先行きが読めない経済・社会情勢のなか、事業の建て直しや人事編成に苦心している方も多いのではないでしょうか。やむなく社員のリストラや早期退職を募ることが決まった際、社員を支援する取り組みのひとつに「再就職支援」があります。なんとなく言葉だけは聞いたことがあっても、正確な意味は知らないという方もいるでしょう。
そこで今回は、「再就職支援とはどんなサービスなのか?」「再就職支援の目的・メリットとは?」「再就職支援サービスの会社を選ぶときのポイントとは?」など、知っておくべき情報を分かりやすくお伝えします。
再就職支援サービスの具体的な内容や事例に関してはこちらの資料でもご説明しています。こちらもご一読ください。
資料ダウンロード「再就職支援サービスのご案内」
退職者を支援するサービスのひとつとして、広く利用されている「再就職支援(アウトプレースメント)」。まずは「その内容や目的」、「サービスの提供会社」、「日本で広まった背景」など、基本的な部分について紹介します。
再就職支援とは、不況や災害などで企業がやむをえず人員削減を行うとき、人材会社(再就職支援会社)が退職者の"再就職"を支援するサービスです。この際、雇用していた企業が人材会社と契約し、人材会社が企業に代わって退職者の新しい就職先を見つけます。サービスの主な内容としては、退職者のカウンセリングや自己分析のサポート、求人の紹介や模擬面接・履歴書添削、また人員整理を行う企業へのアドバイスなどが一般的です。
再就職支援がその他の転職支援サービスと異なるのは、お金を払うのが「人材を採用する側の企業」ではなく、「人員削減を行う側の企業」であること。リストラを決めた会社が「社会的な責任として、せめて社員に納得して退職してもらいたい」と考え、"最後の福利厚生"として導入しているケースも多いです。再就職支援を導入する費用としては、退職者1人当たり50万円~100万円と言われています(人材会社によって値段は異なります)。
企業が再就職支援を導入する目的は、大きくわけて2つあります。
1つは、退職者の経済的・精神的なケアのためです。会社の都合でいきなり退職が決まってしまうと、今までの生活基盤が崩れ、経済的に不安定になります。また、退職という出来事から自信をなくし、精神的にダメージを負ってしまう人も少なくありません。そうした状況をなるべく早期に改善するため、再就職の支援を行います。
またもう1つは、企業としてのリスク回避のためです。会社が一方的にリストラを決行するとなると、当然社員からの反発が起こります。最悪の場合、訴訟沙汰になってしまうケースもあるかもしれません。だからこそ会社が「退職者へのケア」という社会的な責任を果たすことで、社員との軋轢を未然に防ぐという目的もあるのです。
経営者や人事には常時適切な人員体制を構築することが求められ、様々な雇用調整施策を検討する必要があります。人事施策に関しては、法的な観点はもちろん、従業員の心理や不利益に対して十分に配慮した慎重な検討が求められます。考え方等を解説したセミナーもご覧ください。
動画セミナー 雇用調整の考え方と進め方
一般的には、人材派遣・人材紹介などの事業を行う会社が「再就職支援」の事業部をつくり、サービスを行っているケースが多いです。「再就職支援」のサービス自体がアメリカで生まれたという背景もあって、外資系の会社も目立ちます。再就職支援の会社では、「営業」が企業へのアドバイスや求人の開拓を担当。「キャリアコンサルタント」が、退職者へのカウンセリング・求人紹介・再就職後のフォローなどを担当することが一般的です。
対象となるのは、原則として「会社都合」での退職が決まった社員です。人員削減は経費を減らすという目的もあるため、多くの企業では賃金の高いシニア層が対象になります。そのため、再就職支援の利用者も50代が過半数です。シニア層はたとえ長年培ったスキル・知識があっても、年齢がネックとなって転職が難航することもあります。だからこそ、この「再就職支援」が心強いサポートになることも多いです。
再就職支援の起源は、1962年のアメリカにさかのぼります。弁護士のジェームス・E・チャレンジャー氏は、アメリカで役員や管理職が解雇された後、なかなか再就職が決まらないのを見かねていました。そこで「リストラされた社員が再び職に就けるよう、民間会社が支援すべきである」と考え、再就職支援の会社を設立しました。再就職支援はここから生まれ、終身雇用の文化がなくリストラの多いアメリカを中心に、広まっていったのです。
日本に再就職支援のサービスが初めて到来したのは、1982年だと言われています。バブル崩壊などをきっかけに、1995年頃から徐々にサービスを手がける企業が増え始め、今は日本でも広く浸透する事業となりました。ちなみに日本の再就職支援は、アメリカのそれと内容がやや違います。アメリカは退職者へカウンセリング・求人の情報提供は行っても、実際に再就職先を探し出すことはしません。日本は再就職支援会社が求人の開拓、再就職後のフォローまで行ってくれるため、日本のほうがかなり手厚いサービスであるといってよいでしょう。ライトマネジメントの再就職支援サービスについてはこちらをご覧ください。
再就職支援は、雇用元となる企業で人員削減が決まり、退職者が「再就職支援を利用したい」と意思表示して初めて導入がスタートします。ただ「人員削減」とひと言でいっても、そこにはさまざまな理由があるものです。そこでこの章では、人員削減を行うことになった「背景」を、従来型のリストラ・黒字リストラ2つで考えます。
災害や疫病による打撃、ITテクノロジーの進化、顧客ニーズの複雑化など、社会経済は日々めまぐるしく変動しています。先行きが不透明な時代だからこそ、事業の縮小や拠点の撤退を余儀なくされる企業も少なくありません。こうした経済状況の悪化による人員削減(従来型のリストラ)で、再就職支援を利用する企業も多いです。
ちなみに、2023年に希望退職・早期退職を募集した上場企業は41社(東京商工リサーチ調べ)。これはコロナ禍前の2019年と比べて増加しており、この現象は、新規事業への進出など資金に余裕のある企業と、業績不振から脱出できない企業との間の二極化が拡大していることを示していると考えられています。
※参考: 2023年上場企業「早期・希望退職者」実施状況 |株式会社東京商工リサーチ
人員削減の理由が、経営悪化だけとは限りません。たとえ業績が堅調でも、リストラを行うケースもあります。これが「黒字リストラ」です。黒字リストラを行うことによって、企業は年功序列で高くなったシニア層の賃金を、若い社員へ再配分するという狙いがあります。「年功序列から実力主義への切り替え」という意味合いで、黒字リストラを実施する企業も多いのです。
ちなみに2023年に早期・希望退職を実施した上場企業のうち、約半数は経営状態が「黒字」でした(東京商工リサーチ)。物価高や円安に備えた構造改革に加え、コロナ禍で変化した市場ニーズに対応した実施が目立ち、黒字リストラは今後も進んでいくとの見込みです。
黒字企業による人員調整の増加傾向に加え、コロナ禍以降の景気変動も影響し、従来型の雇用調整も依然として見られます。その結果、「退職者へのケア」として、再就職支援のニーズがますます高まっていくでしょう。
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では、再就職支援を導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。再就職支援の恩恵を受けるのは、「リストラする側の企業」「退職者」「人材を受け入れる側の企業」です。それぞれのメリットを見てみましょう。
◆社会的な責任を果たせること
会社都合のリストラは、退職者に大きな精神的・経済的ショックを与えかねません。再就職支援の導入は、その痛手をすこしでも和らげるメリットがあります。再就職支援によって早期に新たな就職先が見つかり、生活基盤を取り戻せば、退職者もまた前向きに人生をスタートできるからです。そして、再就職支援によって「社会的な責任」を果たすことで、企業は社員との軋轢・社会的なリスクも軽減できます。
◆相談に乗ってもらえること
いくら人事として長年経験を積んでいるとはいえ、人員削減の対応に慣れている担当者は少ないでしょう。その際、相談に乗ってくれるケースもあります。「法令を遵守しているか」「社員とどう信頼関係を築けばよいか」「組織のモラルを維持するには」など、人材業界のプロに相談することで、担当者の不安も和らぐでしょう。
◆手厚い転職支援を受けられること
再就職支援では、カウンセリングから適性判断、履歴書の添削、面接練習、求人の紹介と幅広いサービスを提供します。退職者にとっては、早期に新しい就職先を見つけるための心強い支えになるでしょう。特に求人の紹介に関しては、人材会社ならではの幅広いネットワークを活かして、適性の高い求人を開拓してくれるケースも多いです。再就職先が決まった後も定期的に面談してくれる場合もあり、安心して新しいスタートを切れます。
◆精神的な不安を和らげられること
いきなりリストラの対象になったら、少なからず精神的にダメージを受けるものです。しかも、生活が不安定ななか、一人で次の就職先を探さなければなりません。その不安を和らげるために、再就職支援は有効です。人材会社のキャリアコンサルタントが"パートナー"として相談に乗り、やりたい仕事を考えるところからサポートしてくれます。特に精神的に弱っているときは誰かの支えがほしいものなので、他者からの助言は頼もしいでしょう。
◆高度なスキルを持つ人材を採用できる可能性があること
人員削減の対象となるのは、中高年層が大半を占めます。こうしたシニア層は社会人歴が長いぶん、高度な専門スキル・豊富な知識・社会人としてのマナーを備えていることが多いです。部署の責任者を経験し、マネジメントスキルを持つ人材もいます。「本来なら手放したくない人材を、経営悪化のためやむをえず......」という会社も多いのです。労力をかけずにこうした人材を採用できるのは、受け入れ先企業のメリットといえるでしょう。
◆採用に「手数料」がかからないこと
一般的な転職サービス(転職サイト・人材紹介など)は、人材を採用する側が費用を払います。ただ、再就職支援の場合、費用を払うのは雇用していた側の企業です。そのため、人材の受け入れ側は手数料なしで新しい人材を採用できます。本来であれば必要だったであろう「採用コスト」を削減できる、というメリットもあるのです。
いざ再就職支援の導入が決まったら、どのようなプロセスで退職者の支援が行われるのでしょうか。ここでは、退職者に対する「カウンセリング内容」「フォローの中身・幅」などを、具体的に紹介していきます。
再就職支援を利用する方向けのご案内資料では、どのようなサポートが受けられるか詳しく解説しています。
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まずはキャリアコンサルタントと顔合わせをし、自己分析・適性判断を行います。というのも、自分のなかで「向いていること」「やりたいこと」がハッキリしないと、仕事選びもスムーズに進まないからです。具体的には、これまでのキャリアを振り返り、スキル・知識を棚卸しします。そして、自分の希望する仕事・理想の生き方などを考え、書き出すことが多いです。また今必要な「資格」を考え、セミナーの受講を検討することもあります。
自分の適性が分かったら、次は再就職先を決めるうえでの目標を立てます。具体的には、「転職先に選びたい業界・会社」「再就職までのスケジュール」を決めることが一般的です。ちなみにここから実際の求人を見て、再就職先の検討に入ります。もしも目標とする業界で就職するために「資格・知識」が必要であれば、人材会社のセミナーを受けることも可能です。
キャリアコンサルタントから多様な求人を紹介してもらいながら、再就職先を決めます。仮に退職者の希望する求人がなかった場合、新たに求人を開拓してくれる人材会社もあります。この際、人材会社は提携している人材紹介会社・転職サイトの運営会社などと協力しながら、求人を見つけ出してくれます。なかには、退職者の希望する会社に「推薦状(ダイレクトアプローチ)」を送って、直接面接につなげてくれる人材会社もあるようです。
応募先が決まれば、内定を得るためのサポートが始まります。具体的には、模擬面接で受け答えを覚えたり、履歴書を添削してもらったり。魅力をうまくアピールできるよう、準備を進めます。ほとんどの人材会社は採用面接の豊富なノウハウを持っているため、アドバイスもかなり実践的です。例えば、面接時のマナーや自己アピールの方法だけでなく、給与・休日休暇といった条件面の交渉スキルまで伝授してくれる会社もあります。
面接に合格して再就職先が決まっても、フォローは終わりではありません。転職者は「職場に馴染めるだろうか」「仕事に対応できるだろうか」と、新たな不安を抱えるケースもあるからです。そこでもキャリアコンサルタントが、入社の準備を支えてくれます。具体的には、面談をしながら人間関係の構築方法についてアドバイスをしたり、今後のキャリアを一緒に考えたり。手厚いサポートを通じて、転職者は安心して新しい仕事を始められます。
再就職支援と似た人材サービスに、「転職サイト」や「人材紹介」があります。ここでは、各サービスと再就職支援との違いを、「転職者のメリット」「マネタイズの仕組み」という観点からご紹介します。
転職サイトは「人材を採用したい企業」が費用を払い、サイト上に求人を掲載します。転職サイトには幅広い業界・職種の求人が掲載されており、豊富な選択肢のなかから就職先を見つけられるのが魅力です。もちろん、掲載料を払うのは採用する側の企業なので、利用者が無料でサービスを利用できるのもメリットと言えるでしょう。
ただ、再就職支援との大きな違いは、基本的に転職活動をすべて"一人"で進めなければいけないところです。履歴書も自分で考え、面接も自分で練習します。自分に合う求人がどれなのか、路頭に迷うこともあるかもしれません(※最近では、書類添削・面接対策を行ってくれる転職サイトもあります)。その点、再就職支援はキャリアコンサルタントが転職者にサポートしてくれるので、心強く感じられるでしょう。
人材紹介は、「人材紹介会社」が最適な人材を見つけ出し、「人材を採用したい企業」に紹介します。採用が決まったら、採用する側の企業が人材紹介会社に報酬を支払うというビジネスモデルです。転職者に対しては、人材紹介会社の「キャリアカウンセラー」が求人の紹介・履歴書の添削・面接練習などを行ない、内定までサポートします。転職者の目線でいえば、手厚いフォローを受けながら内定まで進められるので、心強いサービスです。
「転職者が一人で再就職を進めなくてよい」という点は、再就職支援も同じです。ただ、人材紹介のサービスに登録するのは、あくまで転職者自身です。数ある人材紹介会社のなかから、自分に合う会社を自分で見つけて登録する必要があるでしょう。その点、再就職支援は退職が決まった際に同意すれば、自動的に支援が始まります。
もうひとつの違いは、「報酬体系(マネタイズの仕組み)」です。人材紹介は「採用する企業」が、人材紹介会社に報酬を支払います。その金額は、人材が得るであろう「年収の○○%」という基準で決まることが一般的です。再就職支援の場合、「雇用していた企業」が報酬を支払います。
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再就職支援の需要は伸びており、サービスを提供する企業も少なくありません。企業の目線から見て、どの再就職支援会社を選べばよいのでしょうか。ここでは、再就職支援の会社を選ぶときに確認しておきたい選択基準を紹介します。
記事の冒頭ですこし触れましたが、リストラの対象となるのは賃金が高い人材なので、再就職支援を利用するのも「中高年層」が中心です。一般的に中高年層は、年齢がネックで転職が難航するケースが多くあります。
だからこそ、「中高年層(主に40代・50代・60代)」の再就職に強いかどうかを、まず確かめるとよいでしょう。再就職支援会社のホームページには、どの年代の再就職が多いかが書いてある場合が多いです。中高年層の就職実績が多いほど、それだけ中高年層の支援に慣れているということなので、安心度も高いといえます。
転職者が「この業界・企業に就職したい」と希望を出したとき、それに添えるような求人を開拓してくれるかどうかも、大事な基準になります。これによって、いかに親身に転職者をサポートしてくれるかが分かるからです。
ちなみに「求人開拓力」の参考になるのは、ネットワークの広さです。求人を開拓する際、多くの再就職支援会社は外部の人材紹介会社・転職サイトの運営会社などに協力を求めます。こうした各種人材ビジネスの会社をグループ内に持っていたり、提携していたりする会社は強いです。また、営業拠点の数も求人開拓力につながります。全国に拠点がある会社は、それだけ求人のネットワークも広いということなので、信頼度は高いでしょう。
再就職支援の"ゴール"をどこに定めるかで、再就職支援会社のスタンスがわかります。
ひとつの基準は、「再就職先の決定」で終わる会社より、再就職先が決まった後の「定着」まで支援してくれる会社のほうが安心ということです。というのも、せっかく再就職先が決まっても、職場に合わず早期離職してしまったのでは意味がありません。そのため、再就職支援会社を選ぶ際は、再就職後の「定着率」にも着目すべきです。定着率の高さは、「転職者の適性をしっかり考えて、再就職先を選んでくれる会社」という信頼の証でもあります。再就職の"後"も安心できるサービスのほうが、退職者にもメリットを感じてもらいやすいでしょう。
《一緒に読みたい記事》「再就職支援会社」ってどんな会社?会社選びのポイントをご紹介!
このように再就職支援は、苦楽をともにしてきた大切な社員の"新しい出発"を支えるためのサービスです。
新しい組織づくり・社員へのケアなどに迷ったときは、外部のプロフェッショナルに相談するのもよいでしょう。
現在の日本型再就職支援サービスを構築したのはライトマネジメントです。
多様な業界、職種、年齢のお客様にお選びいただき、国内での支援者数約80,000人、世界では支援者数400万人を突破。世界トップクラスの再就職支援会社です。経験豊富なコンサルタントが専門的なご提案をします。
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