新型コロナウィルス感染拡大は、企業のテレワーク導入を一気に加速させました。緊急事態宣言を受けて急遽導入したため、準備もままならないまま実施することになった企業も多いと思います。
今回初めてテレワークを導入した企業にとっては、業務の流れやマネジメントを模索しているのが現状ではないでしょうか。これまではほぼ毎日社員の姿を目で確認することができましたが、テレワークでは社員の姿が見えなくなります。社員の健康や心理面での変化も捉えにくくなってしまいます。変化や問題に気づくのが遅くなってしまうと、離職・休職につながりかねません。
テレワーク中の社員管理のために、まずはどんなことに注意し、何に対処していくのか?
について、「第1回社員の健康面・メンタル面」「第2回コミュニケーションと業務バランス」「キャリアカウンセリング事例」の3回のシリーズでお伝えしていきます。
第1回目は、テレワークだから配慮したい社員の健康面・メンタル面についてです。
テレワークといっても、完全在宅勤務、一時的な自宅待機、人数を制限したローテーション勤務等、企業によって導入スタイルはいろいろだと思います。
テレワークが始まったばかりの頃は、企業側も社員もテレワークに必死に対応しようとするのである意味お祭り騒ぎのようなテンションの高さがあったと思います。オンラインツールに慣れたり仕事への工夫をしたりして、意欲的に動いていた人も多いと思います。みんながハイな状況が一段落すると、そろそろテレワーク疲れが出始めます。
まず、心配なのは健康面です。
テレワーク前は、決まった時間に起き、着替えて支度をし、通勤電車に乗って時間通りオフィスに行く生活をしていました。平日は比較的規則正しい生活ができていたけど、オフィスに行かなくなったことで、睡眠のリズム、食生活が変化している社員も出てきていると思います。
また、自宅はオフィスと違って仕事するための設備が整っていません。照明もくつろぐためのものが中心で、長時間仕事をするには明るさが足りない可能性もあります。十分な明るさがないとPCに向かい仕事するのは目への負担が大きいです。
仕事するデスクや椅子が独立してあればいいのですが、低いテーブルで床に直に座って、ノートパソコンを打っていると姿勢が悪くなりがちです。肩こりや頭痛・腰痛といった身体的な不調が表れやすい状況です。
ただでさえ、自粛によって運動機会が激減しています。
環境変化や生活リズムの変化による体調不良が心配になります。
必要な社員には、少しでも姿勢を保てるように、PCの液晶画面が目の高さにするための台の設置や操作性を上げるための独立したキーボードの提供、デスク用の照明の購入等、環境を整えるための備品購入、もしくは経費負担を実施して、社員のテレワーク環境に気を配ってください。
さらに、規則正しい生活や食事の摂取、運動不足解消につながるような情報等、社員に対し積極的にアナウンスして自己管理を促していくことで、社員にも自己管理の意識を持ってもらえると思います。
今は、日本中が感染のリスクへの不安を抱えています。自粛の成果が新規感染者数に現れるため、夕方になると毎日テスト結果を確認するようなドキドキ感がありますよね。低くなれば少し安心し、また高くなれば小さな絶望感を感じています。こういう日々の気持ちのアップダウンは少しずつストレスとして積もっていきます。
自宅にいるといつもは観ないワイドショーに触れる機会も多くなり、連日の報道で不安感が増幅されている人もいるようです。
このような環境の中では、気持ちのコントロールが難しくなります。
また、テレワークでは以前に比べて会話量が減ってしまいます。オフィスに行けば好むと好まざるとに関わらず、同僚や上司と様々な会話が発生していました。しかし、テレワークでは限られた時間にオンライン上で限られた会話のみとなる傾向があります。
このため社員の中には孤独を強く感じる人も現れます。特にこれまでチームワークを大切にしていた組織ほど、孤立している感覚を持つかもしれません。
ある企業でテレワークをしている女性社員は、仕事には支障はないが日々のほんのちょっとした雑談が足りていないと話してくれました。何気ないちょっとした雑談が、リラックスやリフレッシュになり、私たちの仕事や生活を彩ってくれていたことに改めて気づかされますね。
不安感や孤独感を軽減するためにも、業務連絡や会議ではないオンラインミーティングを開催している企業もあります。それぞれ離れて仕事をしているけど、つながりが実感できるような工夫ができるといいと思います。
家族がいる社員は、自宅での仕事がもっと大変になっているかもしれえません。
こんな状況になると、イライラが爆発して家族関係が悪化してしまうこともあります。
それでも感染防止のため自宅にいなければならないので気分転換もできず、徐々にストレスが蓄積してしまうと、仕事にも影響が出てきます。
最近は、コロナ離婚、コロナDV等、新たな言葉も生まれています。決して他人事ではないと感じます。
家の中でのストレス回避のために、サテライトオフィスやホテルのテレワークプラン等に一時的に退避して冷静になるなどの対応が必要なこともあります。そういった用途にも使える補助があると、社員にとっても安心です。
今回は、急なテレワーク導入によって早急に対応しなければいけない社員の管理面での課題についてお伝えしてきました。特に社員の健康やメンタルといった労働安全衛生上の懸念点は、人事労務としては迅速な対応が求められます。ぜひご参考にしてください。
次回は、テレワーク中のオンラインコミュニケーションの特徴と業務バランスへの注意点についてお伝えします。
このウィルスとの闘いは長期にわたるとの見解が示される中、テレワークは政府が提言する「新しい生活様式」の中核となっていくことが予想されます。テレワークが働き方のスタンダードとなれば、社員の労働安全衛生上の管理もそれに見合う手法が必要です。
しかし、現在人事も新しい働き方に対応するための業務が忙しい状況です。上司たちもテレワークの中、成果を出すために苦心している現状では、なかなか社員一人ひとりにまで目を配るのが大変です。社員も、テレワークだと今までのように気軽に「ちょっといいですか?」と上司へ声をかけることができないので、自分の現状を伝えられない可能性があります。これが長期化すると、健康やメンタル面の不調に気づくのが遅れてしまい、休職や離職につながりかねません。
そこで、テレワーク中の社員に現状の把握ができるキャリアコンサルタントによる「オンラインキャリア面談」を活用いただきたいと思います。
傾聴・共感といったカウンセリング技術を持つキャリアコンサルタントが、社員と面談を行い、現在の生活や健康状況、仕事に対する不安、業務について思うこと等をヒアリングすることで、テレワーク中の社員の現状把握ができます。
人事や上司には遠慮してしまって弱音や本音を言えない社員も、客観的な立場のキャリアコンサルタントには心情を吐露できる可能性が高いのです。
面談で、健康面の問題やメンタル不調を軽度の段階で把握することができれば、適切な専門家(産業医や産業保健師等)へつなぐこともできますし、対象の社員に、人事や上司がフォローを強化する等の対応が可能です。
何より、こういった面談機会があることで、社員も「会社は気にしてくれている」と実感できます。日々お互いが見えない中で業務を行うテレワークだからこそ、会社と社員の信頼関係づくりのために活用いただきたいと思います。
ライトマネジメントのキャリア開発は、企業向け研修のなかでも圧倒的に高い採用実績を誇るソリューションです。
組織内で自分の役割や期待されていること、強みを理解した上で、そのキャリアプランを行動計画に落とし込み、自発的な向上心を磨きます。また、経営環境の変化などにより、期待通りのパフォーマンスを発揮できない方に向けた再活性化プログラムもご用意。20~30代の若年層のほか、40~50代の中高年層の意識改革・行動変容に幅広く貢献しています。
出版業界で勤務後、大手Web 制作会社の事業部長として組織開発・事業推進・人材育成等のマネジメントを担う。2010 年にキャリアコンサルタント・研修講師として独立。企業内キャリア面談、キャリアデザイン研修やコーチング研修、コミュニケーション研修、等の実績がある。
豊富な面談実績から、話すことで気持ちを整理したり思考を深めるたりすることが、社員のモチベーションに影響していることを感じている。
企業の若手から中堅社員を対象に、キャリア系研修とキャリア面談を合わせて働くモチベーションをアップさせる企業内キャリアコンサルティングや、若手の定着支援、等に力を入れている。