

働きアリの法則とは、集団の中でよく働く2割、平均的に働く6割、働きが低い2割に分かれるとされる考え方で、「2対6対2の法則」とも呼ばれます。似た言葉に「パレートの法則」がありますが、パレートの法則は成果の8割が一部の要素によって生まれるという考え方であり、働きアリの法則とは意味が異なります。
そこで今回は、働きアリの法則の意味や誤解されやすい点を整理し、人材開発に活かす際のポイントを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
よく耳にする「働きアリの法則」ですが、具体的にはどのような意味を持つのでしょうか。
本章では、働きアリの法則の意味や内容、「パレートの法則」との違いについて解説します。
働きアリの法則とは、働きアリを「よく働く」「標準的に働く」「働かない」という3つに分類したとき、割合が「2:6:2」になるという傾向のことです。たとえ働かない2割のアリを巣から排除しても、同じように2割のアリが働かなくなり、「2:6:2」の割合に収まるといわれています。これに関して、2012年に北海道大学が研究し、研究結果(※)を発表しました。同研究チームによれば、アリのコロニー内から働かない個体だけを取り除いても、必ず一定数の働かない個体が現れ、働き度合いのばらつきはほぼもとに戻ることが証明されています。
※参照:働くアリだけのグループにしても働かない個体が現れることを証明|北海道大学(PDF)
働きアリの法則は人間社会にも当てはまるといわれ、さまざまな組織で応用されている考え方です。会社組織に置き換えると、従業員のパフォーマンスレベルは高い順に上位2割の「ハイパフォーマー」、中間6割の「ミドルパフォーマー」、下位2割の「ローパフォーマー」に分かれると考えられます。企業によっては、上位2割・中間6割・下位2割の割合で人事評価を分け、給与額や役職の基準としているケースも珍しくありません。
働きアリの法則とよく似た考え方に、「パレートの法則」があります。パレートの法則とは、経済学者のヴィルフレート・パレート氏が提唱した法則で、「成果全体の8割は集団の2割が生み出している」という経験則のことです。「80:20の法則」とも呼ばれ、マーケティング戦略や投資戦略で活用されています。例えば、「販売額の8割は2割の顧客から生み出される」「税金総額の8割は2割の納税者でまかなっている」などが代表的です。
パレートの法則は、「成果や報酬の大部分が、わずかな割合の人から生み出される」という意味合いで使われることがほとんどです。働きアリの法則のように、「組織内の割合が8:2になる」という意味では使われません。
| 働きアリの法則(2:6:2の法則) | パレートの法則(80:20の法則) | |
|---|---|---|
| 注目する視点 | 集団内の活動量・意欲の分布 | 集団が生み出す成果・売上の分布 |
| 割合 | 上位2割:中間6割:下位2割 | 上位2割が成果全体の8割を生み出す |
| 主な活用場面 | 人材開発・組織マネジメント・育成施策の設計 | マーケティング・営業戦略・投資判断 |
| 組織への示唆 | 下位2割を排除しても新たな下位層が生まれる。全体の底上げが重要 | 成果に大きく影響する人材・顧客・業務などを見極め、重点的に取り組むことが重要 |
| 共通点 | どちらも、集団や成果に一定の偏りが生じることに着目した考え方。人材開発では、上位層への投資と中間・下位層の底上げを考える際に組み合わせて活用できる | |
人材開発においては、パレートの法則のように成果への影響が大きい領域を見極める視点も重要です。一方で、働きアリの法則を活用する際は、上位層だけに注目するのではなく、中間層・下位層を含めた組織全体の底上げを考えることが大切です。
働きアリの法則は、企業の人材開発においても応用することが可能です。
本章では、働きアリの法則を人材開発に活かすときのポイントについて解説します。
働きアリの法則によれば、全体のうち働かない2割の層を排除したとしても、また働かない層が生まれます。つまり、会社組織においても下位2割のローパフォーマーを切り捨てることに意味はないと言えるでしょう。むしろローパフォーマーを見放すことで、「自分も同じような扱いを受けるのではないか」とほかの従業員が不安に感じてしまいます。結果的に従業員のエンゲージメントが下がり、優秀な人材が離職する可能性すらあるのです。
※従業員エンゲージメントについて詳しく知りたい方は、『従業員エンゲージメントを向上させるには?"7つ"の効果的な施策を解説!』もあわせてご覧ください。
「2:6:2」はあくまで経験則であり、絶対不変の割合とは言えません。組織によってはハイパフォーマーが3割に近づいたり、ローパフォーマーが1割に減ったりする可能性も十分考えられます。だからこそ人材開発で重要なのは、下位2割を排除することではなく、「2:6:2」それぞれの層に活躍を促し、組織全体としてパフォーマンスの底上げを図ることです。ハイパフォーマー・ミドルパフォーマー・ローパフォーマーそれぞれの課題と現状を踏まえたうえで、各層に見合った人材開発を進めることで、組織の活性化や事業の成長も期待できるでしょう。
まずは、働きアリの法則で上位2割を占める、ハイパフォーマーへの対策について見てみましょう。
ハイパフォーマーは自走性が高いゆえに組織から放置されがちですが、人知れず不安や課題を感じていることも珍しくありません。本章では、ハイパフォーマーに活躍を促すための方法やケアについて具体的に解説します。
ハイパフォーマーのなかには、目標達成への意欲が高く、頑張りが報われることに喜びを感じる人も多くいます。そのため、「ストレッチ目標」と呼ばれる、背伸びすれば届く高さのハイレベルな目標を設定させることもひとつの育成方法です。本人がより高いモチベーションで仕事に向き合えるようになり、さらなる成長が期待できます。
ハイパフォーマーのなかには、「業務量が多いにもかかわらず仕事の進め方に自由がない」と不満に感じる人も少なくありません。成果を出せる従業員に関しては、ルールの範囲内で最大の裁量を与え、業務の進め方や働き方を柔軟に選ばせることも大切です。自分に合ったスタイルで働くことで、成果が高まる場合もあるでしょう。
ハイパフォーマーは高い成果を安定して出しているがゆえに、「周囲からの期待に応え続けなければいけない」というプレッシャーを感じる人もいます。また、ハイパフォーマーは上司から手離れするケースが多いため、相談に乗ってもらえる機会が少なく、人知れず不安を抱えているケースもあるのです。だからこそ、上司が1on1ミーティングのような場を積極的に用意し、ハイパフォーマーゆえの悩みを丁寧にケアすることも大切でしょう。
続いては、働きアリの法則で中間6割にあたるミドルパフォーマーへの対策を紹介します。
組織の成果を底上げできるかどうかは、ボリュームゾーンである中間層6割の成長にかかっています。だからこそ、上司や人事はミドルパフォーマーを放置することなく、積極的に能力向上の施策を講じるようにしましょう。
ミドルパフォーマーのなかには、「会社からあまり期待されていないのではないか」と感じ、仕事のモチベーションが上がっていない人もいます。そのため、会社からの期待や組織における役割を、本人へ具体的に伝えてあげることが大切です。「組織から必要とされている」と本人に強く感じさせることで、意欲向上が期待できます。
ミドルパフォーマーの底上げには、日常的な1on1と中長期のキャリア面談を連携させることが有効です。具体的な進め方は、資料『"1on1とキャリア面談のハイブリッド化" 日常にキャリアビジョンを取り入れる実践ガイド』をご覧ください。
将来のキャリアや目標がないまま、与えられた仕事に取り組んでいるミドルパフォーマーも少なくありません。そのため、キャリアデザイン研修のような場を活用し、本人に中長期的なキャリアをあらためて設計させることは有効です。目指すべき姿が見えることで、それに向かって意欲的にスキルアップに励みやすくなるでしょう。
※キャリアデザイン研修について詳しく知りたい方は、『キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント』もあわせてご覧ください。
成果が上がり切らないミドルパフォーマーは、単純に成功のノウハウを知らないだけという場合もあります。そのため、本人にハイパフォーマーの行動を分析させ、ノウハウを発見・学習させることもひとつの方法です。そこで得た気付きや学びを同じ部署内で横展開してもらうことで、組織全体でのパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
最後に、働きアリの法則のうち下位2割にあたるローパフォーマーへの対策について解説します。
成果が伸び悩むローパフォーマー社員への対応は、時間や労力がかかるため後回しにされがちです。しかし、対応を先送りにすると、本人の成長機会が失われるだけでなく、周囲の社員の負担増やチーム全体の生産性低下につながる可能性があります。
まずは、成果が上がらない原因を本人の意欲だけに求めるのではなく、スキル不足、役割期待の不明確さ、配置のミスマッチ、上司からの支援不足など、複数の観点から整理することが重要です。そのうえで、短期的な目標設定や定期的なフィードバック、必要に応じた役割・配置の見直しを行い、本人が力を発揮できる状態をつくっていきましょう。
ローパフォーマーは、人それぞれに成果が上がらない原因を抱えています。例えば、「人材配置にミスマッチが起きている」「スキルが陳腐化している」「役職定年で労働への意欲が下がっている」などさまざまです。まずは上司がローパフォーマー本人とじっくり面談して、活躍の障壁となっている原因を探すことから始めましょう。
ローパフォーマー対応では、成果が上がらない原因を整理し、タイプに応じた支援策を検討することが重要です。具体的な対応策を確認したい方は、対策リスト付き資料『ローパフォーマーを"活躍"させる戦略とは?』をダウンロードしてご活用ください。
周囲の接し方も、ローパフォーマーの意欲を下げる原因になることがあります。例えば周囲が、「私たちチームが困るから、頑張ってほしい」「上司の私が大変だから、成果を出してほしい」というようなコミュニケーションをとってしまうと、ローパフォーマー本人はうまく自分事化できません。「あなたのために厳しいことも言いますね」のように、主語をローパフォーマー本人に変えることで、スムーズに意識変革を促しやすくなります。
※ローパフォーマーに対するコミュニケーションの取り方について詳しく知りたい方は、『ローパフォーマー対応3つのポイント』もあわせてご覧ください。
ローパフォーマーの成果改善に取り組む際には、上司が全力で本人に向き合い、業務上の支援と指導をする必要があります。そのとき重要なのは、時限的な目標を決め、短期的に集中してパフォーマンス向上に取り組むことです。スケジュールを意識させることで、本人の意欲に火をつけることができ、行動変革を促しやすくなります。また、期間をあらかじめ定めておくことで、指導担当である上司の心理的な負担を軽減することも可能です。
働きアリの法則とは、「成果の高い人材:成果の標準的な人材:成果の低い人材=2:6:2」の割合になるという経験則です。上位層2割、中間層6割、下位層2割、それぞれに能力開発の課題や悩んでいることは違います。そのため、それぞれに適したアプローチ方法を検討することで、よりスムーズに活躍を促せるでしょう。
また、同じローパフォーマーでも、年代や役職によって課題はさまざまです。「役職定年をきっかけにモチベーションが下がってしまった」というシニア層もいれば、「業務内容とスキルのミスマッチに悩んでいる」という若年層もいます。一人ひとりの課題と向き合うことで、より強い組織の構築につなげることが可能です。
ライトマネジメントでは、人材の課題別・階層別に豊富な研修を用意し、パフォーマンス向上を支援しています。人材開発・組織開発で課題をお持ちの際には、マンパワーグループ株式会社ライトマネジメント事業部へお気軽にお問い合わせください。