人材不足に悩む企業が増えている昨今、適材適所な人員配置が経営のカギとなっています。そのうえで役に立つのが、「人材アセスメント」と呼ばれる評価システムです。そこで今回は、「そもそも人材アセスメントとは?」「人材アセスメントの手法やメリットとは?」など、企業が知っておきたい情報を分かりやすく紹介します。
そもそも「アセスメント(assessment)」とは、日本語で「評価」を意味する言葉です。つまり「人材アセスメント」とは、人材に対する評価のことをいいます。具体的には、第三者による客観的な視点によって、人材の性格・能力・ポテンシャルを分析して評価することです。基本的には外部の専門企業に依頼して実施し、演習・面接・心理テストなどを通じて、人材の持っている適性を客観的に評価します。その評価をもとに、企業内での配置や昇格などを決めることが多いです。
では、人材アセスメントは、どのような背景から生まれたのでしょう。導入の歴史を簡単に紹介します。
人材アセスメントが生まれたのは、第二次世界大戦まっただなかの欧米諸国だといわれています。当時、親衛隊、軍隊の隊員や諜報員を選抜する際、身分や階級ではなく、潜在能力や性格を正しく見極める必要がありました。過酷な労働だけに、何より客観的に見た"適性"がものをいうからです。そこで「遺留品から持ち主の性格を推測するテスト」「どれだけ秘密を守れるかの面談テスト」「グループでいかに武器を安全に運ぶかの実践テスト」などが行われ、評価がくだされました。これが次第に産業用の評価ツールに進化して、日本にも伝わったのです。
日本に人材アセスメントが導入された当時(1970年代)、企業はオイルショックで高度成長期の終わりを迎え、昇格する人材を絞る必要がありました。そこで人材アセスメントという客観的な評価ツールで適性・能力を見極め、昇格者を決めたのです。今では人材不足が叫ばれる背景から、社員一人ひとりを適材適所に配置して生産性を高めようとする企業が増えてきました。その配置決めに、人材アセスメントが使われるようになっています。
人材アセスメントと従来の評価の違いは、「客観性」の有無です。というのも、従来の人事評価は直属の上司による主観的な判断で決まり、"恣意性(好き嫌い・相性の良し悪し)"が含まれるケースも大いにありました。また、営業と経理など、職種間でどうしても評価の指標に違いが出てしまいます。そこで、客観的かつ普遍的な評価の仕組みとして、人材アセスメントのツールが導入されるようになったのです。人材アセスメントであれば第三者による評価なので、会社での力関係・職種に左右されることなく、人材の潜在能力や適性を見極められます。
客観的に適性を見極める人材アセスメントですが、どんなメリットがあるのでしょう。社員にとってのメリット、企業にとってのメリットをそれぞれ紹介します。
人材アセスメントで評価してもらった結果、自分では思いもしない強みが見つかることもあります。すると、将来のキャリアを設計しやすくなり、より仕事に対して前向きに取り組めるようになるでしょう。また「客観的な分析による評価」という点も、社員にとっては納得度が高いため、モチベーションにもつながりやすいです。
人材の潜在能力や適性が分かれば、企業はより適切な人事配置を行えます。ありがちなのが、「営業としての実績は良いが、マネジメントの立場になって急にパフォーマンスが落ちた」というケースです。これも昇格前に人材アセスメントで評価しておけば、プレイヤーとしての適性・マネジメントの適性が把握でき、失敗リスクも軽減できます。適材適所に人材を配置すれば生産性も上がり、業績の向上も期待できるでしょう。
いざ人材アセスメントを取り入れるとき、何を使えばよいのでしょうか。ここでは具体的な手法を紹介します。
アセスメント研修とは、マネジメント適性・強みや弱み・市場価値などを分析する目的で、専門家の主導のもと行われる研修です。主に面談・インタビュー・グループディスカッションを実施し、その様子を見ながら人材の評価を行います。一般的には実際の職務と同じような状況をつくり出し、研修することが多いです。どんな研修を実施するかは、まず外部の研修企業に相談するのが最適でしょう。具体的には、以下のような研修があります。
◆評価者によるインタビュー(市場価値の判断)
労働市場を熟知した評価者(アッセンサー)が、インタビューを通じて対象者の市場価値を判断します。具体的には、環境への適応性やパーソナリティ、語学力、スキルや知識を総合的に聞き出し、人材としての市場価値を導き出す手法です。マネジメント適性の判断はもちろん、今後のキャリア開発の有用な指標としても使えます。
◆センター方式アセスメント
行動科学にもとづいて設計された演習課題に取り組み、その様子を評価者が見て人材の潜在能力を評価します。具体的には、集団・個人・対面の各状況において、対象者がどのような行動をとるかを確認、分析するイメージです。演習後は評価者やその他の参加者からフィードバックをもらい、自身の強み・適性を知ることができます。
適性診断とは、紙やWebのチェックシート・質問票をもとに、人材の性格や志向性、知的能力を判断するテスト形式の評価ツールです。特別な演習はせずに黙々と取り組めるため、スピーディに実施できます。また、個人の適性が定量的に分かるため、人材配置にも便利です。具体的には、以下のような適性診断の手法があります。
◆バークマン診断
対象者のリーダーシップに対する考え方・行動などを読み取り、行動傾向を4つの型に分類するツールです。具体的には、「実行促進型」「関係構築型」「管理運営型」「企画立案型」の4つに分かれます。リーダーを新しく選出するときはもちろんのこと、人材の性格に合ったチームビルディングの手法を考えるのにも効果的です。
◆ホーガン・リーダーシップ・フォーキャスト・シリーズ
オンラインで自身にまつわる質問に回答することで、価値観・ワークスタイル・ストレス耐性などを分析する評価ツールです。40ヶ国・約350万人の利用者を持ち、主に人材の選考や育成の計画立案などに使われています。
360度評価とは、対象者に普段接している上司・同僚・部下などにアンケートを行い、その結果をもとに評価を決めるツールです。質問項目に対して5段階評価で回答する形式が多く、他人からの評価がひと目で確認できます。自己評価と合わせて実施することで、客観的な評価とのギャップを意識し、行動を変革することが可能です。
このように、人材アセスメントの評価方式は多種多様です。そこで、導入するときのポイントを紹介します。
人材アセスメントを選ぶときは、「目的」ありきで考えることがポイントです。というのも、「人材アセスメントの導入」それ自体が目的になってしまうと、評価後の行動変革につながらず、もったいない結果になってしまいます。そのため、まずは「リーダー選出の基準とする」「若手のキャリア開発の指標にする」など、あらかじめ目的・目標を決めておくとよいです。そうすることで、おのずと利用すべき人材アセスメントも定まります。
目的が決まれば、それに合わせてふさわしい分析項目を選ぶことが大切です。例えば、リーダー人材の選出なら「ストレス耐性」「リーダーシップの有無」「関係構築のスタイル」......など、評価項目も決まってきます。ただ、使用する人材アセスメントのツールによっても、評価できる項目は変わってくるものです。そのため、まずは外部の研修企業に相談し、二人三脚で最適な人材アセスメントを設計していくことが最適だといえるでしょう。
人材アセスメントは、事業の成長に欠かせません。より効果的に評価を行うためには、外部のプロフェッショナルにまず企業の課題・目指したい姿などについて相談することが大切です。ぜひ外部のプロを有効活用しながら、組織風土に合う人材アセスメントを選んでみてはいかがでしょうか。
ライトマネジメントのアセスメントサービスは、組織に求められる人材要件を勘案しながら成果を生む人材を見つけ出し、能力開発を行いながらパフォーマンスを発揮する環境づくりを支援しています。知識や行動、スキル、モチベーションなど行動特性であるコンピテンシーの発揮度合いを判断するアセスメントのみならず、各人に備わるポテンシャルを測るアセスメント、組織診断に活用できるツールも提供しています。