「シニア社員のモチベーションを上げたいけれど、効果的な施策が分からない」
――そのような悩みを抱える人事担当者の方も多いのではないでしょうか。労働力人口の減少によって若手人材の確保が難航する今、シニア社員の活躍が企業の命運を握るといっても過言ではありません。ただ、役職定年制や再雇用を機にモチベーションが大きく低下し、今までどおりのパフォーマンスが発揮できなくなってしまうシニア社員も少なくないのです。
そこで本稿では、「シニア社員のモチベーションが低下する原因」や「モチベーションを向上させる方法」について分かりやすく解説します。また後半部分では、田中研之輔教授の特別セミナーより「シニア社員のモチベーションを高める3つの施策」を抜粋して紹介します。シニア社員の活躍を組織全体の成長へとつなげるために、ぜひ参考にしてみてください。
※セミナーの詳しい内容については、アーカイブ(無料)よりご覧いただけます。
そもそもシニア社員のモチベーション対策が必要な理由とは、何なのでしょうか。
ここでは、時代背景も踏まえて3つの理由について解説します。
2021年4月に「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、70歳までの就業確保が企業の努力義務となりました。つまり、シニア社員一人ひとりに以前より長くパフォーマンスを発揮してもらう必要があるということです。仮に役職定年や再雇用をきっかけにシニア社員のモチベーションが下がってしまうと、期待した活躍を見込めない可能性もあります。だからこそ、シニア社員に期待と役割を伝え、モチベーションを向上させることが不可欠です。
近年は少子高齢化の影響を受けて、若手人材の確保が難しくなっています。このまま人材の売り手市場が続けば、人手不足に陥り、最悪の場合には事業運営に支障を来す企業も出てくるかもしれません。だからこそ、経験豊富なシニア社員にできるだけ長く第一線での活躍を促せるよう、モチベーション対策を施す必要があるのです。
シニア社員のモチベーションが低いと、組織全体の雰囲気に影響を与えます。若手社員が「自分も将来は同じ状態になるのだろうか」「この会社では長く活躍できないのだろうか」と不安に感じ、エンゲージメントも低下する可能性が高いです。だからこそ、シニア社員のモチベーションを向上させ、組織を活性化する必要があります。
そもそもシニア社員のモチベーションはなぜ低下してしまうのでしょうか。
ここでは、シニア社員のモチベーションが下がる4つの原因について解説します。
お役立ち資料|「ミドルシニアはなぜキャリアに停滞感を覚えるのか?」
シニア社員は役職定年で役職から外れることをきっかけに、仕事への前向きな気持ちを失ってしまうことも少なくありません。出世や昇給などの可能性がなくなったことで、「自分のキャリアはもう終わってしまった」と感じてしまう人もいます。このようにキャリア上の目標を見失うことで、モチベーションが低下してしまうのです。
現在はテクノロジーの進化が激しく、デジタル技術によって従来の業務が代替され始めています。その結果、シニア社員のスキルが陳腐化してしまうケースも珍しくありません。新しいスキルを覚える必要性はあるものの、「この歳から何かに挑戦するのは難しそう」という不安から、業務に対する意欲を失うシニア社員もいます。
シニア社員は役職定年や再雇用をきっかけに、人事評価の対象から外される場合もあります。また、人によっては役職を降りることで部下がいなくなり、周囲の社員から頼られる機会も減るかもしれません。その結果、「誰からも期待されていない」「自分には特に役割がない」と感じて、モチベーションを失うシニア社員もいます。
シニア社員が役職を降りることで、年下の社員が上司になることもあります。ただ、年下の上司に対して「気を使わせたくない」「頼りたくない」という思いから、距離をとってしまうシニア社員も少なくありません。こうした年下上司とのコミュニケーション上の問題は、シニア社員のモチベーションを下げる原因にもなります。
シニア社員のモチベーションを高めるためには、どのような施策を行えばよいのでしょうか。
ここでは、モチベーションを向上させる7つの方法について解説します。
「シニア社員を活躍させる方法とは?各企業の現状や活性化に向けた課題を解説!」もあわせてご一読ください。
シニア社員のモチベーションを高めるには、キャリアデザイン研修を受講させることもひとつの方法です。キャリアデザイン研修とは、今までの経験を棚卸ししたうえで、今後のキャリアを設計する研修のことを指します。シニア社員に今後目指したいキャリアをあらためて考えさせることで、仕事への意欲向上にもつながるでしょう。
キャリアデザイン研修の例は「58歳キャリアデザイン研修(定年前)」をご覧ください。
シニア社員は「周囲から期待されていない」と思い込み、モチベーションが下がることもあります。そのため、常に周囲が気を配り、称賛と期待を伝えることも重要です。例えば、「ぜひ豊富な経験を生かして後輩の教育係になってほしいです」と積極的に役割を与えたり、「あなたの活躍に会社は支えられています」と存在を肯定したりすることもひとつでしょう。「期待に応えたい」という思いが、本人の前向きさややりがいにもつながります。
会社から一方的に決められた業務内容や目標では、シニア社員が「やらされ感」を覚えてモチベーションが低下してしまいます。そのため、1on1ミーティングやキャリア面談などを通じて、シニア社員本人に目標設定を促すことも重要です。目指したいゴールを再認識させることで、仕事への前向きな気持ちを喚起できるでしょう。
業務でスキルを生かせない場合も、シニア社員の意欲低下を招きます。だからこそ、会社としてはできるだけ本人の適性を考慮し、強みを生かせる仕事に配置すべきでしょう。また、通常の業務とは別に、シニア社員が強みを発揮できるような機会を設けることもひとつの方法です。例えば、業務時間の2~3割を別業務に充ててよい「社内副業」を導入する企業もあります。適性の高い仕事を任せることで、本人の自己肯定感にもつながるでしょう。
シニア社員は役職定年や再雇用をきっかけに、人事評価の対象から外れてしまい、仕事のやりがいを見失うこともあります。そのため、企業はシニア社員の処遇を一律で決めるのではなく、貢献度や成果に応じて正当に評価することが大切です。頑張りが正しく認められる環境でこそ、シニア社員の前向きな気持ちは引き出されます。
社内での人材配置に限界がある場合は、副業・兼業を認めて社外での学びを促すという方法もあります。社外業務やボランティアなどを通じて、シニア社員が自身の強みや仕事のやりがいを再発見することもあるでしょう。キャリアにおける新たな可能性に気づかせることも、シニア社員のモチベーションを高めるポイントと言えます。
シニア社員のモチベーションを高めるには、年下上司のマネジメント力を高めることも必須です。そのため、年下上司に管理職向け研修やフィードバック研修などを受講させることも効果的でしょう。「年上の部下との接し方」「期待の上手な伝え方」などを年下上司に理解させることで、シニア社員の意欲も引き出しやすくなります。
ここまでは、シニア社員のモチベーションを高める重要性や主な施策などについて解説してきました。
本章からは、先日開催された特別セミナー「ミドルシニア社員が輝くCX(キャリアトランスフォーメーション)」より、田中研之輔教授の講義部分を抜粋して紹介します。「シニア社員のモチベーションを高めるには、過去志向ではなく"未来志向"で徹底的に本人と向き合うべき」と語る田中教授。具体的には、どのような考え方・どのような施策でシニア社員を支援すべきなのでしょうか。早速、田中教授の講義に耳を傾けてみましょう。
人生100年時代といわれるなか、一人ひとりのキャリアも長期戦になっているのが実情です。
これからの時代、企業はシニア社員のキャリア開発にどう向き合うべきなのでしょうか。
高年齢者雇用安定法の改正によって、社員の就業期間は「70歳」まで延びました。たとえ今50歳であっても、あと20年は働き続けることになります。だからこそ、今は年齢に対する価値観を大きく変えなければいけない時代とも言えるのです。極端にいえば、45歳や50歳の社員も「若手」として考える必要があると思います。「何歳からでも人は変容していける」という前提で、企業はシニア社員のキャリアに向き合う姿勢が必要なのです。
従来、シニア社員に対する向き合い方は、歩んできたキャリア・実績に目を向けて評価する「過去志向」が基本でした。ただ、今後は「これからまだまだ才能を伸ばしてあげる(タレント・グロース)」という考え方でシニア社員のキャリア開発に取り組むべきです。企業が本気でシニア社員のキャリア支援に向き合えば、本人も「この会社は自分のことを応援してくれる」という感情を抱き、モチベーションの向上にもつながりやすいでしょう。
未来志向のキャリアを考えるうえで大切なのが、「戦略」です。経営戦略を組み立てるのと同じように、キャリアも「今後どのような姿を目指したいのか」「どのような資本を蓄積したいのか」「そのためにどんな行動をすべきか」などを戦略的に考えます。100人の社員がいれば、100通りのキャリア戦略があっていいはずです。こうした一人ひとりのキャリア戦略を、まずはシニア社員と一緒に考え、それに沿って個別に支援を行うべきでしょう。
シニア社員のモチベーションを高めるには、「3つ」のキャリアプログラムを推進すべきと田中教授は語ります。
具体的には、どのような施策なのでしょうか。本章では、それぞれの実施方法や効果について紹介します。
終身雇用が崩壊しつつある今、「キャリア=組織内での出世」という考え方からシニア社員を脱却させる必要があります。そこで役立つのが、「キャリア論」の学習です。ダグラス・ホール氏の提唱した「プロティアン・キャリア」をはじめ、キャリア論にはキャリア戦略を立てるうえで非常に重要な考え方が詰まっています。だからこそ、キャリア論をシニア社員に教示することで、従来の価値観にとらわれないキャリア設計を促せるでしょう。キャリア論が体系化されたeラーニングのコンテンツも提供されているので、活用すると非常にスムーズです。詳細は「プロティアン・キャリアeラーニング(基礎編)」をご覧ください。
キャリア戦略会議とは、今後の働き方について戦略を立て、キャリアの"ブレーキ"を外す会議のことです。キャリアに悩むミドル・シニア社員を集め、月1回約1時間を目安に実施します。キャリア戦略会議では、参加者に「今キャリアをブレーキさせているものは何か」「今後いかに組織に貢献するか」「数年後どんなキャリアを目指したいか」などを考えてもらいます。すると、参加者は自身の悩みが可視化され、キャリアの方向性が見えてくることが多いです。加えて、組織側の病巣(キャリア開発上の課題)を発見でき、改善できることもあります。
キャリア戦略会議で特にキャリアの悩みが大きかったミドル・シニア社員には、1on1ミーティングも合わせて実施します。この場では、「業務で今困っていること」に関する相談に加えて、「3年後どうなりたいか」「今日から何に取り組んでいくか」という具体的な行動に関する話もします。決して「直近3ヶ月の成果が芳しくないですね」といった過去志向の話はせず、あくまで未来志向で今後のキャリアを設計することが大切です。ミドル・シニア社員本人が社内の人間に気を使っているようであれば、社外のカウンセラーを活用するのもよいでしょう。
「1on1ミーティングで何を話すべき?効果を高めるためのテーマ・ポイントを解説!」もあわせてご覧ください。
上述した3つのキャリアプログラムに加えて、「越境学習」もシニア社員には効果的と田中教授は語ります。
越境学習には、具体的にどのような効果があり、どのように実施すればよいのでしょうか。
「越境学習とは?代表的な"6つ"の手法や効果を高めるポイントを解説!」もあわせてご覧ください。
シニア社員には、社内副業や兼業といった越境学習の機会を設けることも効果的です。一度「外の世界」を見てもらうことで、キャリアショックが生じて本人の行動変容につながります。人はどうしても最初は変化を拒否することが多いですが、今とは違う場所へまず"半歩"出てみることで、徐々に変わる楽しさを味わえるものです。
越境学習の一例としては、新興ベンチャーの顧問職に挑戦させるという方法があります。新興ベンチャーの内部を見学させると、「この規模だとこんなスピード感で会社が動いているのか」という気づきにつながるでしょう。その結果、なかには気づきを得るのが楽しくなり、オンライン学習のような自己研さんを自発的に始めるシニア社員もいます。こうした「シニア社員が自発的に変われる機会」を企業として用意することが、非常に大切です。
※本稿の続きにあたる内容は、下記のアーカイブからご覧いただけます。下記より無料で視聴が可能ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
シニア社員のモチベーションを高めるための施策には、キャリアデザイン研修や人事評価制度の改定など、人事領域の専門知識が求められるものも少なくありません。そのため、早期に人材育成の企業へ相談することで、足りないノウハウを補うことができ、効果的な対策を実現できるでしょう。
当社は人材育成・組織開発のパイオニア企業として、シニア社員の活性化を支援しています。具体的には、田中研之輔教授が講師を務める「プロティアン・キャリアeラーニング(基礎編)」や、未来志向のキャリア設計を促す「年代別キャリアデザイン研修」など、さまざまなサービスを多角的に提供することが可能です。シニア社員のモチベーション低下に課題をお持ちの際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。