企業が将来のありたい姿を実現するために、ビジネスモデルの変革や組織再編をする際、人員をスリム化する施策をどのように進めればいいのかという課題に行き着くことがあります。今までそのような取り組みをしたことが無い企業にとっては、「何から手をつければいいのか」「果たして施策目標を達成できるだろうか」「労働紛争を起こしてしまわないだろうか」といった不安は尽きません。これらの企業経営者や人事担当者の不安に向き合い、具体的な進め方を考え、実行をサポートするのが雇用調整コンサルタントの主たる役割です。しかし、人員施策が終了したら雇用調整コンサルタントの役割は終わりではありません。そこで今回は、雇用調整コンサルタントが、人員施策終了後にどのような役割を担っているかをお伝えしたいと思います。
退職を決断された社員の方々が新しいキャリアを歩んでいけるよう、再就職支援サービスのスムーズなスタートにつなげていくことも、雇用調整コンサルタントの重要な役割です。雇用調整コンサルタントは、再就職支援サービスを担当するキャリアコンサルタントに退職者について、以下の多くの情報提供を行います。
会社に関する事項
人員施策を実施した背景/当該企業の抱える課題/ビジネスを取り巻く環境変化/社風/地域など
退職者に関する事項
所属部署/職種/知識/経験/スキル/ITへの慣れ不慣れ/転職活動経験の有無/転居の可否/語学力/年齢/勤続年数/最終学歴など
その情報をもとに、キャリアコンサルタントはどのような方が支援を求めてお越しになるのかを考え、必要な準備を行います。同業界や同職種の転身事例、応募書類のサンプルはもとより、事前に求人情報を集めたり、転職エージェントと事前に連携したり、場合によっては地方自治体やハローワーク、金融機関とも連携し求人相談会などのイベントを企画することもあります。雇用調整コンサルタントは、これらの準備が順調に進捗しているかを確認しています。
再就職支援サービスが開始されると、退職された方々はオリエンテーション、活動スタートセミナー、仕事の方向性セミナーなど集合型もしくはオンライン上でのさまざまなワークショップにご参加頂きながら、1対1のキャリアカウンセリングを通じ、キャリアや価値観の棚卸、方向性の決定、応募書類作成などの支援を受け、再就職活動の準備を進めていきます。出身企業には月1回、退職者一人ひとりの再就職活動がどのような状況になっているかをレポート形式に纏め、報告をしています。進路決定時には、決定業界や職種についても記載しています。
雇用調整コンサルタントはこの内容に基づいて、必要に応じ出身企業と、活動状況について情報交換を行います。順調に、希望に沿った進路を実現出来ているのであれば、それは企業にとってもレピュテーションリスクを抑制するのみならず、将来の自社のファンを増やすことにも繋がるからです。また、納得のいく進路が決まっているという事実の積み重ねは、出身企業の人事担当者にとっても良い報告になっていると考えています。
ともすれば後ろ向きとも取られかねないのが人員施策ですが、決して社員にとって不幸なだけの施策ではありません。スキルの陳腐化や企業を取り巻く環境変化など様々な要因によって、今までの働き方を継続することが難しくなった結果として人員施策が実行されるケースが増えてきています。そのような背景があったとしても、再就職支援サービスを受けることによって退職者が自分自身の価値観に沿った、知識やスキル、経験が活かせる、納得のいく幸せな進路を実現していることを企業にお伝えしていくのも、雇用調整コンサルタントの役割であると考えています。
人員施策は、企業の永続的な成長を実現するために組織を筋肉質にし、より競争力を高めるために実行するものです。施策終了後は、企業に残った社員がキャリア自律の意識を高く持ち、一人ひとりがどのように組織における自身の期待役割を果たし組織に貢献するかを考え、実行することが大切になります。
自分自身の価値観や強み、成長課題を踏まえた上で、これからの自社を取り巻く環境はどのように変わっていくか、それに対して何が求められているのかということを考え、「私は将来〇〇できるようになりたい/〇〇のような存在になりたい」といったキャリアビジョンを持ち、「私はこの組織で〇〇をする」という具体的なアクションプランに落とし込み、日々の業務にオーナーシップを持って取り組むことが重要です。また、キャリアは一人ひとりの価値観に端を発するものなので、キャリア支援施策も社員一人ひとりの多様性を包摂し、活かすことができるものでなければなりません。
これらのキャリア開発施策を導入するにあたってのポイントや留意点についても、これまでの人員施策をサポートさせて頂いた中で、トップマネジメントの発信や上司部下のコミュニケーションの課題、社員の変化対応に向けた意識変容への障壁など、企業の内側の課題を深く理解した雇用調整コンサルタントだから提案できることがあると考えています。
また、外資系企業様に多い傾向として、人事部門の方は同職種で業種横断的にご転職をされることが多く、以前施策のご支援をさせて頂いた方が転職され、再び転職先の課題について弊社にご相談を頂くといったことも多々ございます。その意味では、企業の人事課題解決をご支援する役割を担いながらも、人事担当者との個別の関係構築を深められているという実感があり、私も一人の雇用調整コンサルタントとして僭越ながらご期待を賜っていることに大変やりがいを感じております。
以上、今回は弊社の雇用調整コンサルタントの意外な役割についてご紹介をさせて頂きました。主たる役割の雇用調整コンサルティングについて、どのようなご支援が可能かについては個別にお問い合わせを頂けますと幸いです。貴社の課題に即したご支援のプランを提示させていただきます。
再就職支援サービスの内容や事例に関してはこちらのEbookでご説明しています。こちらもご一読ください。
自動車部品商社勤務を経て、2002年2月よりマンパワー・ジャパン株式会社(現マンパワーグループ)にて、派遣社員のキャリアカウンセリング、面接トレーニング、転職支援に携わり、2008年より支店長として営業部門のマネジメントに従事。営業支援部門を経て、現在はキャリア開発を中心とした人材育成、組織人事コンサルティングに従事。
研修では、双方向のコミュニケーションを意識し、受講生に自ら発言して頂ける雰囲気づくりを得意とする。受講生のキャリアの棚卸のみならず、政治経済社会情勢がビジネス領域にどのような影響を与えるか、その環境変化の中で企業はどのように成長し続けているか、また社員に求められる期待役割は何かについて、受講生に気づきの機会を提供することに情熱を注いでいる。
「受講生が自らのありたい姿(キャリアゴール)を発見し、自信をもって前向きな第一歩を踏みせるように支援する」を自らのミッションステートメントとして、日々ファシリテーションの進化に努めている。