最近、ローパフォーマー(期待役割と成果にギャップが生じている人)への対応について相談が急増しています。ローパフォーマーは、なぜ発生するのでしょうか、どう対応すればいいのでしょうか。
ローパフォーマーの発生原因には、外的要因(環境)と内的要因(本人)があります。
働き方改革・AIの進化・人生100年時代等の環境変化に伴い、求められる役割が複雑化、働く期間が長期化し、期待役割と成果の間のギャップが生じやすくなっています。
Will(やりたいこと)・Must(やるべきこと)・Can(できること)のどこかにズレが生じると、成果が出なくなります。内的要因では,以下のような働きかけが改善のヒントになります。
●Will...「業務上やりたいこと」以上に「人生において大事にしたいこと」を上司が理解・把握することで、中長期での動機づけが可能になります。
●Must...「会社や上司の期待」と「本人が認識している期待」にズレがないか、定期的に確認します。特に、経営戦略の変更や技術革新が多い組織では、期待認識にズレが生じやすくなります。
●Can...「自分が好きでできる」かつ「将来にわたり、周囲に求められる」能力・スキルを、本人と上司が見極めることが重要です。
低業績者・ローパフォーマーを活躍させる方法に興味がある場合は、ぜひこちらもご覧ください。具体的な手法と実践的なアプローチを詳しく解説しています。
お役立ち資料:ローパフォーマーを"活躍"させる戦略とは?
長期的に相手の成長を本気で考え、具体的な行動改善の指導を行うポイントは、以下の3点です。
ローパフォーマー対応を"面倒な割に見返りが少ない,できれば避けたい"と感じる上司がいるかもしれません。組織運営や目標達成に真剣だからこそ"ローパフォーマー対応より、他に時間・労力を集中させたい"と考えがちです。ただ、問題の先送りや塩漬けは、本人の成長や改善機会を阻害するだけでなく、周囲のモラルを低下させます。また、「対応しないこと」が「無視」や「切り離し」というパワハラにもなりえます。
一定期間(3~6ヵ月)、ローパフォーマー社員と本気で向き合って一緒に改善に取り組むことが、改善したときの感謝・感動(本人)、職場のモラルの向上(周囲)、組織運営や人材育成スキルの向上(上司自身)につながると考える上司の意識変革が重要となります。
ローパフォーマー対応では"主体性に欠ける""協調性が足りない"等、性格に焦点を当てがちですが、ハラスメントリスクの上昇(人格の否定)と、本人が何を改善すればよいか分からないという点で、推奨できません。性格や考え方ではなく、「目に見える行動」にアプローチするほうが現実的で、うまく機能します。
例えば"協調性が足りない"と上司が感じた場合、具体的な問題行動を明確化します(例:会議に毎回遅刻する/他社員の業務を手伝わない、等)。そのうえで、【改善してほしい行動を伝える】→【行動が変わる】→【賞賛する】→【改善行動が反復される】→【周囲の評価が変わる】→【本人の意識が変わる】というステップで変革を促していきます。
ローパフォーマー社員の行動変容には、コミュニケーションの「主語」も重要です。会社や上司の都合を前面に出すと、本人には響かず改善につながりません。「上司の私が困る」「周囲が迷惑する」など、本人以外を主語に(口に出さなくとも、文脈として)話をすると逆効果になります。「(あなたが目指す姿に向けて)一緒に改善しよう」「(あなたの成長のために)厳しいことも正直に言う」等、「あなた」を主語にすると、メッセージは伝わりやすくなり信頼関係の土壌ができます。
(月刊 人事マネジメント 2019年10月号 HR Short Message より)
定年後の再雇用者をはじめ、役職定年者や事業部再編で職種転換が必要な社員、職場とのミスマッチによってパフォーマンスが十分発揮できていない社員などを対象に、パフォーマンスを向上させる支援プログラムがございます。
企業が業績向上を実現するために取り組む必要のある人材育成課題です。今まではあまり顕在化してこなかったものの、社会構造や事業環境の変化に伴い生じた問題への対応が求められてきています。
※弊社の研修サービス「ローパフォーマー対応研修」も効果的です。ぜひ活用をご検討ください。
※やる気のない社員・ローパフォーマーを変える方法とは? 【人事・上司必読!】の記事もぜひ合わせてお読みください。
※アーカイブセミナー「低業績者向け施策/評価とフィードバック・業績改善プログラム・受入体制作り」 も合わせてご覧ください。
株式会社PHP研究所、株式会社太陽企画を経て、2007年に株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ)入社。営業、研修講師、人事コンサルタントとして、日系・外資系企業を問わず2,000名以上のキャリア開発施策、人員施策プロジェクト、官公庁プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修講師・プロジェクトマネージャー等を100社以上担当。
プロティアン・キャリア協会認定アンバサダー
人事実践科学会議 事務局長
立命館大学経営学部大学院 授業担当講師
日本心理的資本協会 理事
<著書・講演>
ネガティブフィードバック「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術|アスコム出版
キャリア自律を実現させる最先端アプローチ~「本人・上司・人事」三つの視点から考える組織改革の進め方|HRカンファレンス2023秋基調講演
「働かないおじさん問題」のトリセツ|アスコム出版
ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB|文化放送
ほか