いつの時代も、やる気のない社員・ローパフォーマー(成果の出ない従業員)は企業を悩ませます。特に人材不足が加速して従業員一人ひとりの生産性を高めることが求められる今、こうした存在を問題視している企業も多いかもしれません。ですが、じつはやる気のない社員・ローパフォーマーの根本的な問題が、本人にあるとは限らないのです。そこで今回は、やる気のない社員・ローパフォーマーを生まれ変わらせる方法について、分かりやすく解説します。
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まずは、やる気のない社員(モチベーションの低い社員)について、特徴を3つの行動パターンで紹介します。
やる気のない社員の特徴として、「できるだけ労力を使わず、最低限の仕事しかやりたがらない」というものがあります。例えば、「割り振られた以外の仕事はしない」「あえて時間をかけてゆっくり作業する」「新しい仕事を頼まれると、『それは自分の仕事ではありません』と断る」といった行動をするケースが多いです。
仕事への集中力が欠けており、ミスや問題行動を頻繁に起こしてしまうのも、やる気のない社員の特徴です。例えば、「仕事を依頼されても、締め切りに間に合わないことが多い」「仕事のやり方が雑で、完成物に抜け漏れや欠陥があることが多い」「毎回何かしらの言い訳をして、遅刻や欠席を繰り返す」などの行動が挙げられます。
仕事に対する責任感が薄く、周囲にその責任を転嫁してしまいがちなのも、やる気のない社員の特徴といえます。具体的な行動でいうと、「失敗を指摘されると、『それは自分のせいじゃありません』と言い張る」「すぐに同僚・上司・部下のせいにする」「何かにつけて会社の社風・体制について愚痴をいう」というものです。
ローパフォーマーとは、「Low(低い)」「Performer(成果・業績を挙げる人)」という語源どおり、期待されている成果を出せない従業員のことです。ここでは、そんなローパフォーマーの特徴について、4つの点から紹介します。
成果が著しく低く、会社が求める目標に到達していないのがローパフォーマーの特徴です。具体的には、「現状維持を目標にしてしまっている」「目標達成に必要なスキル・知識を身につけようとしない」といった志向性が挙げられます。なかには、本人としては十分努力しているつもりでも、成果が挙がらないケースもあります。
ローパフォーマーによっては、仕事の生産性が低く、成果につながっていない場合もあります。具体的には、「指示された業務をこなすのに、必要以上の時間がかかる」「計画を立てずに作業を進めてしまう」という特徴です。
仕事に対する積極性が欠けていることも、ローパフォーマーの特徴です。特に今はリモートワークが普及し、ローパフォーマーが上司の目の行き届かないところで働くケースも増えました。その場合、ローパフォーマーは仕事を自分から取りに行こうとせず、最低限の作業で済ませようとすることがあります。
必ずしも全員がそうとは限りませんが、なかには勤務態度が悪いローパフォーマーもいます。特徴としては、「人が見ていないところでサボろうとする」「遅刻や欠勤を繰り返す」「周囲に仕事を押しつける」というものです。成果の低さがモチベーションの低下を引き起こし、負のスパイラルになっているケースも考えられます。
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では、こうしたやる気のない社員・ローパフォーマーがなぜ生まれてしまうのでしょうか。じつは本人だけに原因があるとは限らず、会社・上司に問題があることもあります。ここでは、従業員がやる気のない社員・ローパフォーマーになってしまう原因について「会社・上司・本人」という三者の立場から解説します。
◆人材配置にミスマッチが起こっている
本人の適性に合わない職種・部署に配置してしまうと、従業員の意欲や成果を低下させてしまうことが多いです。入社選考のときに採用担当が人材の適性を見誤ったケースや、事業再編に伴う部署異動で従業員を慣れない職種へ就かせてしまった場合が考えられます。本人の持つ適性を正しく見極め、適材適所に配置する必要があるでしょう。
◆仕事の社会的意義を周知できていない
従業員のモチベーションが上がらない原因として、「仕事の意義を理解していないこと」が挙げられます。「自分の仕事は誰の役に立っているのだろう」「自分の仕事には意味がない」と考えると、仕事も手につかなくなってしまうものです。事業や仕事の社会的な意義を、日頃から会社が従業員に伝える必要があります。
◆評価基準が曖昧である
評価基準に不公平さがあると、一部の従業員は仕事へのやる気を損なってしまいます。従業員が「何をやっても評価されない」「頑張っても意味がないから現状維持でいい」と思い込み、成果が伸び悩んでしまうケースも少なくありません。「何をしたら評価されるのか」を明確に提示し、公正な評価を行うのも会社の役割といえます。
◆ずっと部下を放置している
十分に育成の手が行き届いていないと、部下のやる気を失わせかねません。従業員が「自分はあまり上司に目をかけてもらえない」「ずっと放置されている」と思い込むと、会社への反感につながる恐れもあります。上司が部下に対して積極的にコミュニケーションをとり、真摯にマネジメントを行う姿勢が大切だといえるでしょう。
◆あまり褒めようとしない
仕事において「承認欲求」は、とても大切な要素です。多くの人は他人から褒められなかったり、認められなかったりすると、モチベーションが下がってしまいます。やる気や成果が伸びない従業員は、承認欲求を満たせていないケースが多いです。部下が頑張っているときは、上司が積極的に褒め、評価する努力が必要でしょう。
◆人間関係でストレスを与えている
部下が上司との人間関係に悩み、ストレスが原因でやる気のない社員・ローパフォーマーになってしまうケースもあります。上司は「自分の存在が部下を萎縮させていないか」「部下の尊厳を傷つけるようなコミュニケーションをとっていないか」を普段から意識し、部下とのやり取りを改善することが大切です。
◆現状で満足している
そもそも本人が仕事に対する目標意識が薄く、現状維持で満足してしまっているケースもあります。また、長く会社に在籍するなかで「仕事を続けること」だけが目的になってしまい、目標を見失っている可能性も考えられます。その際は上司が相談に乗って、達成が可能な目標をあらためて設定する必要があるでしょう。
◆スキルが陳腐化している
どんな業界・職種であれ、時代の変遷に合わせて求められるスキル・知識は変わってきます。持っているスキル・知識が陳腐化し、仕事で通用しなくなった結果、成果が挙げられていないケースもあるでしょう。そのため、周囲が協力しながら本人の自己変革を促し、スキル・知識をアップデートさせていく必要があります。
◆私生活を引きずっている
仕事とは関係がなく、プライベートの事情で本人のモチベーションが下がっていることも考えられます。本人からは言い出しづらいケースもあるので、上司や同僚が積極的に相談に乗ってあげる姿勢が大切です。
やる気のない社員・ローパフォーマーは、本人だけの問題にとどまらず、組織全体にも影響を及ぼすことがあります。ここでは、やる気のない社員・ローパフォーマーが組織にどのような悪影響を与えるのか、解説します。
やる気のない社員・ローパフォーマーがやり残した仕事は、当然他の従業員が肩代わりすることになります。その場合、代わりに業務を行う従業員の負担が大きくなり、組織全体の生産性が低くなってしまうでしょう。
やる気のない社員・ローパフォーマーを見て、他の従業員が「なぜ自分だけ頑張らないといけないのか」と不満に思ってしまうこともあります。そうなると、組織全体のモチベーションが低下してしまう恐れもあるでしょう。
やる気のない社員・ローパフォーマーに対して不満を感じている優秀な従業員が、退職してしまう可能性もあります。組織に必要な従業員が予期せず退職してしまうと、企業にとっては大きな痛手になってしまうかもしれません。
やる気のない社員・ローパフォーマーは、周囲が接し方を変えるだけでも、再起につながる可能性があります。ここでは、やる気のない社員・ローパフォーマーを生まれ変わらせる6つの方法を紹介します。
人材を活躍させる方法を能力開発や人事制度の観点からこちらのお役立ち資料で解説しています。あわせてご覧ください。
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周囲から「やる気のない社員・ローパフォーマー」として見られているという現状に、本人が気づいていない場合もあります。そのため、まずは上司や人事が本人と面談を行い、勤務態度や成果について一度正しく伝えることが大切です。そして、本人に現状を理解してもらったうえで、新しく目標を設定しましょう。この際、いきなりハイレベルな目標を課すのではなく、高すぎず低すぎない、実現が可能な目標を設定するとよいです。そして、本人がその目標を達成できるよう、周囲が一定期間かけて親身にサポートしていきます。
本人のスキル・知識の不足から、パフォーマンスが落ちている可能性もあります。その際は、上司によるOJTや外部のプロフェッショナルによる研修など、学習の機会を設けることが効果的です。特に研修サービスの専門企業が提供する研修のなかには、やる気のない社員・ローパフォーマー向けに特化したものもあります。こうした研修サービスを本人に中長期的に受けてもらい、スキルアップを図らせることもひとつの解決策でしょう。
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部下のやる気や成果が出ない原因として、上司のコミュニケーションに問題があることが挙げられます。具体的には、部下を放置したり、必要以上に厳しく接したりというパターンです。上司がこうしたアプローチ方法を変えることで、部下の勤務態度が改善されることもあります。まずは上司自身が自己変革し、部下に対して真摯に向き合うことが大切です。部下が多すぎて上司が対応できない場合は、新しくメンター制度(歳の近い先輩が相談に乗る制度)を導入し、先輩が親身に相談に乗るようにするのも有効です。
また、上司が部下と会話する際は、言葉の「主語」に気をつけるようにしましょう。例えば、「(あなたの行動で)私が迷惑を受けているよ」と伝えるのではなく、「(あなたに成長してほしいから)厳しく伝えるよ」という風に"部下"を主体にして話すことが大切です。ちなみに上司がマネジメント能力に自信を持っていない場合は、「ローパフォーマーを部下に持つ上司向け」の研修サービスを受講すると、改善が期待できる場合もあります。
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「人から褒められたい」という欲求を満たしてあげることも、従業員のモチベーションを高める大切な手法です。意欲の低い従業員には、まず「褒める」ことを心がけましょう。「行動をひとつ改善できたら褒める」「失敗したときも"挑戦したこと"を褒める」など、本人の承認欲求を満たしてあげることが大切です。「自分が大切にされている」と誰もが感じられるような風土を作ることで、前向きに仕事に取り組める職場環境が生まれます。
「この仕事は誰の役に立っているのだろう?」と疑問に感じてしまうと、仕事へのモチベーションは上がりません。やる気のない社員・ローパフォーマーのなかには、仕事を単なる「作業」と捉え、苦痛に感じている人もいます。そのため、会社が従業員に対して、事業・仕事の社会的な意義を伝えることが大切です。「この仕事は確かに誰かのためになっている」という実感を本人が得られれば、前向きに仕事に向き合えるようになるでしょう。
評価の基準が曖昧だったり、公平さに欠いていたりすると、従業員のモチベーションを損ねる可能性もあります。そこで、「具体的に何をすれば報酬がもらえるのか・昇格できるのか」が明確に分かるような評価制度に変えることも有効でしょう。また、なかには上司へのアピールが苦手で、評価されていない従業員もいます。そうした従業員ともコミュニケーションをとり、ポテンシャルや意欲を評価できるような仕組みになると、なお良いです。
人事評価制度を見直すポイントについて詳しくは「人事評価への不満にどう対処すべき?評価制度の見直し方法・ポイントを解説!」をご一読ください。
やる気のない社員・ローパフォーマーは、会社や上司がアプローチを変えるだけで、再び輝きを取り戻すこともあるのです。
自社だけで対応が難しい場合は、豊富なノウハウを持つ外部企業に頼ることもひとつの解決策です。実際、プロ講師による研修や育成が、再起のきっかけになることも多いです。やる気のない社員・ローパフォーマーへの対策を考える際は、まず自社の現状について専門企業に相談するところから始めてみてはいかがでしょうか。
※アーカイブセミナー「低業績者向け施策/評価とフィードバック・業績改善プログラム・受入体制作り」 も合わせてご覧ください。
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