社員の自律的な学びを促すため、eラーニングの導入を検討している企業も多いと思います。ただ、運用方法や研修テーマによっては、期待した効果が得られないケースも珍しくありません。そこで今回は、eラーニングの効果を高めるためのポイントを紹介します。また本稿では、「eラーニングを行ううえで必要なもの」や「eラーニングのメリット・デメリット」といった基礎から分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそもeラーニングとは、どのような形式の研修なのでしょうか。
ここでは、学べるカリキュラムや内容も含めて解説します。
eラーニングとは、インターネットを活用した学習形態のことです。具体的には、PCやタブレットなどからLMS(学習管理システム:Learning Management System)と呼ばれるプラットフォームや自社サーバーなどにログインし、選択した研修を受講します。インターネットさえあればいつでも・どこでも受講でき、スキマ時間を有効に活用できるのがeラーニングのメリットです。そのため、社員に自己研さんを促し、自律性を育むという目的でeラーニングを導入する企業も少なくありません。
近年はブロードバンド化によって一度に大量のデータを通信できるようになり、eラーニングの教材コンテンツも進化を続けています。例えば、以前はテキストやスライドなどの静止画コンテンツが中心でしたが、今では講義の映像を動画化したコンテンツも受講可能です。また、理解度をチェックするためのクイズ・テストを画面上で実施できたり、リアルタイムに配信されている「ライブ研修」を受講できたりと学習形式も多様化しています。
eラーニングは、サービス提供会社によって多種多様な教材コンテンツが配信されています。
例えば、「Word・Excel・PowerPoint」「ビジネスライティング」「接遇マナー」などのビジネススキル系、「Webデザイン」「財務諸表の読み方」「商談テクニック」などの専門スキル系、「ストレスマネジメント」「経営戦略」「フィードバック・コーチング」などの管理職向け講座まで、さまざまな内容を受講可能です。そのため、新入社員の基礎力を養ったり、職種・階層別に専門スキルを高めたりと幅広い目的で活用できるのが特徴と言えます。
eラーニングの具体的なカリキュラムについては「社員教育の効果的な手法・カリキュラム例とは?【オンライン研修も解説】」でも紹介しております。
自社でeラーニングのコンテンツ開発や受講生の管理、研修の管理などを行う場合には、「LMS」「教材コンテンツ」「学習用デバイス(PCやタブレットなど)」という3つのツールを用意することが必須です(※)。ここでは、それぞれの意味や必要性について簡潔に解説します。
※eラーニングの受講のみを行う場合には、LMSを自社で用意しなくても、研修サービス会社のWebシステムを利用することも可能です。
LMSとは、教材コンテンツを配信・管理するためのプラットフォームのことです。LMSの種類によっては、企業側が学習者ごとの成績・進捗を管理したり、学習者の特性に合わせて最適な教材コンテンツを自動で配信したりという機能もあります。またLMSはID・パスワードによるアクセス制限をかけられるため、関係のない人に教材コンテンツを利用される心配もなく、セキュリティの面でも安心です。
学習者に向けて配信するための、具体的な教材コンテンツも必要になります。研修サービス会社によって教材コンテンツの内容や種類は異なり、基本的なビジネススキルからキャリアデザインの考え方、職種・階層別の知識までさまざまです。そのため、自社の現状や課題に合わせて、最適なコンテンツを選択することが重要でしょう。
社員にeラーニングを受講させるためのデバイスも必要です。社用PCを社員へ支給している場合は、それをeラーニング用のデバイスとして使用できます。近年はLMSが進化し、PCだけでなくタブレットやスマートフォンで受講できるものも珍しくありません。そのため、LMSの対応形式に合わせたデバイスを用意しましょう。
eラーニングを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まずは「学習者側(社員側)」のメリットについて解説します。
eラーニングの特徴は、インターネット環境さえ整っていればいつでもどこでも受講が可能な点です。そのため、空いた時間を活用してマイペースに学習を進められます。また、特に現在は新型コロナウイルスの影響からテレワークが推進されている状況です。eラーニングであれば、自宅でも無理なくスキルアップを図れるでしょう。
自主的に新しい知識を身につけようとした場合、学びになる情報をインターネットで検索することもあるかもしれません。ただ、インターネットの情報は真偽の判断が難しく、信頼度が高いとは言えないこともあるでしょう。その点、eラーニングは専門家の監修のもとで制作されている教材も多く、質の高い学びを得やすくなります。
eラーニングの利点は、一度配信された教材に関しては何度でも受講が可能なことです。そのため、より知識を深めたい場合には二度・三度とコンテンツを見直し、復習することもできます。また、集合研修と違って好きなところで映像を止める・スキップすることもできるため、分からなかった点を迅速に確認することも可能です。
eラーニングの恩恵を受けられるのは、決して学習者側だけではありません。
ここでは、企業側のメリットについて解説します。
eラーニングの特徴は、LMSを介して同一の教材コンテンツを大人数に配信できることです。仮に従業員数が1万人でも、全員に同じ内容のコンテンツを視聴させることができます。集合研修と比べ、講師の技量によって参加者の学習度に大きく差が出る心配もありません。そのため、同じ水準の学びをより多くの社員に提供できます。
現在は働き方が多様化しており、時短勤務やフレックスタイム制などさまざまな勤務制度で働いている社員もいるかもしれません。こうした社員をセミナールームへ一堂に集めて研修を受けさせるのは、至難の業です。その点、eラーニングであれば社員に好きな時間に自己学習させられるため、働き方にかかわらず能力開発を図れます。
eラーニングは初期費用こそかかりますが、導入後の運用費は抑えられます。例えば、集合研修のように会議室のレンタル費や講師の派遣料、教材の印刷代、社員の交通費・宿泊費はかかりません。また、eラーニングは一度導入すれば基本的に何度視聴しても追加料金がかからないため、コストパフォーマンスが高い点も特徴です。
eラーニングには、ほかの研修形態と比べていくつかのデメリットがあるのも事実です。
ここでは、学習者側から見たデメリットについて解説します。
eラーニングの受講を必須にしない場合、社員の自主性に委ねられてしまうことになります。社員によっては「今は業務が忙しくて時間がないから」「勉強するのは面倒くさいから」という理由で、ついあと回しにしてしまう可能性もあるでしょう。
eラーニングは、基本的に周囲とやり取りせずひとりで受講します。そのため、「同じ研修で他の参加者がどう考えているのか知りたい」「ディスカッションで他の人と意見交換をしたい」というケースには適していません。
eラーニングは基本的にスライドや映像を視聴するため、講師から実践的に手取り足取り教えてもらえるわけではありません。そのため、練習しながら"実技"を体得しなければいけない分野には向いていないでしょう。
企業側にとっても、eラーニングにデメリットがないわけではありません。
ここでは、企業側におけるデメリットについて解説します。
eラーニングを導入する際は、LMS・教材コンテンツ・社員用のデバイスを手配する必要があります。場合によっては、社内のインターネット環境を見直す必要もあるかもしれません。また、慣れていない場合はどの教材を選べばよいか迷うケースもあるでしょう。このように導入時の費用や手間がかかる点は、ひとつの課題と言えます。
eラーニングはあくまで自己研さんを促す手法なので、社員に学びを強制しにくいという特徴もあります。社員によってモチベーションや忙しさに差があるため、受講の進捗にバラつきが出てしまう可能性もあるでしょう。
集合研修の場合は、同じ階層・年代の社員が一堂に会すため、社員間のコミュニケーションを活性化できるという副次的な効果があります。一方、eラーニングは個人での受講になるので、ディスカッションやロール・プレイングなどの実施が困難です。そのため、社員同士の交流を深めたい場合は別の手法を検討する必要があります。
eラーニングを企業研修へ導入する際には、どのような点を意識すればよいのでしょうか。
ここでは、eラーニングの効果を高めるためのポイントについて解説します。
eラーニングに対する社員のモチベーションが上がらない原因として、教材テーマに必要性が感じられないことが挙げられます。そのため、教材コンテンツを選ぶ際には、現場に対して入念にヒアリングを行い、社員にとって重要度の高い内容を取り入れることが大切です。近年であれば、「コンプライアンスに対して理解を深めたい」「変化の時代に対応できるキャリア形成の方法を知りたい」「ITリテラシーを身につけたい」といった声がよく聞かれます。こうした現場の意見を教材に反映することで、より社員の学習意欲を高めることができるでしょう。
複数の育成手法をかけ合わせ、相乗効果を図ることを「ブレンディッド・ラーニング」といいます。例えば、eラーニングには「実技のスキルを教えにくい」というデメリットがあるのも事実です。そこで、あらかじめeラーニングで社員に体系的な知識を習得させてから別途OJTを行えば、よりスムーズにスキルの習得を図れます。また、集合研修で座学やワークショップを行ったうえで、eラーニングを復習・テストに活用することも可能です。育成手法の良い点を組み合わせ、欠点を補完し合うことで、社員により効果的な学びを提供できるでしょう。
5~10分という短時間で効率良く学習することを、「マイクロラーニング」といいます。eラーニングでもマイクロラーニングの手法を取り入れることで、多忙な社員にも無理なく受講を促すことが可能です。例えば、60分の動画教材を、1単元ごとに3~5分で区切っておくという方法があります。各単元の時間が短ければ、社員も電車での移動中や休憩時間など"スキマ時間"で無理なく視聴できるでしょう。また、動画の時間が短く区切ってあれば何度も大事な個所を視聴し直しやすくなるため、反復学習によってより深い学びにつなげられます。
社員によっては「何となく動画を視聴しているだけ」で終わってしまい、理解が浅くなるケースもあります。そのため、eラーニングの学習効果を高めるには、事前課題やワークを取り入れることも大切です。例えば、eラーニングの受講前に事前課題に取り組ませることで、講義内容への関心をより高めることができます。また、動画の最中にテストやワークの時間を組み込むことで、受講者の集中力を維持させることも可能です。eラーニングの教材を選ぶ際には、受講者に作業をさせる「アウトプット」の手法も合わせて活用するようにしましょう。
eラーニングを導入する際は、社員の階層や役職ごとに「目指すべき人物像」を明らかにしておくことが大切です。各社員に必要とされるスキル・マインドを把握しておくことで、人事や上司が最適なプログラムを選びやすくなり、より効果的な学習につなげられます。また、上司が1on1ミーティングを行う際にも、部下に対して最適な内容のeラーニングを勧めやすくなるでしょう。結果として、全社的に受講率の向上も期待できます。
そもそも自己研さんに対して消極的な社風の場合、eラーニングを導入してもなかなか受講が進まない可能性があります。そのため、eラーニングを導入する際には、あらかじめ社内にキャリア自律の文化を醸成しておくことも大切です。例えば、キャリアデザイン研修を実施して、社員一人ひとりにキャリアの実現に向けた学習計画・アクションプランを立ててもらうのもひとつの方法でしょう。「理想のキャリアをかなえるには、主体的に学んでいく姿勢が必要」という意識が社員に根付いていれば、eラーニングへの積極性もより高めることが可能です。キャリアデザイン研修の企画については「キャリアデザイン研修の企画方法とは?プログラムの作り方や具体例も紹介!」をあわせてご一読ください。
eラーニングは、"教材の質"が社員のモチベーションや育成効果に大きく影響します。そのため、まずは人材育成のプロである、研修サービスの専門会社に相談することもひとつの方法です。効果的なメソッドが詰め込まれた教材コンテンツを導入することで、よりeラーニングの成果を高めることができるでしょう。
ライトマネジメント事業部では、人材育成・組織開発のパイオニアとして長年培った経験を活かし、独自のeラーニングサービスを提供しています。教材は専門家の監修のもとで作成され、「若手人材向けキャリア自律」や「プロティアン・キャリア」をはじめ重要性の高いテーマを取りそろえているのが特徴です。また、単に映像授業を受講させるだけでなく、事前課題やワークを組み合わせて社員に深い内省を促せるため、学習成果の向上も図れます。さらに、マイクロラーニングで細かく単元が区切られており、社員にスキマ時間で無理なく受講を促進することが可能です。効果的なeラーニングの導入をご検討の際には、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。