「人材育成で目標を立てたいけれど、指標の決め方がよく分からない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。通期や四半期ごとの目標設定は社員の成長に欠かせない一方、達成不可能な目標ではモチベーションの低下にもつながりかねません。だからこそ、正しい手順や指標を意識したうえで、目標を決めることが重要です。
そこで本稿では、「人材育成における目標の重要性」や「目標の設定手順」などについて分かりやすく解説します。職種ごとの具体的な「指標」も紹介しますので、ぜひ目標を立てる際の参考にしてみてください。
人材育成について基本的な部分から知りたい方は、ぜひ「人材育成の手法とは?正しい進め方・オンライン研修の活用法も紹介!」の記事も合わせてお読みください。
そもそも人材育成において目標設定はなぜ必要なのでしょうか。
ここでは、目標設定が重要である3つの理由について解説します。
大きな理由として、社員に目標を設定させることで、本人のモチベーション向上を図れることが挙げられます。「設定した目標を達成したい」という意欲が湧くため、社員は前向きに日々の業務に臨めるようになるでしょう。また、目標をクリアした際は達成感も味わえるため、再び次の目標に向けて意欲的に取り組めるようになります。
社員が目標の達成を目指し、スキルアップを図ることも可能です。例えば、社員が「現状の能力では目標達成が難しい」と判断すれば、研修を受けたり、先輩社員にアドバイスを求めたりと成長に向けて努力するようになります。目標達成を目指す過程で新たなスキルや知識を習得できるため、人材育成では大きな効果があるでしょう。
目標設定の際は、組織全体の目標を踏まえたうえで一人ひとりの役割を決定します。つまり、人材育成における目標は、経営戦略やビジョンといった企業の方向性を現場に周知する役割もあるのです。社員一人ひとりが組織の構成員としての役割を全うできるようになるため、最終的に企業全体の業績向上にもつながるでしょう。
人材育成において目標を立てる際には、どのような流れで進めればよいのでしょうか。
ここでは、目標を設定する際の手順を4つのステップで解説します。
社員の目標を立てる際には、まず上位目標である「企業全体の目標」を確認することが大切です。例えば、企業の通期目標が「業績1億円」だとすると、それを達成するために各部署・社員へどう目標数値を振り分けるのかも決めやすくなります。組織全体のビジョンから逆算することで、社員の目標に対する納得感も高まるでしょう。
具体的な目標数値を決める前に、組織内における社員一人ひとりのロール&レスポンシビリティ(役割と責任)を明らかにすることも重要です。責任の範囲が不明瞭なままでは、社員間で目標数値に不当な偏りが出てしまい、不満の原因にもなります。目標そのものが形骸化してしまうと、組織全体のパフォーマンスも低下しかねません。まずは社員に求める「貢献の度合い」を明確にすることで、最適な目標を立てやすくなります。
「組織全体の目標」と「個人の役割・責任」を念頭に置いたうえで、社員一人ひとりの具体的な目標数値を決めましょう。目標の方向性としては、「向上」「創出」「維持」「改善(削減)」などがあり、職種ごとに異なります。
例えば、営業職であれば「成約率を20%向上させる」、商品企画職であれば「新サービスを通期で1件創出する」、事務職であれば「請求書作成の際に起こるミスを0件に維持する」、総務職であれば「消耗品の費用を10%削減する」などが挙げられるでしょう。職種ごとの役割に応じて、目標の方向性や指標を決めることが重要です。
人材育成の目標はおのおのが達成を目指しやすいよう、一枚の計画表にまとめておくことも大切です。具体的には、「目標数値をいつまでに達成するか(スケジュール)」「どのように達成するか(行動プラン)」を言語化します。社員が業務のなかで目標を常に意識できるよう、計画表はオフィスの机やPCのデスクトップなど、目に見える場所に置いておくことも有効でしょう。計画表の進捗は定期的に振り返ることで、行動の改善にもつながります。
人材育成における目標の指標は、職種によっても異なるため、社員の役割に応じて設定することが必要です。
ここでは、目標設定の参考になるよう、職種別にそれぞれの主な指標について紹介します。
営業職は売り上げに直結する職種だからこそ、目標を定量的に定めやすいのが特徴です。例えば、成約率や受注額、新規顧客の獲得件数などの成果に加え、訪問件数やアポイント件数などの行動目標も織り交ぜるとよいでしょう。
<目標例>
◆週3回上長とロールプレイングを行い、成約率を前期比で10%高める
◆1日60件の架電を行い、週5件のアポイントを獲得・月300万円受注する
◆インサイドセールスと協力し、新規顧客の受注を5件獲得する
マーケティングはWebサイトや各種広告などを活用し、多くの良質な顧客を集めることが役割です。そのため、WebサイトのPV数や獲得リード数、メールの開封率、コンバージョン率などの定量的な目標が適しています。
<目標例>
◆自社ブランドサイトで新規記事を月5件作成し、自然検索トラフィック数を前期比150%に高める
◆自社SNSアカウントを積極的に運用し、エンゲージメント率を前期比200%に高める
◆展示会で100件の名刺を獲得し、月10件を商談化させる
エンジニアはいかにスキルを磨き、良質なシステムを開発できるかが求められます。そのため、進捗遅れの発生率やバグ・エラーの発生件数などの業務上の目標に加え、言語の取得や勉強会への参加などの成長目標も重要です。
<目標例>
◆グループ内での情報共有を積極的に行い、進捗遅れの発生率を10%削減する
◆ダブルチェックを徹底し、アプリケーションの不良件数を3件以下にする
◆Pythonをテーマにした社内勉強会を週1回開催し、チームメンバーのスキルアップを支援する
総務はいかに社内の「無駄」を発見し、業務の効率化や経費の削減を図れるかが重要になります。そのため、オフィスの光熱費や消耗品の購入費、福利厚生の利用率、改善アイデアの提案件数などが主な指標になるでしょう。
<目標例>
◆備品の使用量や購入先を見直すことで、消耗品のコストを前期比5%削減する
◆社内報でオフィスのエコ活動に関する情報を発信し、光熱費を前期比10%削減する
◆ノー残業デーの運用を現場に徹底させ、社内の平均残業時間を月20時間以内にする
管理職は、プレイヤーとしての業務と合わせて「組織目標の達成」や「部下の能力開発」などの役割を持ちます。そのため、組織全体の売り上げや残業時間、生産性、独り立ちさせる部下の人数などの指標が適しているでしょう。
<目標例>
◆部下の商談同行を月20件行い、組織全体の売り上げ1,000万円を達成する(営業部)
◆学生向けのミートアップを月1回開催し、新卒採用で30名以上の社員を採用する(人事部)
◆労務管理をExcelからデジタルツールへ移行し、業務時間を3割削減する(労務部)
◆残業時間の多い部下の業務内容を見直し、部署の平均残業時間を月10時間以内にする(全部署共通)
人材育成で効果的な目標を設定するためには、どのような点を意識すればよいのでしょうか。
ここでは、社員の目標を立てる際や立てたあとに実践すべきポイントについて解説します。
人材育成における目標は、できるだけ具体的かつ定量的に測定できる指標の方が望ましいです。例えば、営業職なら「売上○○万円」、人事職なら「採用数○○名」などの指標が挙げられます。仮に「売り上げを伸ばせるよう頑張る」「受注件数を高められるよう取り組む」のように目標があいまいだと、達成できたかどうかの判別もつかなくなるためです。目標は第三者でも分かりやすいよう具体的・定量的に設定することで、進捗を振り返りやすく本人の達成感にもつながるでしょう。
目標を設定する際には、人事評価制度と連携させることも大切です。例えば、営業職で「売上100万円」を目標にする場合は、「売上120万円を達成したらA評価」「売上200万円を達成したらS評価」のように事前に決めておき、本人と内容を確認し、同意を取っておきます。目標の達成度合いと人事評価を相関させることで、評価内容に対する本人の納得感も高まりやすいでしょう。
人材育成では、社員に高すぎる目標を課してしまうと、達成の望みが薄くなり本人の成長につながらない場合もあります。そのため、本人の適性やスキルレベルを勘案したうえで、達成可能な目標を設定することが大切です。「小さな達成」を繰り返すことで、本人のモチベーションも上がり、前向きに仕事に取り組めるようになります。
人材育成においては、組織から一方的に目標を押しつけると、「やらされ感」が生まれてしまいます。そのため、できるだけ目標は社員自身に立てさせることで、自律性や達成意欲の醸成につながるでしょう。また、目標を社員に設定させるためには、社員自身が「仕事でやりたいこと」や「組織での役割」などを自覚しておく必要があります。だからこそ、事前にキャリアデザイン研修を受講させ、社員にキャリアの設計を促すことも大切です。「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」もあわせてご一読ください。
目標を設定したあとには、定期的に本人と上司が振り返りの場を設け、進捗を確かめることも重要です。上司から成果について適宜フィードバックすることで、本人も「今後目指すべきゴール」や「改善すべき行動」などを理解できるようになります。定期的な"気づき"の場を与えることで、より効果的な人材育成につながるでしょう。
効果的なフィードバックの手法・流れについては、お役立ち資料の「現場のパフォーマンスを高めるネガティブフィードバックとは?」にて解説しています。無料でダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。
人材育成における目標を設定する際には、社員の納得感を高める工夫が必要です。例えば、社員にキャリアデザイン研修を受講させ、理想のキャリア像を明確にさせたうえで目標を決めるのも有効でしょう。また、管理職向けにフィードバック研修を実施することで、評価面談における上司の伝え方がスムーズになり、部下のモチベーション向上にもつながります。
当社では、人材育成のパイオニア企業として、数々の研修サービスを提供しています。具体的には、全社員向けの「年代別キャリアデザイン研修」や管理職向けの「評価面談研修/フィードバックスキル向上研修」を通じて、目標達成への意欲向上を支援することが可能です。人材育成の目標設定に課題を感じた際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。