40代以上のミドルシニア社員は、昇進・転職・独立起業など、キャリアの変化が生じやすい時期と言えます。そのため、今後の方向性に思い悩み、立ち止まってしまう人も少なくありません。そこで大きな効果を発揮するのが、「キャリアデザイン研修」です。ミドルシニア社員向けにキャリアデザイン研修を実施することで、中長期的なキャリアの再設計を促進し、自信の回復やモチベーションの向上につなげられます。
そこで今回は、ミドルシニア社員を対象としたキャリアデザイン研修の重要性や効果について解説します。また、キャリアデザイン研修の効果を高めるためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
キャリアデザイン研修とは、自身の職業人生を振り返り、新しいキャリアプランを設計する研修のことです。
具体的には、自分の強みや役割、仕事に対する価値観などを整理したうえで、今後のキャリアにおける目標を立て、「キャリアプランニングシート」という計画書にまとめます。社員がキャリアデザイン研修を受講することで、自身の置かれた状況を見つめ直し、次のキャリアフェーズに向けて前向きなマインドを整えることが可能です。そのため、一般的にキャリアデザイン研修は、年代や役職の変わる"節目"のタイミングで実施されます。
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ミドルシニアという年代は、人生における分岐点が多く、キャリアの再設計が必要となりやすい時期です。本章では近年の社会変動も踏まえ、ミドルシニア社員にキャリアデザインが求められる理由について解説します。
人の一生は、従来は「教育」→「仕事」→「引退(定年)」という3つのステージで考えられてきました。しかし、現在は70歳までの雇用確保が企業の努力義務となり、定年以降の再雇用や再就職が当たり前になっています。
また、近年は健康寿命が延びて「人生100年時代」ともいわれ、一人ひとりが現役のビジネスパーソンでいられる時間も長くなっている状況です。その結果、キャリアは3ステージでは捉えられなくなり、会社勤め・転職・起業・兼業・学び直しといった複数のステージを柔軟に積み重ねる「マルチステージ」の時代に移っています。
こうしたマルチステージの人生では、50代であっても"まだ若手"と認識されるケースもあります。今まで「60歳で引退」というキャリアプランを描いていたミドルシニア世代にとっては、根本的な意識変革が必要です。先の長い人生のステージをどう積み重ねていくかは非常に重要で、キャリアの再設計が不可欠となっています。
今まで日本では新卒一括採用・終身雇用の人事制度が一般的だったため、生涯一社で勤め上げることも珍しくありませんでした。今でもミドルシニア世代のなかには、「キャリア=社内での昇進・昇格」と考えている人も少なくありません。しかし、現在は終身雇用が少しずつ崩れ、人材の流動化が始まっています。つまり、キャリアのオーナーシップ(主導権)を企業に預けるのではなく、人材自身で握らないといけない時代になったのです。
こうした変化は、終身雇用が当たり前だったミドルシニア世代にとって、非常に大きな影響があります。キャリアを自ら選び取る「キャリア自律」の意識を身につけ、今後の職業人生を再設計していくことが必要です。
※キャリア自律について詳しく知りたい方は、『若手とミドルの「キャリア自律」は違う?専門家に聞く"年代別"の支援策とは』の記事もご覧ください。
現在はVUCA時代ともいわれ、社会が目まぐるしく変動している状況です。例えば、デジタル技術の進化によってビジネスモデルや業界構造が塗り替わる事態(デジタル・ディスラプション)が起こりやすくなっています。人材にとっても、業務がITツールやAIに代替され、スキルが陳腐化してしまうリスクにさらされやすい時代です。
特にミドルシニア社員は、長年積み重ねたスキルが陳腐化してしまうことにより、精神的なショックを受けやすい年代です。新たなスキルを習得しなければいけない場合でも、うまく心が切り替わらない可能性も高いでしょう。だからこそ、定期的にキャリアプランを再設計し、柔軟にかじを切り直すための機会が必要となっています。
ミドルシニア社員がキャリアデザイン研修を受けることで、どのような効果があるのでしょうか。
本章では、ミドルシニア社員本人が得られる4つの効果について解説します。
ミドルシニア社員は人生経験が長い分、自分の強みが何なのかを把握しにくいのが課題です。その点、キャリアデザイン研修では、過去の経験を棚卸しし、「Will-Can-Must」のフレームワークで自分の強みを洗い出します。講師の客観的なアドバイスも受けながら、自分では気づけなかった新たな強みを発見することが可能です。こうして自分の武器が明らかになることで、自信の回復につながり、業務に対するモチベーションも向上します。
※「Will-Can-Must」について詳しく知りたい方は、『Will Can Mustとは?3つにズレがある人材への企業の対処法』の記事もご覧ください。
ミドルシニア社員は年齢を重ねるにつれ、組織内での役割に迷いはじめます。特に役職定年を迎えた社員は、肩書を失うことで、「企業から必要とされていないのではないか」と消極的な姿勢になりがちです。その点、キャリアデザイン研修では、上司や同僚からの評価を確認しながら、組織内での自分の役割を再定義できます。「自分が組織から必要とされている」と強く実感できるため、業務でのパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
ミドルシニア社員は経験を重ねるにつれて価値観が固まり、急な変化に対して消極的・否定的になってしまうことが多くなります。その点、キャリアデザイン研修では、社会や業界で起こっている変化を分析し、今後どう対応するかについて検討できるのも特徴です。これにより、変化に対処するための知識とマインドセットが身につきます。結果的に変化を前向きに受容でき、学び直しやリスキリングにも柔軟に取り組みやすくなるでしょう。
キャリアデザイン研修では、世の中の変化や自分のやりたいこと、組織から求められている役割などを総合的に考え、キャリアプランニングシートに今後の人生設計をまとめます。幅広い視野でキャリアを設計できるため、妥当性や納得性も高くなりやすいのが特徴です。また、自分自身と深く向き合うことで、"働く意味"も再認識できます。キャリアの目標が具体的になるため、業務にも前向きな気持ちで取り組めるようになるでしょう。
ミドルシニア社員向けのキャリアデザイン研修を実施することで、企業側にもさまざまなメリットがあります。
本章では、キャリアデザイン研修によって、企業側が得られる3つの効果について解説します。
キャリアの再設計を通じて、ミドルシニア社員一人ひとりが目標意識を持って業務に取り組めるようになります。その結果、社内全体で見ても生産性が高まったり、パフォーマンスが向上したりするでしょう。特にミドルシニア社員は豊富なスキルを備えた即戦力人材だからこそ、活性化による業績への好影響は大きなものになります。
※シニア社員の活性化について詳しく知りたい方は、『シニア社員のモチベーション向上に効く"3つ"の秘策とは?【田中研之輔教授に聞く】』の記事もご覧ください。
キャリアデザイン研修という有意義な場を提供することで、ミドルシニア社員から「自社が社員の将来について本気で考えてくれている」という好意的なイメージを持たれやすくなります。結果的に、ミドルシニア社員の自社に対する愛着や信頼感(従業員エンゲージメント)が高まり、組織の一体感も醸成されやすくなるでしょう。
※従業員エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、『従業員エンゲージメントを向上させるには?"7つ"の効果的な施策を解説!』の記事もご覧ください。
ミドルシニア社員のなかには、社内でのキャリア形成に悩み、パフォーマンスが顕著に低下してしまうケースも珍しくありません。しかし、本人がキャリアデザイン研修を受けることで、社内における自身の役割やキャリアの築き方をあらためて理解できます。また、ミドルシニア社員と上司の双方がキャリアデザイン研修の概要を理解することで、上司がマネジメントしやすくなったり、継続的なキャリアプランの支援をしやすくなったりするのも利点です。上司はミドルシニア社員のキャリアプランや希望を理解したうえで、最適な業務を割り振ったり、面談でケアしたりできます。
ミドルシニア社員向けにキャリアデザイン研修を実施する際は、カリキュラムや実施後のフォローを工夫することが重要です。本章では、ミドルシニア社員向けキャリアデザイン研修の効果を高めるポイントを紹介します。
ミドルシニア社員とひと言でいっても、年代によって抱えている課題はさまざまです。そのため、年代ごとにキャリアデザイン研修の内容も最適化しましょう。例えば、40代であれば「専門職とマネジメント職の違いやそれぞれへの適性」、50代であれば「定年後を見据えたキャリアのあり方や社会との関わり方」などのテーマを盛り込むのも一案です。各年代の悩みを解決できるようなカリキュラムにすることで、効果も最大化できます。
※キャリアデザイン研修の企画方法について詳しく知りたい方は、『キャリアデザイン研修の企画方法とは?プログラムの作り方や具体例も紹介!』の記事もご覧ください。
キャリアデザイン研修は一度受講して終わりでなく、キャリアプランを毎日の業務のなかで実践することに意味があります。そのため、研修後は上司と定期的に振り返りの場を設けることもポイントです。具体的には、上司と本人がキャリアプランニングシートを確認しながら、「今後どのような業務に取り組むべきか」「どのようなスキルを習得すべきか」などを検討します。上司のサポートを得ることで、本人の意欲もより向上するでしょう。
キャリアデザイン研修でキャリアプランを立てても、それを実現できる仕組みが社内になければ、本人のためにはなりません。そのため、ミドルシニア社員本人の希望がかないやすいような人事制度を設けることも大切です。
例えば、「社内FA制度」や「社内公募制度」など、挙手制で配属先を選べる制度を設けるのも一案です。また、ミドルシニア社員は専門職かマネジメントかで迷うケースも多いため、スペシャリストコース・マネジメントコースのような「複線的キャリアコース」を用意することも有効でしょう。人事評価制度・雇用制度の整備も含めて総合的にミドルシニア社員のキャリア支援に取り組むことで、キャリアデザイン研修の効果も一層高まります。
ミドルシニア社員はスキルの陳腐化や役職定年をはじめ、キャリアショックに直面しやすい年代と言えます。そのため、企業として定期的にキャリアデザイン研修を実施し、キャリアの再設計をさせることが大切です。ミドルシニア社員が"キャリアの羅針盤"を手にすることで、より前向きに自身の業務に向き合えるようになるでしょう。
また、キャリアデザイン研修を実施する際には、各年代の課題に応じて内容を最適化させることも重要です。ライトマネジメントでは、全世代に共通したキャリアデザイン研修だけでなく、40代・50代・定年前といった年代別のキャリアデザイン研修も提供しています。ミドルシニア社員を対象としたキャリアデザイン研修をご検討の際には、ぜひマンパワーグループ株式会社ライトマネジメント事業部までお気軽にご相談ください。