最近の企業の構造改革では、ジョブ型の人事制度の導入といった既存の制度そのものを抜本的に見直そうという変化の大きいものが多く見られるようになってきました。仕組みというハードの部分を変更する上では制度そのものをどう設計するかはもちろん重要ですが、大きな変化を伴う構造改革においては社員の意識醸成といったソフト的なアプローチも重要なポイントとなります。会社を取り巻く環境変化が激しい今日において構造改革をいかに迅速に推進させることができるかは、経営層だけでなく一般社員も含めた全社員の意識醸成に取り組むことが必要です。全社員に変革に対する意識を醸成させ、自律的・主体的に動いてもらうにはトップによる強いリーダーシップに加えて、管理職層にどう動いてもらうのかがキーとなってくるでしょう。さらに管理職層の中でも特に部門長クラスに当事者意識を持ってもらうこと、部門長クラスが自社の中期経営計画をしっかりと自身の言葉で部下メンバーに話すことができるかがカギになます。つまり、この層に変革のリーダーとして配下のメンバーを引っ張っていく役割認識をどのように持ってもらうかがポイントとなってくるわけです。
社員の意識変革への具体的な取り組み方法や成功させるポイントついてはこちらのお役立ち資料で解説しています。あわせてご覧ください。
お役立ち資料|組織改革を成功させるカギは管理職にあり?
では部門長クラスが変革に向けた当事者意識を醸成するためにどのようなプロセスが効果的なのかについて見ていきたいと思います。ここでは「変化に対する移行曲線」を用いて考えていきたいと思います。人は望まない変化に直面したときには必ずこの4つの段階を経て変化を受容していくということが分かっています(図1参照)。
ここでのポイントは部門長クラスであっても、変化に対して必ず「否定」、「抵抗」というネガティブなフェーズを通過しなければ「探求」、「決意」という変化を受け入れるポジティブなフェーズに行けないということです。部門長クラスですので、変化を受容するスピードは速いかもしれませんが、一般社員と同じように変化に対する「否定」、「抵抗」の感情を持つことは例外ではありません。経営層から一方的に部門長なのだから先陣をきって変革に対応するのは当たり前だとの意識で一方的に対応させようとすると一時的には「探求」、「決意」の段階にいったように見えても時間ととも否定に戻ってしまうということが分かっています(図2参照)。
「否定」、「抵抗」、「探求」、「決意」のそれぞれの段階を経て変化を受容していくことが必要なのです。そのためには直面する変化に対して不安や不満を吐き出す場を設定することが有効です。心理的な安全が確保された状態で同じ立場である部門長同士で率直に自社の構造改革の内容について、本音をぶつけ合う場を設定することが効果的です。つまり、まずはなるべく早い段階で自らも抵抗の段階にいることをしっかりと認識させることが重要なのです。
最終的には一般のメンバーまで大きな変化に対応させなければいけませんので、変化に対応させるためのスキルセットは求められます。しかし、それ以上に重要なのは、マインドセットの部分です。なぜ当社はこの構造改革を推進しなければならないのか、そのために自部門に求められる役割は何なのか、そのために果たすべき個々人の役割は何なのかを自分ごと化した部門長自身の言葉で配下のメンバーに発信することが必要です。ただし、この言葉には嘘偽りなく本音で語られなければメンバーには響きません。その前提条件として部門長自身も自社が推進する構造改革についてきっちりと腹落ちしていることが求まれるのです。これを実現するためにも前述した部門長クラスを集めて不安や不満も含めて部門長同士が本音で話し合えるワークショップの場を設定することは有効でしょう。
今回は意識醸成における重要な要素についてお話しましたが、このような構成で構造改革推進のための意識醸成施策を考えてみてはいかがでしょうか。また、弊社でも構造改革推進に向けた意識醸成のためのワークショップを用意しておりますので、ご興味がおあればお問い合わせください。
「変革推進者研修」をおすすめします。
構造改革の達成に向けて重要な要素は変革推進を担う管理職自身のマインドセットと部下のマインドセットです。本研修は、意識醸成を重視した管理職向けのワークショップです。
大手金融機関に入社。同社にて新規コールセンターの立ち上げのプロジェクトに携わるとともに、主に教育・研修等の企画、推進を10年あまり手がける。その後、株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ)に入社し、人事制度のコンサルティングに一貫して従事している。人事制度の構築といったハード的な側面のコンサルテーションに加えて年代別のキャリアデザイン研修や上司向け部下のキャリア開発支援セミナー、新入社員研修、チェンジマネジメント研修、評価者研修といったソフト面の施策企画や実施にも幅広く携わる。
近年では低業績者に対する意識改革トレーニングや活性化のためのスキーム構築など未だ確立されていないテーマにも従事。また、クライアントニーズに合わせた研修コンテンツの作成に加えて、講師として実務に即した多岐にわたるテーマでセミナーも多数開催している。大手から中小企業まで幅広いクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。豊富な経験にもとづいた制度面、運用面、トレーニング面からの体系的なアプローチには定評がある。