テレワーク実施における人事労務の注意点を「第1回健康面・メンタル面」「第2回コミュニケーションと業務バランス」の2回にわたってお伝えしてきました。
社員同士、お互いの姿が見えない働き方は、これまで感じなかったストレスを伴ったり、今までは気にしなかったことが悪い方に表面化したりします。
今回は、実際にテレワーク中の社員へのキャリアカウンセリングで語られた事例をご紹介します。(ご本人の了承を得て、一部状況を変更し掲載しています)
2020年春、これから企業の一員としてがんばろうという期待を胸にその日を楽しみにしていた新入社員たち。
しかし、入社式はほとんどの企業が延期・中止・短縮・オンラインでの実施等、いつもの式典とは違うスタイルとなりました。
都内の企業の新入社員Aさんは、入社のため3月に地方から引っ越してきました。しかし、出社はまだしておらず、現在も自宅待機中です。社会人のスタートをくじかれてしまって、「この状態がいつまで続くのだろう」という不安を抱えています。
オンラインでの研修は熱心に受講しましたが、「オンラインでの学びで本当に仕事に役立てることができるのだろうか?」「感染が収束してから、どんな日々になるのだろうか?」と不安な気持ちになるといいます。
さらに、転居してきたばかりで慣れない土地での一人暮らしです。オンラインで友人や同期と話すことはできていますが、いいようもない孤独を感じています。
「地方の実家に戻るにも戻れず、東京での一人暮らしが今は一番ツラいです」と心情を吐露してくれました。
オンラインでつないでいるときは元気にふるまえるものの、オンライン会議を退出すると急に部屋がシンと静まり返り、余計に孤独を感じるといいます。
新入社員と人事は、日中ずっとオンラインでつなげておくなど、同じ企業で働いている一体感の演出が必要です。またオンラインでの懇親会などで同期との横のつながりを強くする工夫をして欲しいと思います。
転職をしたばかりのBさん。入社は2月。新しい会社で新しい仕事をがんばろうと燃えていました。営業に配属され、上司の元で業務を学んでいる最中に会社からの指示でテレワークとなりました。
まだ組織の中のことも知らないことが多いため、仕事をするにも質問・確認したい事項があります。しかし、上司が今、どういう状況なのかわからないので気を遣ってしまいなかなか自分から呼びかけることができないといいます。
日々行う作業は与えられているものの、それが期待に応える内容になっているのか?果たしてどのように評価してもらっているのかわからないので、余計に不安になるそうです。
社歴の短い社員は、まだ主体的に仕事を動かすことができません。上司との報連相のタイミングを決める等のルールを設け、お互いの意識合わせを大事にする必要がありますね。
首都圏の人材系企業に勤めるCさん。
アイデア豊富で行動力もあり、新しいことに挑戦しながら結果を出す社員です。しかし、前例通りでリスクを取らない仕事の仕方をする上司とは、考え方の違いが明らかでした。
ただ、これまではなんとなくお互いの空気を察知しながら、タイミングをはかって話しかけたり、言葉を選んで伝えたり、第三者に仲立ちしてもらう等、ぶつからないような工夫ができたのですが、テレワークで状況が一変します。
オンライン会議では、相手の表情が鮮明ではないですし回線の状況によっては聞き取りにくいこともあり空気を読むのが難しいことと、時間が限られていることでコミュニケーションは直接的になります。
すると、これまで表面化を防いできたすれ違いが徐々に表れてきて、上司から厳しい発言を多く受けるようになったそうです。
Cさんはストレスで食欲が落ち、身体的な不調も現れてきています。このままでは仕事への影響が大きくなる可能性が高く、産業医面談へのリファーをお願いしました。
教育関連の事務職Dさんは、日頃から業務の体系化を進め属人的にならない管理を心がけていました。何が必要か、何をすべきか、自律的に仕事をしてきたことが、このテレワークにとても役立ったといいます。Dさんは自宅からでも業務に支障がないため、出勤しなくてもすんでいるようです。
ところが、業務によっては出勤が必要な職種もあります。そもそもテレワーク等想定外だった部署にとっては、交替出勤しているところも多く、職員の間で不公平を感じている人も増えてきました。
出勤すれば感染リスクが高まることもあり、
「休校中の子どもがいるから」
「高齢者と同居しているから」
「家が遠いから」
出勤できない理由をお互いに言い合う姿が見られます。
Dさんは、「職員がみんなイライラしているし、職場はとてもギスギスしている。自分がほとんど出勤しないことも陰口を言われているようで、収束後が怖い」と話しています。
非常事態の対応では、すべてが公平とはいかないでしょうが、職員の不平不満の要因をしっかり捉えてフォローする必要性があると思います。
これまで多くの日本の企業は一体感を大事にしてきました。みんなが同じ職場に集まって、お互いの顔を見ながら仕事をすることが、普通の風景でした。それが新型コロナウィルスの感染拡大をきっかけに、テレワーク、ローテーション勤務など働き方に大きな変化が起こりました。そろそろテレワーク中のストレスが社員に積み重なってきている時期です。
社員の気持ちはギスギスしていませんか?
そんな状況に対応するために、テレワーク中の社員への「オンラインキャリアカウンセリング」をぜひ活用いただきたいと思います。
傾聴・共感といったカウンセリング技術を持つキャリアコンサルタントが、社員と面談を行い、現在の生活や健康状況、仕事に対する不安、業務について思うこと等をヒアリングすることで、テレワーク中の社員の現状を把握できます。
人事や上司には遠慮してしまって弱音や本音を言えない社員も、客観的な立場のキャリアコンサルタントには心情を吐露できる可能性が高いのです。
感染収束後にまた同じようにチームワークを発揮できるように、テレワーク中の状況を把握して早い対処が大切だと思います。
このウィルスとの闘いは長期にわたるとの見解が示される中、テレワークは政府が提言する「新しい生活様式」の中核となっていくことが予想されます。テレワークが働き方のスタンダードとなれば、社員の労働安全衛生上の管理もそれに見合う手法が必要です。
しかし、現在人事も新しい働き方に対応するための業務が忙しい状況です。上司たちもテレワークの中、成果を出すために苦心している現状では、なかなか社員一人ひとりにまで目を配るのが大変です。社員も、テレワークだと今までのように気軽に「ちょっといいですか?」と上司へ声をかけることができないので、自分の現状を伝えられない可能性があります。これが長期化すると、健康やメンタル面の不調に気づくのが遅れてしまい、休職や離職につながりかねません。
そこで、テレワーク中の社員に現状の把握ができるキャリアコンサルタントによる「オンラインキャリア面談」を活用いただきたいと思います。
傾聴・共感といったカウンセリング技術を持つキャリアコンサルタントが、社員と面談を行い、現在の生活や健康状況、仕事に対する不安、業務について思うこと等をヒアリングすることで、テレワーク中の社員の現状把握ができます。
人事や上司には遠慮してしまって弱音や本音を言えない社員も、客観的な立場のキャリアコンサルタントには心情を吐露できる可能性が高いのです。
面談で、健康面の問題やメンタル不調を軽度の段階で把握することができれば、適切な専門家(産業医や産業保健師等)へつなぐこともできますし、対象の社員に、人事や上司がフォローを強化する等の対応が可能です。
何より、こういった面談機会があることで、社員も「会社は気にしてくれている」と実感できます。日々お互いが見えない中で業務を行うテレワークだからこそ、会社と社員の信頼関係づくりのために活用いただきたいと思います。
ライトマネジメントのキャリア開発は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。
組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40~50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。
出版業界で勤務後、大手Web 制作会社の事業部長として組織開発・事業推進・人材育成等のマネジメントを担う。2010 年にキャリアコンサルタント・研修講師として独立。企業内キャリア面談、キャリアデザイン研修やコーチング研修、コミュニケーション研修、等の実績がある。
豊富な面談実績から、話すことで気持ちを整理したり思考を深めるたりすることが、社員のモチベーションに影響していることを感じている。
企業の若手から中堅社員を対象に、キャリア系研修とキャリア面談を合わせて働くモチベーションをアップさせる企業内キャリアコンサルティングや、若手の定着支援、等に力を入れている。