

企業の組織再編や雇用調整に際しては、退職を選択する従業員の不安を和らげるためにも、再就職支援サービス(アウトプレースメント)の提供が欠かせません。しかし、「具体的にどのようなサービスなのか」「自社にとってどのようなメリットがあるのか」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、長年にわたり多くの企業の組織再編・雇用調整プロジェクトに携わってきた雇用調整コンサルタントの古川にインタビューを実施。国家資格キャリアコンサルタントを有し、豊富な経験と実績を積んできた古川が、企業が直面する雇用調整の課題に対し、どのように再就職支援サービスを活用して解決に導いているのかを深掘りします。
雇用調整コンサルタントとキャリアコンサルタントが連携し、企業の人事担当者と退職者を支援する流れを示した図です。
――はじめに、古川さんのご経歴を教えてください。
2002年に入社して以来、派遣社員のキャリアカウンセリングや人材育成研修の講師などを通して企業人事の課題解決に従事しています。雇用調整コンサルタントとしては10年以上の経歴で、担当する企業の約7割は外資系企業です。
――雇用調整コンサルタントとして、企業にどのようなサービスを提供しているのでしょうか。
企業側のコンサルティングを担当していますので、組織再編を検討している企業の人事担当者から相談を受けて、施策立案から社内での制度発表、実際の施策推進とフォローアップまでのサービスを一気通貫で提供いたします。
まずはご相談に至った背景や今後の成長戦略などを丁寧に伺い、将来を見据えて今やるべきことを整理・提案します。その後、再就職支援のフェーズでは利用者を支援するキャリアコンサルタントと連携して情報を共有し、一人ひとりにとってより良いキャリアをご提案できるようサポートします。
――サービスの品質を高めるために意識して取り組んでいることはありますか。
担当企業が抱える課題に対して確度の高い仮説を持ってコンサルティングに臨むために、日々の情報インプットは不可欠です。あらゆる業界の動向や担当企業の現況などをニュースでチェックしたり、ご支援中の企業とのやり取りから見識を広げたりしています。
労働法まわりの知見も円滑なプロジェクト運営をするうえで欠かせませんから、判例を定期的に調べて労働法の解釈をアップデートするようにもしています。大学で労働法を専攻してリーガルマインドを習得したことが、今の仕事に役立っていますね。
――再就職支援の仕事をしていて、最もやりがいを感じるのはどんなときですか。
企業と退職者、そして退職者が今後歩むキャリアに関わる方々にとって幸せな結論に達したときでしょうか。私自身、弊社で培った数々の経験から学んだ『価値観や思考が多様であるとの前提で、一人ひとりと肯定的に向き合う』ことをモットーにして日々尽力していますので、利用者側の担当コンサルタントを介してサービス利用者が退職後に新天地で活躍している様子を聞くと嬉しくなります。
これまで3000人以上の利用者と関わる中で、再就職支援によって新たなキャリアを歩んだ方が所属先で長年培ってきた知見と経験を存分に活かして高い成果を発揮するケースを数多く目の当たりにしました。利用者一人ひとりの価値観に合ったキャリア実現に寄与できていると実感できる場面に立ち会うと、私どもがプロジェクトに介在した価値があったと実感できますね。
――他にやりがいを感じる場面はありますか。
企業担当のコンサルタントとしては、企業が求める目標を達成できたときもやりがいを感じます。特に大規模な組織再編プロジェクトでは難易度が上がりますから、プロジェクトを無事完遂したときの達成感は大きいです。
私の経験上、企業側が社員一人ひとりの心情に寄り添わない関わり方をしているプロジェクトではトラブルが発生しやすい傾向にあります。こうした事態を未然に防ぐために、弊社では独自のノウハウが詰まったコミュニケーションプランを含めた施策を提案し、現場の管理職の方々と利用者とのコミュニケーションに活用していただくよう支援します。
――再就職支援サービスの利用者の心情に寄り添うコミュニケーションを取ることは、プロジェクトの結果に大きく影響するのですね。
おっしゃる通りです。再就職支援サービスを利用する方々が、所属企業の組織再編に伴うご自身のキャリア転換に対してうまく感情の落とし所を見つけられるように関わることは非常に大切です。それができてこそ、今後のキャリア実現に向けて具体的かつ前向きな検討が進み、最終的に利用者それぞれのキャリアや価値観に合ったキャリアトランジションを実現できるようになりますからね。
――古川さんは外資系企業を多く担当されているとのことなので、外資系企業で再就職支援(アウトプレースメント)の担当者からよく伺う悩みや課題を教えていただけますか。
一つは、「日本の労働法制の厳しさを本国に理解してもらえない」ことです。日本の労働法制は世界標準と比べて労働者保護が手厚いため、外資系企業の担当者が日本で再就職支援を進めようとすると、想定以上に多くの制約に直面しがちです。担当者が本国に日本特有の労働法制を説明しても理解を得られず、板挟みになってしまうという話は、外資系企業からのご相談でよく耳にします。
もう一つは、「本国から時間的猶予のないプロジェクトスケジュールを求められる」ことです。一般的に外資系企業は日系企業と比べて労働移動が多いため、雇用調整や組織再編の際には施策立案から再就職支援までを短期間で遂行するよう求められがちです。個人的な体感だと、日系企業の倍以上の速さでプロジェクトが進行しているように感じます。
――二つの悩みを解決してプロジェクトを成功に導くために、どのような工夫をされているのでしょうか。
まず大事なのは、日本と本国の法制面や文化面の違いを本国側にご理解いただくことです。当社が英語版で用意している日本の労働法制や判例集を活用しながら、日本向けに調整していただくよう本国側に交渉し、双方にご納得いただける施策を立案していきます。もし本国側との交渉が難航したとしても、私どもが打ち合わせに同席して最適な結論を導けるようにします。
本国が提示するスケジュールの実現性については、あまり心配する必要はありません。弊社は国内大手再就職支援会社の中で唯一の外資系企業ですので、私を含む弊社のコンサルタントは外資系企業の支援に数多く携わっています。本国側が求める短期間でのプロジェクトには慣れています。いつご相談をいただいても、限られた期間内で一連の施策を実行できますのでご安心ください。
――再就職支援を取り巻く近年の環境変化について、どのように考えていますか。
企業を取り巻く環境は常に変化しており、技術の進展やビジネスモデルの変化とともに組織やビジネスの再編を行う必要性が一層増しています。再編の影響を受けて所属企業で長年培ってきたスキルや知識を十分に活かせなくなった方々がより望ましいキャリアを実現できるようにするために、再就職支援サービスのニーズも高まっていくと考えられます。
――お話いただいた環境変化を踏まえて、企業が再就職支援サービスを受けることでどのような効果を得られるのか教えてください。
企業経営の観点では、『より筋肉質な組織体制を実現できる』効果があります。事業を取り巻く環境が変わると、今まで企業の成長に寄与していた技術が通用しなくなり、従業員の実力に見合うポジションの提供が難しくなります。こうした状況から脱却して筋肉質な組織体制になる、つまり高収益を見込める事業領域に軸足を移して企業を継続成長させるために、企業の成長戦略に見合った知見やスキルを持つ人材を揃えようと考え、雇用調整を検討せざるを得ないケースは往々にしてあります。
雇用調整を伴う組織再編を滞りなく遂行するためには、関連する法律や制度、従業員との関わり方など多くの知識や経験が必要になります。これらを有するコンサルタントの支援を受けることで起こり得るリスクを未然に防ぎ、今後の成長戦略実現を見据えた組織をより速く構築できるのです。
再就職支援サービスを受ける対象者の観点では『自分にとって望ましいキャリアを実現できる』効果があります。対象者に多いミドルシニア層(40代・50代以上)の再就職は若年層以上に難しいですから、自分にキャリアコンサルタントという相談相手がいること自体が大きな安心感につながるのではないでしょうか。キャリアコンサルタントは年代や業界・業種を問わず多様なキャリアを持つ方々を支援しているので、漠然とした疑問や悩みのご相談はもちろん、強み・ご経験などを踏まえた多様な進路のご提案も可能です。
――マンパワーグループの再就職支援サービスならではの特長・強みを教えてください。
外資系企業での実績が豊富で英語による支援が受けられることや、ミドルシニア層の再就職に強いこと。加えて、秘匿性の高いプロジェクトを任された人事担当者の立場に立って親身に寄り添うコンサルタントが揃っていることも大きな強みです。
単なる求人マッチングではなく、ご自身が納得できる進路決定を後押しするキャリアカウンセリングをしていることも強く伝えたいです。一人ひとりの想いに真摯に向き合ってカウンセリングをした結果、利用者の方々は再就職のほか、独立開業や顧問契約、就農やボランティアなど多様なキャリアを歩まれています。
――担当者側と利用者側、それぞれが抱える不安を払拭してよりよい未来に進むためのサポートをしてくださるのは心強いですね。
そう言っていただけると嬉しいです。実際に、弊社で支援した企業様から継続的にご相談やご依頼をいただくことからも、私どもの姿勢や提供サービスの品質を高く評価していただいていると感じます。
――最後に、再就職支援サービスに関心を持つ人事担当者様へのメッセージをお願いします。
組織再編や雇用調整を任された担当者様の多くは、何らかのトラブルや問題が起こるのではといった不安を抱えていらっしゃると思います。皆さんの不安を払拭してプロジェクトを成功に導くためには何でも相談に乗りますし、惜しみなく情報を提供します。企業の業種や規模、プロジェクトの規模を問わず、ご相談いただく一人ひとりに誠意を持って対応しますので、どんな些細なことでも弊社にぜひご相談ください。