厚生労働省は3月、新型コロナウイルス感染症に関する「雇用調整助成金」の特例措置拡大を発表しました。
厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金
雇用調整助成金の冒頭にはこう記載があります。
「景気の変動、産業構造の変化などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、休業、教育訓練、または出向によって、その雇用する労働者の雇用の維持を図る事業主に対して助成する」
助成金事務センターの担当官と話す機会がありましたが、3月に入り問い合わせが急増しているとのことでした。
一方、早期退職・希望退職の募集状況は、2020年1-2月で19社(前年同期9社)。既に2019年1年(36件)の半分と急増しています(2020年3月11日:東京商工リサーチ)。
2020年1-2月 上場企業「早期・希望退職」実施状況
雇用契約の維持が、様々な理由で難しい局面を迎える企業も増えています。
現在の困難で不透明な企業経営において、雇用対策の重要度が高まっています。
今回は、雇用調整に関して、様々な類型と回避に向けた対応を整理したいと思います。
雇用調整という言葉に、どんなイメージを持たれるでしょうか?
辞書で調べると「企業が景気の変動や事業活動の増減によって生ずる労働力需要の変化に対処すること」(三省堂 大辞林より「雇用調整」)とあります。
端的に言うと「変化に対処する為の、労働力の調整」で、外部環境が変化する以上、変化対応や労働力の増減は常に必要となります。
ただ、増員や採用を雇用調整と表現することは少なく、残業規制・採用抑制・出向・休業・退職優遇制度・解雇など、労働力の削減や縮小を伴うケースを指すことが多いです。
経済や社会が成長局面ではなく成熟局面に入った場合、必要性は向上します。
その際は、各国の法律順守はもちろん、従業員の心情や生活への十分な配慮が求められます。
一口に「変化に対応する」と言っても、様々なパターンがあります。
雇用調整という厳しい施策実施の際は、社内でも様々な議論が噴出し、当初の目的や方向性が分らなくなるケースもあります。
自社が何をしたいのかを理解しておくと、議論や対応を整理する一助になる場合があります。
検討に際しては「何のための調整なのか?」「短期的なのか?長期を見据えた施策なのか?」「調整しない場合、調整した場合、それぞれどのような影響(プラス・マイナス)があるのか?」「どの位の期間で完了させるのか?」など、様々な観点を持つことをお勧めします。
増員や採用ではなく、労働力の削減や縮小を伴う場合の雇用調整には、大なり小なり組織にダメージが発生します。
降給や休業や退職の該当者となった社員の影響は当然ですが、他の社員(場合によっては顧客)も「この組織は大丈夫だろうか?」「自分はどうなるのだろうか?」等、様々な不安や不満が生じる可能性があります。
無いに越したことは無い施策なので、出来るだけ回避して成長する事を推奨します。
回避する為には経営陣だけでなく従業員各自にも努力や意識変容が求められます。
■どうすれば、将来もビジネスを維持・拡大できるのか?
■世の中の変化に、どのような能力や行動を通じて対応できるのか?
■自分の生産性や貢献領域を、どうすれば高めることができるのか?
※予期しない天災や市場の根本的な変化にすべて対応することは困難です。
ただし、社員個々人が今後の変化を自分事として予測し、自分の能力や貢献領域を拡大し続ける組織風土が醸成できていると、変化への柔軟な対応力が高まります。
結果、雇用調整という選択が必要最小限に抑えられる可能性があります。
その為には、日頃から厳しい情報や現在と将来の変化に関して正しい情報を提供し、社員一人一人と話し合う機会(1on1)を創ることを推奨します。
雇用契約の解約や休業は、避けられれば避けるに越したことはありません。一方、未曽有の変化の中で企業経営やビジネスを展開するには、経営者や従業員に質量とも常に変化が求められます。
組織として、個人として、将来を見据えてどんな変化が必要なのか?
その為に、どんな組織や個人を目指すのか?
組織も個人も、双方が真剣に考え続け変わり続ける姿勢が重要になります。
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株式会社PHP研究所、株式会社太陽企画を経て、2007年に株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ)入社。営業、研修講師、人事コンサルタントとして、日系・外資系企業を問わず2,000名以上のキャリア開発施策、人員施策プロジェクト、官公庁プロジェクトにおけるコンサルティング・管理者トレーニング・キャリア研修講師・プロジェクトマネージャー等を100社以上担当。
プロティアン・キャリア協会認定アンバサダー
人事実践科学会議 事務局長
立命館大学経営学部大学院 授業担当講師
日本心理的資本協会 理事
<著書・講演>
ネガティブフィードバック「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術|アスコム出版
キャリア自律を実現させる最先端アプローチ~「本人・上司・人事」三つの視点から考える組織改革の進め方|HRカンファレンス2023秋基調講演
「働かないおじさん問題」のトリセツ|アスコム出版
ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB|文化放送
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