に離職しているのが現状です。一般的に離職率は、就職環境が厳しかった年ほど高くなるという傾向があります。今後新型コロナウイルスの流行による経済打撃が深刻になれば、離職率に大きな影響が及ぶ可能性は否定できません。そのため、離職防止の対策は今後さらに必要性が増していくと言えるでしょう。
※参考:新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率(平成29年3月卒業者の状況)|厚生労働省(PDF)
早期離職が続けば、企業へさまざまなマイナスの影響を与えかねません。
ここでは、離職防止の対策が必要な理由について大きく3つの観点から解説します。
人材を1人採用して、一人前に育て上げるためには相応の予算が必要になります。例えば、求人の出稿費用や選考にかける人件費、Off-JTの実施費用など、決して金額は少なくありません。ただ、万が一社員が早期離職してしまった場合、今までにかけてきた採用・育成費用は回収されずに失われてしまうことになります。その点、離職防止の対策を行うことで社員一人ひとりの長期的な活躍を促せるため、コストの損失を防ぐことが可能です。
現在はSNSやクチコミサイトが普及し、会社に関する情報がインターネットで拡散されやすい時代です。特に「離職率が高い」といったネガティブな情報は求職者にも伝わりやすく、志望度の低下につながりかねません。今後は少子高齢化で人手不足が加速するため、求職者から選んでもらえる会社であり続けることは非常に重要です。だからこそ、離職防止の対策に注力することで、対外的なイメージの維持・向上に努める必要があります。
先読みの難しい社会状況を踏まえ、経営者候補となる「次世代リーダー」を早期から育成している企業も少なくありません。経営人材は決して一朝一夕では育てられないため、社員の年次が浅いうちから入念に養成する必要があります。ただ、若手人材の早期離職が続くと次世代リーダーの育成が進まず、最悪の場合は後継者難に陥る可能性もあるでしょう。そのため、離職防止策によって優秀な人材の長期的な活躍を促すことが重要なのです。
「次世代リーダーの育成はなぜ難しい?専門家の考える効果的な施策・ポイントとは」もあわせてご一読ください。
そもそもなぜ若手人材は、早期離職を選んでしまうのでしょうか。
ここでは、早期離職の原因について大きく4つの観点から解説します。
労働環境や待遇への不満は、早期離職の大きな原因となります。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査(※)によれば、入社1~3年未満で初職(正社員)を離職した理由は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が最多でした。給与や福利厚生が整っていないと、社員に「この会社で頑張っても意味がない」と思わせてしまい、モチベーションの低下を招きかねません。また、特に近年は「ワーク・ライフ・バランスを大事にしたい」という価値観も浸透してきているため、残業が多い・休日の少ない会社は若手人材の不満が高まりやすいでしょう。
※参考:資料シリーズ No.171若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状 第6章 早期離職とその後の就業状況|独立行政法人労働政策研究・研修機構(PDF)
人間関係に対する不満が、早期離職につながることも珍しくありません。というのも、入社して間もないころは、誰しも仕事の進め方や将来のキャリアに不安を抱えるものです。その際、「同僚や上司が相談に乗ってくれない」「コミュニケーションがそもそも少ない」という環境では、若手社員が孤立してしまう可能性も高いでしょう。また、上司の態度や言葉遣いも若手社員のモチベーションを大きく左右します。例えば、「上司の言動が攻撃的・高圧的」「人によって態度が変わる」という職場では、若手社員に過度なストレスを与えてしまいかねません。
そもそも仕事内容が本人の適性・価値観に合っていない場合、退職につながる可能性も高いです。例えば、「興味・関心のない業務を任される」「自分の能力以上のノルマを課される」という場合、社員のストレスになりかねません。また、入社前のイメージと入社後の仕事内容にギャップがあると、若手社員の不満も大きくなってしまいます。このケースでは、求人内容の書き方や選考での魅力づけに問題があることも多く、改善が必要です。
自社内でキャリアをうまく描けない場合、退職につながりやすくなります。例えば、「将来のキャリアを決めきれずに悩んでいる」「キャリアパスが不明瞭で、長く働けるイメージが湧かない」「社内に尊敬できる・目指したいと思える先輩がいない」という場合、会社への愛着や貢献意欲も失われてしまうでしょう。また、会社の将来性が退職理由になる場合もあります。具体的には、「会社のビジョンが不明確」「事業が安定しない」という状態では、社員に不安やストレスを与えかねません。
最近の若手・中堅社員の退職の本音の理由を把握する方法と、その理由を改善に活かす方法を解説したセミナーもご利用ください。
若手人材の早期離職を防止するには、採用フローから人事制度・待遇までさまざまな見直しが必要です。
ここでは、離職防止の対策として大きく7つの方法を紹介します。
「ミスマッチ」が原因の早期離職は、採用時の情報発信によってある程度防止できます。例えば、求人広告で仕事の楽しい部分や会社の良い側面だけをアピールしてしまうと、いわゆる「憧れ応募」を増やしてしまう可能性が高いです。そのため、仕事の厳しさや経営課題もあえて包み隠さずに伝えることで、入社後のギャップを軽減できます。また、選考時には会社見学や社員インタビューなどの場を設けることも有効です。仕事内容や待遇だけではなく、社員の考え方や企業風土を知ったうえで入社してもらうことで、ミスマッチも防ぎやすいでしょう。
若手社員は周囲へ気を使ってしまい、自分の不安や不満をひとりで抱えこんでしまうこともあります。そのため、先輩社員が定期的にフォローし、心理的なケアをしてあげることが大切です。例えば、同部署の先輩社員が新入社員に対して業務面・メンタル面のサポートを行う「ブラザーシスター制度」があります。年の近い先輩が相談役になることで、若手社員も気兼ねなく悩みを打ち明けられるでしょう。また、上司が1対1で面談を行う「1on1ミーティング」も効果的です。「会社から大切にされている」という感覚が、若手社員の安心にもつながります。
1on1ミーティングの必要性や効果を高めるための方法は「1on1ミーティングで何を話すべき?効果を高めるためのテーマ・ポイントを解説!」をご覧ください。
給与や待遇が原因の退職は多いため、労働条件を見直すことも重要な離職防止策です。ただ、給与水準をやみくもに上げたり、手当を急に増やしたりするのは現実的ではありません。「隣の芝生は青く見える」ともいうように、より待遇の良い会社に目移りさせてしまう原因にもなります。有効な打開策としては、社員から「この会社でなら頑張りが正当に報われる」と思われるような評価・報酬制度へ改善することです。例えば、「業績に応じた賞与を支給する」「社長賞やMVPなどの表彰制度(非金銭的インセンティブ)を取り入れる」といった施策は、社員の動機づけになります。成果が正しく本人へ還元される環境であれば、社員の不満も軽減しやすいでしょう。
人事評価制度を見直すポイントは「人事評価への不満にどう対処すべき?評価制度の見直し方法・ポイントを解説!」をご一読ください。
ワーク・ライフ・バランスを求め、他社への転職を選ぶ若手人材もいます。そのため、私生活と仕事をうまく両立できるような、「柔軟な働き方」を導入することもひとつの離職防止策になるでしょう。例えば、「テレワーク」や「在宅勤務」を許容することで、「会社が遠くて通勤が大変」という社員への有効な引き留め策になります。また、育児や介護との両立が必要な社員にとって、時間に融通の利く「フレックスタイム制」や「時短勤務制度」は魅力的です。社員の私生活やライフイベントに最大限配慮をすることで、長期的な定着にもつなげやすくなります。
若手社員は仕事を十分に覚えきれないうちは、組織における自分の役割を見失ってしまうこともあります。「自分はチームの役に立っているのだろうか」「何のためにこの作業をしているのだろうか」という不安が、早期離職の引き金になることもあるのです。そのため、上司から積極的に本人へ期待の言葉をかけ、自己肯定感を高めてあげることも有効でしょう。また、社員がお互いに感謝の言葉を贈り合う「サンクスカード」という方法もあります。若手社員の頑張りを正しく称賛することで、モチベーションを高め、離職防止を図ることが可能です。
若手社員のストレスが、上司の言葉遣いや指導方法に起因することもあります。そのため、管理職のマネジメント能力を鍛えることも有効な離職防止策です。例えば、「コーチング研修」や「フィードバック研修」などのOff-JTを実施し、上司に若手社員との向き合い方を学ばせることもひとつの方法でしょう。上司が部下の価値観に合わせて最適な指導・助言ができるようになれば、若手社員の不満も軽減でき、定着につながる可能性も高いです。
フィードバックについて詳しくは「フィードバックの意味・やり方を分かりやすく解説!効果を出すコツとは?」で解説しております。
自社でのキャリアパスが見えにくいことも、早期離職の原因になることがあります。そのため、自社でどのようなキャリアを築けるのかを、昇格・異動の制度と合わせて社員にあらためて明示することも大切です。また、若手社員は目の前の業務に追われ、将来について考える余裕を持てない場合もあります。そのため、キャリアデザイン研修を実施し、社員に今後のキャリアプランを立てさせることも有効です。「何年後に自社でどうなりたいか」「そのために今何をすべきか」を考えさせることで、長期的な目標に向けて動機づけを図りやすくなります。
キャリアデザイン研修について詳しく知りたい方は、「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」も合わせてお読みください。
若手人材の離職防止を図るためには、採用フローや教育制度、人事配置をはじめ現状の施策を幅広く見直す必要があります。その際には、人材育成や人事制度の専門企業に協力を仰ぐことで、より効果的な施策の導入につなげられるでしょう。
当社では豊富な研修サービスや人事制度のコンサルティングを通じて、若手人材の定着化を支援しています。若手人材の早期離職に課題をお持ちの際には、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
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