シニア社員の活性化は企業が取り組まなければならない大きなテーマの1つです。なかでも特に問題となるのが、人事制度上の役職定年や定年再雇用の直後に大きくモチベーションが下がってしまうことです。処遇が大きく下がったことが起因しているように思えますが、それは1つの要素にすぎず、役職定年や再雇用のタイミングで会社から期待される役割が大きく変わったことに対するショックのほうが大きいように思えます。具体的にいうと、メールの数が極端に少なくなる、定例の会議に出席しなくていいと言われる,これまでアクセスできていた社内情報が見られなくなるなどです。このような、突然の変化に対して本人の心理的な準備ができていないことが原因といえそうです。
人は望まない変化に直面したときに、①否定,②抵抗,③探求,④決意という段階を経て、その変化を徐々に受け入れていくということが分かっています。「①否定」の段階は簡単にいうと"その変化は自分には関係がない"という心理状態です。それがいよいよ、この変化は自分に関係してくる、影響があると分かると"その変化に対して激しい抵抗や否定の感情を抱く"ようになります。それが「②抵抗」の段階です。そして、「③探求」の段階になると視点は将来になり、変化に対して徐々に前向きに受け入れるようになっていきます。「④決意」の段階までくると変化を受け入れ、変わった状態が日常化します。つまり、シニア社員を活性化させるためには、「①否定」「②抵抗」の段階をいかにうまく乗り切って「③探求」の段階へとスムーズに入ってもらうかがポイントといえます。
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役職定年や再雇用といった変化が大きいほど、受容するまでに時間がかかります。企業が役職定年や再雇用までシニア社員に対して何も手立てをしなければ、「①否定」からいきなり「②抵抗」の段階となり、変化の受け入れに時間がかかってしまう結果、モチベーションダウンが長く続くという状況になってしまいます。少なくとも,役職定年や再雇用の2年~3年前のタイミングでどういう変化が待ち受けていて、変化の後の状況がどうなのかをリアルに本人にイメージしてもらうことが重要です。
そして、変化に対する不安や不満について何が原因なのかを内省し、吐き出してもらう必要があります。これは日常の業務を遂行しながら、本人に考えてもらうということは難しいので、1日もしくは2日、同じ状況の社員同士が本音で話せる場を研修やワークショップとして設定することが有効です。
これから起こりうる変化について考えてもらう際に、変化にはマイナス面だけではなく、メリットもあるという観点を持ってもらうことが重要です。処遇が低くなる、役職が外れるといったマイナスの面以外に、1プレイヤーとして裁量性を持って自身の専門性を高めることができる可能性もあるわけです。
また、長期的な視点でこれからのキャリアを考えてもらうこともポイントです。シニア社員の成長意欲が課題となっていますが、新しいことに挑戦し、それを活用する機会がないと思ってしまえば、成長しようという意欲はなくなってしまいます。「人生100年時代」といわれる今は、本人の意欲と能力があれば定年後も働き続けることは可能なわけです。これから活躍できる場を、今の会社に限定する必要はなく、もっと長期的な視点を持ってもらうことが重要です。
(『月刊 人事マネジメント』2022年2月号 HR Short Message より)
シニア社員のモチベーションを高めるための施策には、キャリアデザイン研修や人事評価制度の改定など、人事領域の専門知識が求められるものも少なくありません。当社はミドルシニアの人材育成・組織開発のパイオニア企業として、シニア社員の活性化を支援しています。未来志向のキャリア設計を促す「年代別キャリアデザイン研修」や各種制度コンサルティングが可能です。シニア社員のモチベーション低下に課題をお持ちの際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。
大手金融機関に入社。同社にて新規コールセンターの立ち上げのプロジェクトに携わるとともに、主に教育・研修等の企画、推進を10年あまり手がける。その後、株式会社ライトマネジメントジャパン(現マンパワーグループ)に入社し、人事制度のコンサルティングに一貫して従事している。人事制度の構築といったハード的な側面のコンサルテーションに加えて年代別のキャリアデザイン研修や上司向け部下のキャリア開発支援セミナー、新入社員研修、チェンジマネジメント研修、評価者研修といったソフト面の施策企画や実施にも幅広く携わる。
近年では低業績者に対する意識改革トレーニングや活性化のためのスキーム構築など未だ確立されていないテーマにも従事。また、クライアントニーズに合わせた研修コンテンツの作成に加えて、講師として実務に即した多岐にわたるテーマでセミナーも多数開催している。大手から中小企業まで幅広いクライアントに対するコンサルティング実績を持つ。豊富な経験にもとづいた制度面、運用面、トレーニング面からの体系的なアプローチには定評がある。