保有資格:社会保険労務士、AFP、FP技能検定2級
大学卒業後、大手金融機関にて人材育成に携わり当社入社。制度面、運用面、トレーニング面からの体系的なアプローチで幅広いコンサルティング実績がある。人事制度構築、キャリアデザイン研修、上司向け部下のキャリア開発支援研修、チェンジマネジメント研修、評価者研修等に携わる。

企業が市場動向に対応しながら成長・変化を続ける一方で、数年前に構築した人事制度の運用を続けていると、制度が形骸化し、従業員のエンゲージメント低下や離職率の上昇などの問題を引き起こしてしまいます。こうした事態を防ぐためには、人事制度の運用状況を確認したうえで適宜改定しなければなりません。特に近年は、企業が責任を持って従業員のキャリア開発を支援する流れを踏まえた人事制度の見直しも必要とされています。
本記事では、人事制度コンサルタントの淺原が、長年のコンサルティング実績とキャリア開発支援分野の経験・知見を踏まえて、今の時代に求められる人事制度のあるべき姿を解説します。

――淺原さんは、どのようなコンサルティング領域を得意としているのでしょうか。
最も得意とする領域は、人事制度コンサルティングです。中途で入社して以来ずっと携わっており、これまでに約200社の支援をしてまいりました。
キャリア開発支援のコンサルティングや研修講師としても、15年以上の実績があります。前職の大手金融機関でコールセンターを統括する部署に所属しており、そこで教育研修の企画・推進を担当していた経験も活きていると思います。
――クライアントからよく受けるご相談内容を教えてください。
人事制度の運用に関するご相談が多いですね。新規のクライアントからは、「かなり昔につくった制度が現状に合わず、制度のマイナーチェンジや運用でリカバーしようにもうまくできない」と、限界を感じたタイミングでご相談いただく傾向が強いです。
継続して私を指名してくださるクライアントも多いです。コンサルティング実施後の運用フォローのみならず、制度設計以外の人事コンサルティング領域に関する意見も求められます。

――クライアントからの厚い信頼を寄せられるコンサルタントであり続けるために、どんなことを大切にされていますか。
「精緻に制度設計をする論理的思考力」と「相手の立場や気持ちに寄り添う共感力」の両方を統合して解決策を提示すること。そのうえで、既存のフレームワークや特別なソリューションに頼り切りにならず、毎回自分で考えてクライアントの期待を上回る価値提供をすることです。
人事制度コンサルティングの場面で絞ると、インタビューや組織サーベイを踏まえてクライアントにとって最適な設計・運用を実現し、組織と従業員のwin-winを実現するために尽力することも挙げられますね。
私自身が頼りにされたら期待に応えたい性分なこともあって、 クライアントの立場に立って想いを汲み取ることは特に大事な要素だと捉えています。その結果として、数々のクライアントから高い評価をいただき、継続的に関係を構築できているという側面はあるかもしれませんね。
――これまで担当した人事制度コンサルティングの中で、特に印象に残っている事例をお聞かせください。
阪急阪神東宝グループで不動産賃貸関連事業や飲食・サービス関連事業などを手掛けるオーエス株式会社様の事例ですね。シニア向け人事制度改定と人事ポリシー策定に取り組む過程でキャリア開発の必要性が明らかになり、当初のご依頼にはなかったのですがキャリア開発も支援いたしました。
――どのような経緯で、キャリア開発の必要性が明らかになったのでしょうか。
きっかけは、人事ポリシー策定に向けた情報収集のために実施した社員インタビューでした。インタビューでは「自分のキャリアパスを描くのが難しい」「他部署の業務内容が分からないので、もし異動した場合に活躍できるか不安」「自分自身の強みがよく分からない」といった声が複数あがりました。加えて、人事のご担当者様からはエンゲージメントサーベイの数値が低いことも伺っていましたので、エンゲージメントを高める意味でも会社主導のキャリア開発支援はぜひとも実行すべき施策だと考えたのです。
オーエス様の場合、従業員数が100名ほどである影響もあってジョブローテーションを頻繁にできない一方で、社内には「ジョブローテーションによって社員のキャリア開発を実現させる」という考え方が根強く残っていました。こうした状況がキャリアパスを描こうにも閉塞感や不安を感じてしまう社員の声に繋がったのではないかと仮説を立てて人事ポリシー策定に加えてキャリア開発支援を追加提案し、先方にご承諾いただきました。
――オーエス様で実施したキャリア開発支援の反響はいかがでしたか。
受講者からは「普段、関わりがある方でも自分のキャリアについて話す機会はなかった。今後のキャリアについて色々な考え方を知ることができた」など、概ね好評の声をいただきました。
人事ご担当者の方は研修実施後に、「キャリアについて社員同士が前向きに話し合う場になって良かった」とおっしゃっていました。今までキャリアについて考える機会がほとんどなかった社員の皆様が、どこまで自分事として研修に取り組んでくれるか不安に思っていたのだそうです。オーエス様にとって新たな取り組みとなったキャリア開発の施策が、社員の活性化やエンゲージメント向上のきっかけになったと実感できて嬉しかったです。

―― コンサルティングの過程で クライアントの実情を深く理解した結果、対象範囲がキャリア開発にまで広がった事例は、確かに印象に残りますね。
個人的に、ここ数年で人事制度設計とキャリア開発の両方を一気通貫で支援するコンサルティングの必要性を強く感じていることもあって印象深い事例です。
ご支援の序盤で人事ポリシー策定という上流工程にも関わって人事部門の方針や今後の方向性を理解してからキャリア開発支援に入れたことで、より質の高いコンサルティングの提供にもつながりました。
――人事制度設計とキャリア開発を一気通貫で支援するコンサルティングの必要性を強く感じている理由を、詳しく伺いたいです。
両方の施策の目的は、突き詰めると経営目標の達成です。具体的に「エンゲージメントの向上」「従業員の主体性・自律性強化と、それを基盤とする組織活性化の実現」とも言い換えられます。
ですから、全社的に経営目標の達成を目指すならば、ハード面(人事制度)とソフト面(キャリア開発)を分断させず、うまく融合させた施策を実行して相乗効果をもたせるほうがより自然ではないかと考えるようになりました。

――人事制度設計とキャリア開発を両軸で進める意義やメリットは何でしょうか。
まず会社・組織の視点で言うと、離職防止やエンゲージメント向上といった、経営目標達成に向けて組織力を高めるような変化が現れることが言えるでしょう。
一般職や若手にとっては、「自分はこの会社で成長できる」「仕事を通して自分が目指すキャリアを実現できる」といった気づきを得られるメリットが大きいと感じます。会社から与えられた目標が自身のキャリアに繋がることが明確になり、より高い意欲で仕事に向き合えるようになります。
さらに、管理職や部下を持つ上司・リーダーにとっては、部下のキャリア開発支援における対話品質の向上が期待できます。評価の根拠や今後の役割期待について、人事制度の基準と部下本人のキャリア希望の両面から擦り合わせられるようになります。
―― これまでのコンサルティング経験を踏まえて、人事制度とキャリア開発を融合した施策を成功させる秘訣を教えてください。
実務的な面で言うと「この制度変更は従業員の感情にどう響くか」「この研修効果を持続させるために制度をどう修正すべきか」という、ハードとソフトの相互作用を常に計算して設計することです。
さらに個人的には、特に重要な秘訣として「適切な期待(人事制度)と支援(キャリア開発)があれば、人は必ず期待に応えようとする」という性善説に基づいて従業員を信頼するスタンスを持って臨むことも挙げたいです。私だけでなくクライアント側もこのスタンスでいてくださると、よりよい成果に結びつけやすくなると感じています。
――最後に、人事制度設計とその運用に悩む人事部門の方々に向けてメッセージをお願いします。
企業における業務のAI化が加速する一方で、人が働く意味(Will)は今後ますます問われるでしょう。ですから私は、一人ひとりが「自分はこの組織でこれを成し遂げたい」という貢献実感を持てる状態を作れるよう、引き続き尽力してまいります。人事制度設計や運用、キャリア開発でお困りのことがありましたら、ぜひ私にご相談ください。
