新型コロナウィルス感染拡大は、企業のテレワーク導入を一気に加速させました。緊急事態宣言を受けて急遽導入したため、準備もままならないまま実施することになった企業も多いと思います。
今回初めてテレワークを導入した企業にとっては、業務の流れやマネジメントを模索しているのが現状ではないでしょうか。これまではほぼ毎日社員の姿を目で確認することができましたが、テレワークでは社員の姿が見えなくなります。社員の健康や心理面での変化も捉えにくくなってしまいます。変化や問題に気づくのが遅くなってしまうと、離職・休職につながりかねません。
テレワーク中の社員管理のために、まずはどんなことに注意し、何に対処していくのか?について、前回は「第1回社員の健康面・メンタル面」についてお伝えしました。
第2回目は、コミュニケーションと業務バランスについてお伝えします。
テレワークでは、主なコミュニケーションはオンラインが中心となります。
これまでのようなメールでのやりとりだけでは、日常のちょっとした情報交換が難しいので、新たにチャットツール等を導入している企業が多いようです。
これらのツールは基本的には言語情報のやりとりとなります。言語情報のやり取りが得意な人もいますが、今まで人の表情や声や態度などの非言語情報を大切にしていた人にとってはストレスに感じる場合があります。また、言葉は人によって解釈が違うことがあるなど、時にコミュニケーションのすれ違いが発生しやすいのです。
例えば何かの業務の指示について上司が、「その仕事はあとでやればいいよ」と文字で伝えたとします。上司としては部下を気遣って伝えたつもりが、その気遣いの言葉が入っていないので、部下は「上司の機嫌を損なったのではないか?」「もしかしたらやり方がまずかったのか?」とあれこれ気に病む可能性があります。
普段同じオフィスにいれば、言葉とともに表情や態度・姿勢・声の質や量といった非言語の情報が得られます。しかし言語情報だけだと相手の感情がわかりにくい。
「〇〇さんは今、××で大変だと思うから、その仕事はあとに回しても大丈夫だよ」と、きちんと感情も載せていくひと手間が大事になります。
一方で、非言語情報も得られるオンライン会議はどうでしょうか?
こちらも、回線の状況によって映像が滞ったり声が途切れたりする等、なかなかリアルで会っていたようには情報交換できないストレスがあるようですが、お互いの顔を確認して会話する安心感はあります。カメラ機能はonにして、顔を見て話すことをルール化している企業もあります。
オンライン会議では、いわゆる「声が大きい(よく話す人)」に参加者の視線が集中してしまいやすいということです。声を検知している人にフォーカスされる機能があり、よく話す人の画面ばかりを見ていることになります。声の小さい人、遠慮がちな人が置き去りにされがちですので、コミュニケーション量に差が出ます。リアルな会議とは違い、会話量にも注意したファシリテーションが必要です。
ある企業では、社員とのコミュニケーションをはかろうと「オンライン飲み会」を実施していると聞きました。久しぶりにゆっくり話せるし、終電を気にしなくていいと好評な反面、何度も誘われるのがツライ、出ないといけないようなプレッシャーを感じる、夜リラックスしている姿は見せたくない等、反応も様々です。オンライン飲み会の実施は良いと思いますが、参加を強制しない方等の配慮が必要ですね。
中には、日中に集まっている企業もあります。オンラインランチ会、3時のお茶会、終業前の雑談会等、業務時間中に社員同士がコミュニケーションできる機会を設けるのもおすすめです。
テレワークになって、最も差が出てくるのが業務量ではないかと私は思っています。その差は、これまでの働き方が能動的か受動的かによって明らかになってくるようです。
これまでも能動的に業務に取り組み、自分で自分の仕事をコントロールしながら働いてきた人は、やるべきことが見えているので着々と実行していきます。自然に業務量が増えていきます。
一方で受け身な仕事のスタイルだと、指示命令が飛んでこないと仕事になりません。そういう人はテレワークになると待ちの時間が長くなると想像できます。
ある大学の一つの部署の事例です。新年度に全面的な職員異動があり、新しく着任した職員は業務が理解できていない人ばかりになってしまいました。タイミング悪く今回の緊急措置によるテレワークが重なって、頼みの綱の派遣社員は全員が自宅待機となってしまい、従来からいる職員しか状況がわかる者がいないため、業務が集中し自宅でも深夜まで仕事をしているケースがありました。
テレワークでは、通勤の移動時間がないので身体の負担が軽減されるのはいいことですが、帰るという物理的な行動がない分、いつまでも延々と業務し続けることもできてしまうのです。オンオフがつけられずに、遅くまで業務を行っていないか、上司は業務のバランスを確認するよう、人事からアナウンスしていくことが重要だと考えます。
今回の感染拡大は、働き方改革に大きな影響を与えました。テレワークを検討していた、あるいは試験的に実施していた企業は、いっきに全社的な導入に進んだのではないでしょうか?自粛・休業要請の期間中ではありましたが、「思いのほか業務に支障がなかった」「テレワークで十分」という声がある一方で、大きな環境変化に戸惑いや不安を抱えている社員もいると思います。人事や管理職が配慮するポイントを2回にわたってお伝えしました。ぜひ参考にしていただければと思います。
【第3回】社員のテレワーク疲れ【キャリアカウンセリング事例】
このウィルスとの闘いは長期にわたるとの見解が示される中、テレワークは政府が提言する「新しい生活様式」の中核となっていくことが予想されます。テレワークが働き方のスタンダードとなれば、社員の労働安全衛生上の管理もそれに見合う手法が必要です。
しかし、現在人事も新しい働き方に対応するための業務が忙しい状況です。上司たちもテレワークの中、成果を出すために苦心している現状では、なかなか社員一人ひとりにまで目を配るのが大変です。社員も、テレワークだと今までのように気軽に「ちょっといいですか?」と上司へ声をかけることができないので、自分の現状を伝えられない可能性があります。これが長期化すると、健康やメンタル面の不調に気づくのが遅れてしまい、休職や離職につながりかねません。
そこで、テレワーク中の社員に現状の把握ができるキャリアコンサルタントによる「オンラインキャリア面談」を活用いただきたいと思います。
傾聴・共感といったカウンセリング技術を持つキャリアコンサルタントが、社員と面談を行い、現在の生活や健康状況、仕事に対する不安、業務について思うこと等をヒアリングすることで、テレワーク中の社員の現状把握ができます。
人事や上司には遠慮してしまって弱音や本音を言えない社員も、客観的な立場のキャリアコンサルタントには心情を吐露できる可能性が高いのです。
面談で、健康面の問題やメンタル不調を軽度の段階で把握することができれば、適切な専門家(産業医や産業保健師等)へつなぐこともできますし、対象の社員に、人事や上司がフォローを強化する等の対応が可能です。
何より、こういった面談機会があることで、社員も「会社は気にしてくれている」と実感できます。日々お互いが見えない中で業務を行うテレワークだからこそ、会社と社員の信頼関係づくりのために活用いただきたいと思います。
ライトマネジメントのキャリア開発は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。
組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40~50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。
出版業界で勤務後、大手Web 制作会社の事業部長として組織開発・事業推進・人材育成等のマネジメントを担う。2010 年にキャリアコンサルタント・研修講師として独立。企業内キャリア面談、キャリアデザイン研修やコーチング研修、コミュニケーション研修、等の実績がある。
豊富な面談実績から、話すことで気持ちを整理したり思考を深めるたりすることが、社員のモチベーションに影響していることを感じている。
企業の若手から中堅社員を対象に、キャリア系研修とキャリア面談を合わせて働くモチベーションをアップさせる企業内キャリアコンサルティングや、若手の定着支援、等に力を入れている。