「ひとりで仕事はテキパキこなすけど、後輩の育成にはあまり関わろうとしない」
「成長やスキルアップという言葉に興味を示さず、日々現状維持で働いている」
「出世にまったく関心がなく、自分の希望や意見を主張することもほとんどない」
――そんな中堅社員の姿を、社内で見かけることもあるでしょう。事実、企業の大半を占めるのは新人でも管理職でもない「中堅社員」です。だからこそ、伸び悩む中堅社員の活性化によって、企業は大きな成長を遂げる可能性もあるのです。そこで今回は、企業の"潜在能力"である「中堅社員」の育成方法について解説します。「中堅社員に求められる役割や能力」「育成のポイント」も分かりやすく紹介しますので、参考にしてみてください。
※中堅社員の育成にお困りの方は、ぜひライトマネジメントの中堅社員向け研修をご検討ください。
中堅社員とは、ひとりである程度の業務をこなせる能力があり、新人でも管理職でもない社員のことを言います。
年次は企業によって捉え方が違いますが、新人が1~3年目であることを考えると、4年目以降の社員と言ってよいでしょう。また、年代の考え方もさまざまですが、40代や50代になると「ベテラン社員」という呼ばれ方をされることもあるため、20代~30代を中堅社員として捉えることが一般的です。中堅社員は上司による特別なサポートがなくてもひとりで仕事を進められるので、現場の主要戦力として活躍していることが多いでしょう。
ただ、仕事で伸び悩んでしまうことが多いのも、この中堅社員の特徴です。「スキルがある程度身についてしまったので、日々の業務がルーティンに感じられる」「管理職を目指したいと思えず、かといってプレーヤーとして成し遂げたいこともない」など、仕事にマンネリを覚え、今後のキャリアに悩んでいるケースもあります。いかにこうした中堅社員の悩みに気づき、キャリアの道筋を示してあげられるかが、企業にとって重要なのです。
中堅社員は、本来であればどのような役割を担うべきなのでしょうか。大きく3つの観点から紹介します。
まずは「プレーヤー」として高い成果を挙げることが、中堅社員に求められる役割のひとつです。例えば、難易度の高い案件やコアクライアントの案件を企業として安心して任せられるくらい、信頼を獲得できているとベストでしょう。そのためには、積極的に業務に関する専門性を身につけ、スキルアップを目指す姿勢が期待されます。
新人や若手の育成をするのも、中堅社員の大切な役割です。右も左も分からない新人に対して、仕事の意義や業務の進め方、周囲との関わり方を親身に教えます。また新人が業務で困っているときは、自らお手本を示し、導くことも大切です。このように中堅社員は新人の指導役であり、"精神的な支柱"となることが期待されます。
中堅社員は、管理職の補佐であり、チームの懸け橋となるような存在です。例えば、新人は管理職に対して距離を感じ、なかなか自分の意見を直接ぶつけられないこともあります。そこで中堅社員が"橋渡し役"となり、チームの意見を集約して管理職へ伝えるのです。そうすることで、チーム内の問題も解決しやすくなるでしょう。
中堅社員が上述の役割を果たせるようになるには、どんな能力が必要なのでしょうか。大きく5つ紹介します。
リーダーシップとは、チームメンバーに目標や指針を示し、周囲を動かしていく能力です。業務の中心人物として同僚たちを引っ張って行くにも、自ら手本となって後輩を指導するのにも、リーダーシップは欠かせません。また、中堅社員は"次期管理職"の立ち位置でもあるからこそ、将来のためにも備えておきたいスキルです。
フォロワーシップとは、管理職の意志決定を支援しながら、チームをより良い方向へ導いていく能力です。いくら経験を積んだ管理職と言えど、すべての決定が正しいとは限りません。その際に中堅社員が専門知識を活かしながら、上司の決断をサポートします。結果として、チーム全体のパフォーマンス向上も期待できるでしょう。
メンタリング能力とは、対話を通じて、部下に自発的な成長を促す能力です。最近では、新入社員の育成方法として、年の近い中堅社員が相談役になる「メンター制度」を導入する企業も増えています。その際、中堅社員が新人の想いを正しく聞き、コミュニケーションによって解決へ導くことで、新人の成長を促すことが可能です。
問題解決力とは、プロジェクト内で発生する課題に対して、ロジカルに解決法を導き出す能力です。中堅社員は、実務においてもチームビルディングにおいても、中核としての働きが期待されます。そのため、意見を求められる場面も多いでしょう。その際、論理的思考に基づいて解決策を提示できると、組織をより良い方向へ導けます。
ビジネススキルは、広く実務を進めるうえで必要な能力です。例えば、上司や顧客へ明瞭に意志を伝えられる「プレゼンテーション能力」、周囲と連携して業務を行うための「コミュニケーション能力」、課題を論理的に解決する「ロジカルシンキング」の能力などがあります。これらがあれば、高いパフォーマンスにもつながるでしょう。
ここからは、実際に中堅社員を育成する際の流れを3つのステップで紹介します。
中堅社員は業務で忙しく、なかなか自分のキャリアについて深く考える時間を持てないものです。だからこそ、まずは上司が中堅社員と1on1ミーティングや面談を行い、仕事での悩みや自身で足りないと感じているスキルなどをヒアリングします。まずは中堅社員本人が自身の現状と課題を把握することが、育成のスタートです。1on1ミーティングの効果を高めるためのポイントは「1on1ミーティングで何を話すべき?効果を高めるためのテーマ・ポイントを解説!」をご覧ください。
現状が分かったら、上司が相談に乗りながら、今後どのようなキャリアを描くべきかの計画を練っていきます。「ハイプレーヤーを目指したい」「部長や課長などの管理職を目指したい」など、選択肢はさまざまです。そして、それらの希望をかなえるために今足りていない能力・身につけるべき能力は何かを、洗い出していきましょう。
面談を通じて「身につけるべき能力」が決まったら、今度はそれに合わせた研修内容を選んでいきます。
なぜ研修を利用するべきかというと、中堅社員の場合、業務に関する専門スキルは実務のなかである程度まで習得済みで、必要になるのは日常業務では身につかないような知識やスキルということになるからです。それをうまく補うためには、人材育成のプロによって行われる外部の研修サービスが、非常に効果的というわけです。
例えば、「後輩を指導するためのメンタリング能力が足りない」という課題があれば、メンター向けの研修、「論理的に考える能力を身につけたい」という課題があれば、問題解決力強化の研修が最適です。足りない能力を補えるように研修を組み合わせることで、理想に近づくための知識とスキルを得られます。
<一緒に読みたい記事>人材育成の手法とは?正しい進め方・オンライン研修の活用法も紹介!
<一緒に読みたい記事>社員教育の効果的な手法・カリキュラム例とは?【オンライン研修も解説】
※中堅社員の育成にお困りの方は、ぜひライトマネジメントの中堅社員向け研修をご検討ください。
研修を受けて終わり、では本当の意味での成長につながりません。中堅社員本人が研修で学んだ内容をうまく実務のなかで活かせるように、上司が最適な仕事・役割を割り振るようにしましょう。
その際におすすめなのが、チャレンジングな業務をあえて任せてみることです。例えば、今まで後輩の育成をしたことがない中堅社員には、1~2人の少人数からでもよいので育成を任せてみます。また、将来管理職になりたい中堅社員がいれば、チーム内に責任あるポジションを作って任命するのもひとつの方法です。身の丈より少し高い業務に挑戦し、乗り越えて達成感を得ることで、中堅社員自身が成長をより強く感じられるようになります。
中堅社員を育成するうえで、気をつけるべきこととは何でしょうか。
育成を成功させるために押さえておきたい、4つのポイントを紹介します。
中堅社員が陥りがちなのが、「自分は組織であまり重要な存在ではない」と思い込んでしまうことです。新人は必死に独り立ちを目指していますし、管理職にはマネジメントという大事な役割があります。そのため、中堅社員は自分が組織の中で"宙ぶらりん"に感じてしまうことがあるのです。そのため、上司から本人に「チーム内での役割」「プロジェクト内での存在意義」をしっかりと伝えるようにしましょう。自身が組織にとって大切な存在であることに気付けば、中堅社員もよりモチベーションを持ってスキルアップに取り組むことができます。
中堅社員のなかには、今後どのようにキャリアを描いていくべきか、迷ってしまう人も少なくありません。転職への意欲が高まってしまうのも、この時期です。そのため、人事や上司が中堅社員に対して、キャリアの道筋を示してあげることが重要でしょう。「この能力を身につければ、このポジションに進める」「このポジションに進めば、市場価値がこのくらい上がる」という風にキャリアを描ければ、能力開発の意義も分かるようになります。
中堅社員がひとりで成長しようと思っても、限界があります。大切なのは、上司が常に目を配り、成長の"きっかけ"を与えてあげることです。研修を受けさせるのもそのひとつですし、チャレンジングな仕事を割り振るのもそうです。上司が積極的に関わることで、本人も「期待されている」と感じ、スキルアップへの意欲も高まります。
「とりあえず研修を受けさせよう」というだけでは、効果に直結しないかもしれません。大切なのは、中堅社員本人の課題に合わせて最適な内容を選ぶことです。そして、本人が進みたいキャリア・身につけたい能力に合う育成アプローチを取る必要があります。その方が、より本人の意欲も高まり、実りのある育成になるでしょう。
企業で人手不足が加速している今、「中堅社員の活躍が組織の将来を決める」と言っても過言ではありません。ただ、中堅社員の育成に取り組むなかで、どんな内容の研修が社員に合っているのか迷うこともあるはずです。その際は、まず研修サービスを提供する専門企業に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで最適な研修を選ぶことができ、より効果的な育成を行うことができるでしょう。