

ビジネス環境や働き方の変化が加速し、将来を読みづらい時代。多くの企業が直面しているのは「社員の主体性をどう引き出すか」という課題です。
従来のように上司が一方的に指示を出すだけでは、変化の速さに対応できません。いま求められているのは、組織全体でリーダーシップを共有する「シェアード・リーダーシップ」です。
本記事では、シェアード・リーダーシップの定義や必要とされる背景、日本企業での課題を整理します。そのうえで、シェアード・リーダーシップを実現するカギとなる「キャリアマネジメント」について解説し、実践に役立つポイントをご紹介します。
シェアード・リーダーシップとは、一人の上司に依存せず、チームの誰もが状況に応じてリーダーシップを発揮する考え方です。海外の研究でも注目されており、次のような特徴があります。
従来型リーダーシップが「上司中心」であったのに対し、シェアード・リーダーシップは「チーム全体」で課題解決を進める点に大きな違いがあります。
シェアード・リーダーシップを解説したセミナーの録画をご視聴いただけます
日本企業を支えてきたのは「プレイヤー型マネージャー」。上司が成果を出しつつ部下を管理するスタイルです。しかし今日の環境にはそぐわなくなっています。
不確実性の高まり | DXや新規事業など変化のスピードが増し、上司一人の采配では限界。現場の自律性が不可欠。 |
年上部下の増加 | 役職定年や再雇用で、部下の方が経験豊富なケースも増加。単純な「命令と服従」は成り立ちにくい。 |
働き方の多様化 | リモート、副業、ジョブ型雇用などにより、社員のキャリア志向は多様化。一律のマネジメントは通用しない。 |
若手社員の価値観の変化 | 「上司に従えば安泰」ではなく、自分の成長ややりがいを重視する傾向が強い。納得できる目的や意味がなければ力を発揮しにくい。 |
こうした背景から、一人の上司に依存するのではなく、チーム全体でリーダーシップを発揮する仕組みが必要とされているのです。
考え方としては理解されても、現場に根づかないケースは少なくありません。
これらに共通しているのは、社員が「自分の役割や経験が将来にどうつながるのか」を実感できていないことです。背景には、上司が業務管理に追われ、部下のキャリアや成長に十分に関わる時間を持てない現実があります。その結果、仕事への意味づけが弱まり、主体性が育ちにくいのです。
根本にあるのは、キャリアの視点を欠いたマネジメントです。業務をこなすことはできても、「この経験は何の力を伸ばすのか」「どんなキャリアの可能性があるのか」という意味づけがなされなければ、社員は主体的に動けません。
その結果、リーダーシップが分担されず、シェアード・リーダーシップは現場に浸透しないのです。
キャリアマネジメントとは、人事制度や配置の管理だけを指すのではありません。上司が部下の将来の方向性や志向を理解し、日常の業務や対話を通じて成長を支援するマネジメントを意味します。
例えば
こうした関わりによって、部下は仕事に意味を見出し、主体的に行動するようになります。
キャリアマネジメントが欠けた状態では、シェアード・リーダーシップを根づかせるのは難しくなります。具体的には次のような弊害が表れます。
キャリアマネジメントを実践することで、職場には次のような変化が生まれます。
これらの効果は、単に制度や研修を整えるだけでは得られません。日常の対話や意味づけを通じて、上司と部下の関係そのものが変わっていく必要があります。
そして、このとき求められているのは、部下を細かく「管理する上司」ではなく、可能性を引き出し、挑戦を後押しするリーダーです。こうしたリーダー像こそが、シェアード・リーダーシップを現場に根づかせる基盤となります。
キャリアマネジメントを根づかせるには、上司と部下の両方への働きかけが重要です。どちらか一方だけでは不十分で、上司の支援と本人の主体性がかみ合ってこそ行動変化が起こります。
両者の取り組みがかみ合うことで、日常のキャリア対話が深まり、部下の主体性が育ちます。そうした積み重ねが、キャリアマネジメントに実効性を与え、最終的にシェアード・リーダーシップの定着へとつながっていきます。
シェアード・リーダーシップは、変化の激しい時代を乗り越えるために欠かせない考え方です。その前提となるのが、社員一人ひとりが主体的に行動できる環境づくりです。
その主体性を育てるカギが「キャリアマネジメント」です。上司が部下のキャリアの方向性や将来の志向を理解し、本人が自分の未来を描けるようになることで、組織全体に自律的な行動が広がり、シェアード・リーダーシップは現場で力を発揮します。
こうした取り組みを現場で根づかせるには、上司と部下の双方への働きかけが不可欠です。弊社では「上司向けキャリア開発支援研修」と「本人向けキャリアデザイン研修」を提供し、組織にキャリアマネジメントを定着させる支援を行っています。