IT技術の普及とニューノーマル時代の到来により、業務のリモート化を叫ぶ動きが世界中で進んでいるが、我々の日本社会では、若干ハードルがある。それは、コミュニケーションスタイルに「ハイコンテクスト文化・ローコンテクスト文化」という分類があり、日本は世界でも類を見ないハイコンテクスト文化だからである(E・T・ホールの研究、1970年代)。一言で言えば意思疎通の際、我々は「言語依存度が低く、コンテクスト(お互いの共通の知識・体験・経験値などの基盤)による依存度が極めて高い」ので(だから我々はハイコンテクスト)、物理的に皆が同じ空間を共有したり、行動を共にしていないテレワークだと、非言語の意思疎通をする上で「極めて不安・不快を感じる」からである。
阿吽の呼吸、以心伝心、1を聞いて10を知る、まずは顔を見て、間合いを取る、空気を読む、互いの年齢差・性差・出身地・出身校・趣味・背格好・家族構成・声質などなど気になる事は全てこのコンテクストに該当し、これらが自分と相手との間に確立・維持されて初めて一緒に快適に活動ができるのである。
この対極にあるのが、ローコンテクスト型の文化の代名詞である米国。意思疎通での言語依存度が極めて高い。伝えたい事をストレートに表現し、何事も「私が」「あなたが」など1から10まで伝え、自分の思い・感情や自分が意味したい事をそのまま言葉で全て表さないと成り立たないのである。意思疎通に全くひるみがない。つまり、言語情報だけの意思疎通のみで、共に仕事が出来るのが当たり前の社会なのである。
こんな話がある。米国系企業の弊社では、2006年から米国での再就職支援サービスに「Right Choice(ライトチョイス)」という名のサービスを開始した。対面型の支援にするか、ネット環境を使ってリモート型での再就職支援かを利用者が選ぶのである。これが米国や豪州では、当初から爆発的にヒットし、こぞってリモート型を選ぶ利用者が増えた。今ではこのライトチョイスが支援の基本になっている。
そもそも米国は国土が広く、人口密度が日本の50倍もあり、通勤は車で1時間以上などはざら。また、LAやNYなどの200万人以上の大都市の人口が米国全土の5%程度で、むしろ中小の都市で生活し働いている社員がほとんどなのである。そうなると、再就職支援会社のオフィスがある都市部へは、「荒野の大地を何時間も運転する」必要があり大変なため、リモートだとさらに助かる。
これが日本では全く上手くいかなかった。なぜなら、「電話やメール、Webでは伝わりにくい。表情やその場の空気・雰囲気といった非言語の意思疎通をコンサルタントがちゃんと顔を合わせて汲み取り支援してほしい」となり全く評価されなかったからだ。
テレワークが普及した日本で今、乗り越える必要のある壁は、この意思疎通をローコンテクスト化する事とそれに慣れる事。つまり、言語依存度を高めた意思疎通をしっかりと取る事が社員管理時に重要になっている。実はこの考え方は弊社の「フィードバック研修」や「評価者研修」、「リーダーシップ研修」等では、常に重要視する点であり、普段から人材管理・育成の向上に必須の考え方・スキルと捉えている。
再就職支援サービスの導入をご検討でしたら是非ともご相談ください。ライトマネジメントは公開情報も限られるこの取り組みにおいて多数の課題解決の実績があります。
貴社の課題に合わせた活用方法や導入手順など、 パーソナライズしたご提案をします。
2004年から株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ)にて勤務。日英のバイリンガルであることから、外資系企業向けの組織再編を含む組織開発のコンサルティングに関わり、様々な業界・組織規模の外資系企業約900社にて、1,900ほどのプロジェクトのリードを行っている。このような経験から得られた各社マネジメント層の意識やスキル・レベルのバラツキ感を目の当たりにしてきた結果、管理職層へのトレーニングやワークショップも顧客企業のニーズに合わせて日英両方の言語で実施している。また、エグゼクティブに対してはエグゼクティブ・コーチングを多数実施している。
これまでのキャリアの中では、米国のデジタル放送会社での受信機開発プロジェクトマネージャー、日系アパレル商社の海外工場(米国、インド、香港)の生産管理、企業研修会社でのコンテンツ開発・ファシリテーターを経験している。