現場配属された新入社員の定着化、即戦力化は、現場のOJT力にかかっている。
私が専門としている営業組織においても同様で、商品理解のための簡単な座学と先輩同行を一定期間行うレベルで導入研修は終わってしまうのが現実だ。
あとは、新入社員の力量に委ねる形になってしまう。
いわゆる要領が良く、飲み込みの早い人は、図に示す「経験学習サイクル」を自力でまわしている。このサイクルを回しながらコツ(勝ちパターン)を見出し、成功体験を掴みとる。
それによって自信が生まれ、また新たなチャレンジをする力が湧いてくるという好循環が生まれている。
このサイクルを自力で回せる優秀な新人営業メンバーももちろん存在し、同じ1年目でも即戦力になることがある。
ただ、新人営業メンバーのなかには、①に示す「とりあえずやってみる!」ことができず、経験学習の最初でつまずいている場合が多い。その理由の多くは、失敗を恐れるからだ。
特に、お客様にご迷惑をかける、嫌われるのはかなりの恐怖だ。
新人営業へのOJTの第一歩は、最初に正解を教えて、一歩を踏み出す勇気を与えること。
つまり、図に示す「経験学習サイクル」の④から始めることが肝要だと思っている。
自らの成功体験を"勝ちパターン化"できるマネージャー/リーダーをつくれ
成長スピードの速い人は、効果的な手法を「概念化=勝ちパターン化」して理解している。「概念化=勝ちパターン化」として理解することで応用が利くからだ。言い換えると、この"勝ちパターン"を最初から新人営業に教えれば良い。
ところが、成功体験を豊富に持つマネージャーやリーダーが、「概念化=勝ちパターン化」できず、ノウハウの伝授に困っていることが多い。
よく言われる野球の監督タイプで言えば、直感型の長嶋監督型と、ID野球という理論にできる野村監督の違いに類似している。
では、勝ちパターン化するには、どうすればいいのか?
精密部品メーカーA社の営業事例を見てみよう。
これは優劣の差が大きい「初回訪問場面」にテーマを絞り、優秀な営業メンバーにインタビューして、「勝ちパターン」を見える化した例だ。
優秀なメンバーは初回訪問では、まず図に示したようなゴール状態にたどり着こうと思って、アポイントに臨んでいるのだ。
そして、そのゴールにたどり着くためには、
・まずは社長の経歴から自社に興味を持っていただき、
・次に取引実績で関心を引き、
・その次に具体例を示すことで、詳細な説明を聞きたいという気持ちになってもらおう
とする意図が明確なのがわかる。
私のインタビュー経験から感じることは、優秀な営業メンバーは1つ1つの営業アクションに明確な意図や狙いがあることだ。
例えば、
Q:なぜ、社長の経歴を細かく話すのですか?
と聞くと、
という明確な意図や狙いが返ってくる。
このように、アクションの内容とその意図を引き出して、売れている営業パーソンの思考回路を構造的に見える化すると、「勝ちパターン」が見えてくるのだ。
特に、図の赤枠で示している「お客様の購買ステップ」の部分を言語化して共有することが重要だ。目的意識が共有されることで、新たな手法が他の営業メンバーから編み出されてくるからだ。
例えば、
「社長の経歴を話すよりも、雑誌のインタビュー記事を見せる方が効果的だった!」というように、新たな営業ノウハウが生み出され、磨かれやすくなるのだ。ぜひ、営業現場に新入社員が配属される前に、"勝ちパターン化"を試して欲しい。
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神戸大学工学部卒業後、リクルートに入社。法人向け新規開拓営業に従事後、販促企画やナレッジマネジメントなどの営業支援を担当。リクルートマネジメントソリューションズでは、営業研修や営業組織強化のワークショップ設計に従事。2006年に独立起業。営業、販売、接客などの顧客接点部門の組織開発プロジェクトを数多く手がける。
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