「先の見えない社会情勢も相まって、社員のモチベーションが日に日に下がっている」
――そのように悩む企業も多いのではないでしょうか。社員のモチベーションは組織全体の生産性やパフォーマンスに影響し、早期離職にもつながりかねません。そのため、できるだけ早く改善を図ることが重要です。そこで今回は、「社員のモチベーションが下がる原因」「モチベーションを高める施策」について詳しく解説します。
モチベーション対策は、なぜ企業にとって必要なのでしょうか。
ここでは、社員のモチベーションを向上させるべき理由について解説します。
「モチベーションが低い」というのは、仕事への積極性・主体性が欠けている状態です。「仕事をやらされている」という心理状態では、ひとつの作業にかける時間も長くなり、組織全体の生産性が下がってしまいます。だからこそ、施策を通じて社員一人ひとりのモチベーションを高め、パフォーマンス向上を図る必要があるのです。
モチベーションが高まることで、社員が仕事に対して細部までこだわりを発揮できるようになります。その結果、サービスや商品の質にも良い影響を与え、顧客からの信頼・評価や企業のブランド価値も向上しやすくなるでしょう。対外的な評価は当然ながら業績にも直結するため、組織の成長のためにもモチベーション対策は重要です。
モチベーションが低い状態では、心理的に「もっと良い職場があるのではないか」という迷いが生まれやすくなります。そのため、モチベーション対策を行うことで、社員の離職を防止する効果も期待できるでしょう。また、社員の定着率が上がれば求職者に対するイメージも良くなるため、優秀な人材をさらに獲得しやすくなります。「【保存版】社員の定着率を上げるリテンション手法"7選"!」もあわせてご覧ください。
そもそも社員のモチベーションはなぜ下がってしまうのでしょうか。
ここでは、根本的な4つの原因について解説します。
不満の原因になりやすいのが、給与や福利厚生です。待遇が十分に整っていないと、「会社から大切にされていない」と社員に思わせてしまい、モチベーションを低下させてしまう可能性があります。また、残業が多く休日の少ない職場環境は、肉体的な負担が大きいため社員のモチベーションを下げかねません。最悪の場合には「もっとワーク・ライフ・バランスを大事にできる職場を選びたい」という、退職意向にもつながる危険もあるでしょう。
たとえ待遇が良くても、人間関係への不満から社員のモチベーションが下がってしまうこともあります。例えば、上司との関係が悪化すると、部下が「この人のもとで働きたくない」と感じ、組織への貢献意欲も落ちてしまうでしょう。また、社員同士が積極的にコミュニケーションを取らない環境では、お互いに悩みを誰にも相談できません。精神的な安らぎが得られない職場では、仕事を頑張ろうというモチベーションも湧きにくいものです。
仕事内容そのものに不満を抱えている場合、社員のモチベーションは下がってしまいます。例えば、「適性の低い業務を任されている」「能力以上のノルマを課されている」という状態では、仕事に向き合おうという意欲も失われてしまうでしょう。また、成果や実績に対して正当な評価を得られていないときも、モチベーションは減退します。「この会社では頑張っても意味がない」という精神状態に陥ると、休職や退職につながりかねません。
自分の将来に自信が持てないときも、社員のモチベーションが下がる可能性があります。例えば、「社内のキャリアパスが不明瞭」「自社にロールモデルとなる先輩がいない」という状況では、社員が将来に不安を感じ、自社で働く意味を見失う可能性が高いです。また会社の経営方針に対する違和感も、モチベーションに影響を与えます。「この会社のために頑張りたくない」と社員に思わせてしまうと、組織全体の雰囲気も悪くなるでしょう。
社員の離職やモチベーション低下は「キャリア不安」が起因?
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社員のモチベーションを上げるためには、さまざまなアプローチ方法から施策を考えることが大切です。
ここでは、施策を考える際に参考になる3つのキャリア理論について、分かりやすく解説します。
アメリカの心理学者マズロー氏が説いた「自己実現理論」によれば、人の欲求は"5つ"の階層に分かれています。第1階層から順に、「生理的欲求(食べたい・眠りたい)」「安全欲求(安全かつ健康に暮らしたい)」「社会的欲求(組織に所属したい)」「承認欲求(誰かに称賛・評価されたい)」「自己実現欲求(理想の自分になりたい)」の5つです。そして、これらは必ず「低次の欲求」から順に満たされていくとされています。
つまり、社員の職場に対する欲求に当てはめれば、「安心して生活できるほどの給与を得たい(生理的欲求)」「心身ともに健康的に働きたい(安全欲求)」といった欲求が満たされてはじめて、仕事のやりがい(承認欲求や自己実現欲求)を感じられるようになるのです。そのため、モチベーションの低下を防ぐためには、まず土台となる労働条件への不満を解消してあげることが先決だと言えるでしょう。
アメリカの心理学者ハーズバーグ氏の説いたキャリア理論に、「二要因理論」があります。当理論の主張は、職場への「不満」を感じる要素(衛生要因)と、「満足」を感じる要素(動機づけ要因)はそれぞれ異なるというものです。「衛生要因」の例としては、「給与」「対人関係」「作業条件」「監督(マネジメント)」などがあります。衛生要因が満たされない場合、社員は職場に不満を抱いてしまいます。一方の「動機づけ要因」は、「承認」「昇進」「責任」「達成」などが代表的です。動機づけ要因が満たされることで、社員は仕事への満足感を覚えます。
つまり、モチベーション対策を考える際には、「衛生要因」と「動機づけ要因」を両軸で満たすことも重要なのです。例えば、給与や人間関係の問題を解消することで「不満足」を和らげ、評価制度や仕事の割り振りを改善することで「満足感」を高めます。まずはモチベーションが「下がる原因」「上がらない原因」がそれぞれどこにあるのかを社員にヒアリングし、それぞれに施策を考えていくことが大切です。
一般的にモチベーションには、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があるといわれています。「外発的動機づけ」は、「評価を得るために働きたい」「高い報酬を得るために頑張りたい」といった、外的な要因によって意欲を高めることです。一方の「内発的動機づけ」は、「仕事そのものが楽しい」「成長したい」といった、社員本人の内側から湧いてくるモチベーションを指します。
つまり、社員のモチベーションを高めたい場合には、承認・称賛や正当な報酬といった「外発的動機づけ」だけでは十分とは言えません。社員が自身の成長やキャリアの実現、仕事そのものを楽しめるような環境をつくり、「内発的動機づけ」による意欲向上を図ることも重要なのです。
「内発的動機づけはなぜ必要?専門家に聞く「社員の仕事満足度を高める方法」とは?」でも詳しく解説しておりますので、あわせてご一読ください。
社員のモチベーションを高めるためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
ここでは、効果的な7つの施策について解説します。
労働条件への不満は、モチベーションを下げる原因になりかねません。そのため、まずは現状の報酬体系・手当・福利厚生が十分であるかを確かめ、不満の大きい部分は改善することが大切です。また、近年は「ワーク・ライフ・バランスを重視したい」という価値観も浸透しており、残業削減や休日制度の充実も急務と言えます。有給休暇の取得率や日々の勤務時間を正しく集計し、現場の管理職と協力しながら社員の働き方を見直すことも重要です。
社員の頑張りが正当に評価されるよう、納得度の高い評価・報酬制度にすることもひとつの対策です。例えば、結果だけでなくプロセスまで加点したり、上司による恣意的な評価をなくしたりという取り組みが挙げられます。また、なぜその評価・報酬になったのかを、管理職から本人へ評価面談で丁寧にフィードバックすることも大切です。「頑張ったら正しく報われる」と社員が思えるようになれば、おのずと仕事への挑戦心も高まるでしょう。
人事評価制度を改善するポイントは「人事評価への不満にどう対処すべき?評価制度の見直し方法・ポイントを解説!」をご一読ください。
社員の承認欲求を満たせるよう、表彰制度や称賛などの「非金銭的インセンティブ」を導入するという方法もあります。例えば、各期にシンボリックな活躍をした社員を表彰する「MVP」や「社長賞」が一例です。また、社員同士がお互いへの感謝や称賛を伝え合う、「サンクスカード」を活用している企業もあります。自分の仕事が褒められたり、誰かの役に立っていると実感できたりすると、本人のモチベーション向上にもつながるでしょう。
担当業務の「意義」が分からないと、社員は「何のために働いているのだろう」と感じてモチベーションが下がる可能性もあります。そのため、社員一人ひとりに対して、組織内での期待・役割を言語化して伝えることが大切です。例えば、仕事を割り振る際に「プロジェクトの成功に欠かせない仕事だよ」「君の○○の能力を見込んで抜てきしたんだ」と声をかけるだけでも、本人の自己肯定感を刺激し、モチベーションを高められるでしょう。
日々の仕事がルーティンになってしまうと、人は退屈を感じてモチベーションが下がってしまいます。そのため、挑戦を促せるような仕組みを導入することも効果的です。例えば、新規事業のアイデアを募集するコンテストを開催したり、自分の意志で異動先を決められる「社内FA制度」を取り入れたりする方法が挙げられます。また、背伸びして届くレベルの「ストレッチ目標」を設定させることで、本人の挑戦意欲をかき立てることも可能です。
企業のビジョンを社員へ伝えることも、重要なモチベーション対策になります。というのも、人は「自分の活躍が組織への貢献につながる」「サービスを通じて人や社会の役に立てる」と思えると、仕事にやりがいを持ちやすくなるものだからです。特に会社のトップである経営者から発信されるメッセージは、大きな影響力があります。そのため、社長とのランチ会や理念浸透研修など、経営者と社員一人ひとりが向き合える場を設けることも効果的です。経営者の顔が見えると、「この会社のために働きたい」という社員の意欲もさらに高まるでしょう。
人はキャリアの「目標」があることで、目の前の仕事にも意義が感じられるようになります。そのため、キャリアデザイン研修を実施し、社員にあらためて自身のキャリアを設計させることも効果的です。研修では、「何年後にどんな姿になりたいのか」「そのために今何をすべきか」を社員に検討させ、アクションプランを立てさせます。自社内でのキャリアパスを明確にさせることで、社員に目標達成に向けた意欲的な努力を促せるでしょう。
キャリアデザイン研修について詳しく知りたい方は、「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」も合わせてお読みください。
社員ごとに価値観やキャリアのフェーズが異なるため、一人ひとりに応じたモチベーション対策を考えることが大切です。そこで当社では、人材一人ひとりの階層・課題に応じた豊富な研修サービスを実施しています。例えば、「若手社員の定着・モチベーション向上」や「ミドル・シニアの活性化」など、現状の課題に応じて最適な研修を受講いただくことが可能です。社員のモチベーション対策をご検討の際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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