早期退職優遇制度を導入したものの、「応募数が想定より少ない」と悩んでいる方も多いかもしれません。早期退職優遇制度は、社員のセカンドキャリア支援や社風の若返りなど、社員個人にとっても、組織にとっても深い意義を持つものです。しかし、早期退職優遇制度の価値が社員に認知・理解されていない状態では、期待した効果も見込めなくなってしまいます。
そこで今回は、「早期退職優遇制度を活性化させる方法」について分かりやすく解説します。また、制度の活性化に向けて「社員がキャリア自律の意識を持てるようになるための方法」も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
シニア層のキャリアをどう輝かせるか?大手建設会社における早期退職優遇制度がもたらした新たな選択肢
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※「そもそも早期退職優遇制度とは?」から知りたい方は、「早期退職優遇制度とは?優遇措置の種類や導入までの流れを分かりやすく解説!」も合わせてお読みください。
早期退職優遇制度とは、定年前に退職する社員に対して、退職金の割り増しや再就職支援などの優遇条件を付与する恒常的なキャリア支援制度のことです。近年はミドル・シニア社員の活性化や社内の若返りなどを目的に、制度を導入する企業も増えています。現状ではどのくらいの企業が導入し、積極的に運用しているのでしょうか。
当社が実施した調査(※)によれば、早期退職優遇制度を導入している企業は全体の「34.1%」でした。3割強に及ぶ企業が制度を導入しています。しかし、制度を導入済みの企業のなかで「(制度が)かなり活用されている」と回答した企業は「5.3%」、「まあ活用されている」と回答した企業は「32.2%」のみでした。「どちらとも言えない」「あまり活用されていない」「全く活用されていない」を含めると、半数以上にのぼります。つまり、早期退職優遇制度を導入する企業は増えているものの、制度の運用に課題を持つ企業も多いのが実情なのです。
そもそも早期退職優遇制度の利用率を上げることで、企業にはどのような利点があるのでしょうか。
ここでは、早期退職優遇制度を活性化させるメリットについて解説します。
どの企業においても、「今の仕事にやりがいを感じられない」「自分らしさを発揮できていない」と悩む社員は少なからず存在します。しかし、今の環境を捨てることに不安を感じ、現状維持を選んでしまっている社員も珍しくありません。こうした人材に対し、「定年まで自社に残る」以外のキャリアを選択肢として提示できるのが、早期退職優遇制度のメリットです。社外にも活躍の場があることを認識することで、本人が自身の新たな強みに気づけるケースもあります。早期退職優遇制度の活性化によって、社員の多様なキャリア形成を後押しできるでしょう。
早期退職優遇制度を活用することで、ミドル・シニア層が新たなキャリアの可能性に気づき、前向きに社外への転進を選ぶケースも増えます。その結果、社内の若返りにつながる効果も期待できるでしょう。「上のポストが詰まっており、昇進の機会がない」と悩む若手社員に対して、活躍の機会を提供できるようになります。
しかし、社内の年齢構成をガラリと変えるほど、大きな影響を見込めるわけではありません。そのため、社内の若返りを最優先に考える際には、時限的に退職者を募る「希望退職制度」が検討課題として上がります。希望退職制度について詳しく知りたい方は、「【保存版】早期退職と希望退職の違いは?運用のポイントも解説!」の記事も合わせてお読みください。
早期退職優遇制度の活用がなかなか進まない原因は、どこにあるのでしょうか。
ここでは、早期退職優遇制度が不活性化してしまう原因について解説します。
早期退職優遇制度そのものが社員に認知されていない場合、当然ながら利用率も上がりません。また、早期退職優遇制度の存在自体は認知されているものの、制度に込められた意義やメッセージまでは伝わっていないというケースも考えられます。その場合、社員から「リストラの一環ではないか」と疑念を持たれてしまい、敬遠されかねません。そのため、「当社は今、どのような方向性に向かっているのか」「その中で、社員にどのようなことを求めているのか」「なぜこの制度を導入したのか」といった制度趣旨を認知させることが第一歩と言えます。
早期退職優遇制度は、大前提として社員に自発的な応募を促すものです。そのため、社員が「自分のキャリアは会社に委ねておけばいい」という意識を持っている場合、なかなか応募は集まりません。早期退職優遇制度の利用を促進するためには、社員一人ひとりにキャリア自律の考え方を根付かせ、自律的な進路選択を促す必要があります。
特に近年は社会や市場が不安定で、終身雇用も崩壊しつつある状況です。従来のビジネスの延長線だけでは永続的な成長は難しい時代になりました。社員に求められる知識やスキル、経験が市場環境の変化とともに変わってきている昨今、社員一人ひとりが「組織から求められている期待役割は何か」「それに応えるために、自分には今何が求められているのか」「何を学ばなければならないのか」を考え、実行に移すことが求められています、そのような中で自分のキャリアを会社に任せる考え方を取り続けることは、もはや不可能です。社員が変化をしなやかに乗り越え、組織成長の原動力になってもらうためにも、キャリア自律の推進は非常に重要です。
早期退職優遇制度の募集要項が原因で、応募が集まらないこともあります。例えば、「応募できる年齢の幅が狭すぎる」「応募のタイミングが少なすぎる」という場合、必然的に応募者も少なくなってしまうでしょう。また、特別休暇や転進支援金などの優遇条件が極端に低い場合も、社員が応募をためらってしまう原因になります。そのため、早期退職優遇制度の利用を推進したい場合は、制度の内容を再度吟味することが必要です。
早期退職優遇制度の導入や活性化をテーマにしたセミナーも宜しければご覧ください
録画セミナー|早期退職優遇制度を活性化するには(制度導入済み企業様向け)
録画セミナー|早期退職優遇制度を正しく導入するには(未導入企業向け)
早期退職優遇制度の利用率を高めるためには、企業としてどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。
ここでは、早期退職優遇制度を活性化させる「6つ」のポイントについて解説します。
早期退職優遇制度の活性化を図る際には、まず制度の目的を明らかにすることが大切です。具体的には、世の中の動きや自社を取り巻く環境の変化、それに伴う自社の状況、社員に求めることなどを言語化します。例えば、「先行き不透明な社会状況を乗り越えられるよう、変化に強い組織体制をつくりたい」「人生100年時代を迎える今、社員一人ひとりの職業人生がより有意義なものになるよう支援したい」などが挙げられるでしょう。早期退職優遇制度の目的が明確になることで、社員にも制度の意義や価値が伝わり、賛同を得やすくなります。
早期退職優遇制度への自発的な応募を促すには、大前提として社員に「キャリア自律」の考え方を浸透させる必要があります。そのために重要なのは、トップマネジメントが「キャリア自律」について、自分自身の「想い」を乗せて、明確な言葉で社員に語りかけることです。キャリア自律がいかに重要かについて、他から借りてきた言葉でなくトップマネジメントが自らの言葉で伝えていくことで、「これは会社にとっての重要施策だ」と社員が認識するようになります。キャリア自律について、トップマネジメントと社員の相互理解が醸成されて初めて、自分らしいキャリアの選択肢の一つとして早期退職優遇制度が認知されることになります。
社員にキャリア自律を浸透させるには、「キャリアデザイン研修」を受講させることも効果的です。キャリアデザイン研修では、社員一人ひとりが「キャリアの考え方」「自身の価値観」、「強み」や「周囲からの期待・役割」、「外部環境の変化」などを再認識し、将来のありたい姿を言語化した上で、それを実現するためのアクションプランを含めたキャリアプランニングシートをまとめます。特に40~50代のミドル・シニア層は早期退職優遇制度の対象になることも多く、セカンドキャリアについて目を向けるべき大切な時期です。だからこそ、キャリアデザイン研修を受講させることで、社内外を問わず新たな挑戦を促しやすくなるでしょう。
キャリアデザイン研修については「キャリアデザイン研修の効果とは?効果を最大化させる4つのポイント」で詳しく解説しております。
社員のなかには、そもそも「自社に残る」以外の選択肢を考えていない人もいます。そのため、定期的に上司が部下とキャリア面談を実施し、幅広いキャリアの選択肢を考える機会を提供してあげることも大切です。キャリア面談は、人事評価を伝える「評価面談」とは異なり、今後のキャリアについて社員が考えていることを、傾聴を通じて引き出していく面談です。上司が部下のキャリアプランニングシートを見ながら、「今悩んでいること」「今後やりたいこと」「必要な支援」などについて相談に乗ります。
仮に部下が自社でのキャリアに行き詰まりを感じているようであれば、社外での活躍に目を向けさせるのもひとつの方法です。社員一人ひとりが中長期的なキャリアを自発的に考えられるようになれば、早期退職優遇制度への応募を考えるきっかけにもなるでしょう。ちなみにキャリア面談には、上司に十分な面談ノウハウやコミュニケーションスキルが求められます。そのため、あらかじめ上司に「キャリア支援研修」を受講させておくことも効果的です。
早期退職優遇制度の募集要項に問題があるようであれば、見直しを図ることも大切です。例えば、応募者を増やすための対策として、「対象者の年齢層を広げる」「応募タイミングを年1回から年2回に増やす」「応募者が余裕を持って転職活動に臨めるよう『転進準備休暇(特別休暇)』を設ける」などが挙げられます。社員の意見や要望にも耳を傾けながら、社員に応募するメリットを感じてもらえるような制度の内容へ改善することが肝心です。
早期退職優遇制度の名称を変更することも、社員に制度を自発的に活用してもらうためのひとつの方法です。例えば、「早期退職優遇制度」という名称以外に、「転進サポート制度」や「生涯設計プログラム」の方が制度の意義が伝わりやすいケースもあるでしょう。ほかにも、「セルフプロデュース制度」や「セカンドキャリア支援制度」など、企業ごとに名称はさまざまです。制度の趣旨を反映した名称とすることが望ましいです
早期退職優遇制度の活用を推進するには、制度の中身や名称を見直すことも必要です。ただし、より重要なのは、大前提として社員がキャリア自律の意識を持てるような環境をつくることです。社員一人ひとりが「自分らしいキャリアを歩みたい」と思うようになれば、おのずと社外への転進も選択肢に入ってきます。そのため、キャリア面談やキャリアデザイン研修などのキャリア自律支援も活用しながら、制度の利用率を高めていくことが大切でしょう。
当社では、日本型再就職支援サービスのパイオニアとして、早期退職優遇制度の活性化や人材のキャリア自律推進を支援しています。早期退職優遇制度の運用にお困りの際には、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
また、早期退職優遇制度の活性化について、他社の成功事例を参考にすることも大切です。モデルケースを自社にも当てはめることで、制度の利用率が高まることもあります。当社では、「早期退職優遇制度の活性化に成功した事例」をお役立ち資料にまとめています。無料でダウンロード可能ですので、ぜひお気軽にご活用ください。