2022/10/27再就職で迷ったときの処方箋「ディンクレッジの意思決定」とは?(後編)
再就職に向け、活動の準備をしている方も多いのではないでしょうか。しかし、キャリアを重ねてからの再就職は、心理的なハードルが上がるのも事実です。なかには「自分に適した仕事が分からない」「どのように就職活動を進めればいいか迷っている」という状況に陥り、最初の一歩を踏み出せずにいる方もいるかもしれません。
そんな方の心強い指針になってくれる、ひとつのキャリア理論があります。それが「ディンクレッジの意思決定」です。
前編ではディンクレッジの意思決定についてひもとき、後編では再就職活動の中でスムーズに意思決定するためのポイントを紹介します。セカンドキャリアの充実に向けて有意義な選択ができるよう、本稿が一助となれば幸いです。
再就職で迷ったときの処方箋「ディンクレッジの意思決定」とは?(前編)
再就職の意思決定に必要な「7つの段階」とは?
ディンクレッジの「8つのスタイル」のうち"計画型"の人は、「7つの段階」に沿って納得感のある意思決定をしやすいといわれています。7つの段階とは、具体的にどのような行動のことを指すのでしょうか。
本章では、再就職活動の求人探しに当てはめた際の「7つの段階」について解説します。
再就職先を選ぶ際の考え方や意思決定のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
(1)決定事項の明確化
最初のステップは、「何について意思決定すべきか」を明確にすることです。例えば、再就職の求人探しにおいては、今後のキャリアビジョンや企業選びの指針、利用する求人サービス、具体的な応募先などについて決めます。再就職活動で成し遂げたいゴールを明確にしたうえで、スケジュールと行動計画を立てるようにしましょう。
ちなみに行動計画を立てる際、役に立つのが「シュロスバーグの4Sモデル」というキャリア理論です。当理論は、再就職のような人生の転機に直面した際、自分の持っている「リソース」を入念に点検するよう説いています。具体的には、頼れる友人や知人、自分にとってのキーパーソン、得られそうな援助の種類などを最初に確認しておくことが大切です。事前に自身の状況を客観的に整理しておくことで、より現実的な戦略を立てられます。
シュロスバーグの4Sモデルについて詳しく知りたい方は、「キャリア上の転機をどう乗り越える?「シュロスバーグの4Sモデル」の活用法とは」の記事もあわせてお読みください。
(2)情報収集
続いては、意思決定に役立つ情報を幅広く収集する段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、求人情報や業界・市場の動向、書類選考や面接に役立つノウハウといった網羅的な情報を集めます。その際、どのような情報が役に立つかは分かりません。人材サービスを活用するだけでなく、SNSやインターネットからも情報を集めるようにしましょう。
また、再就職の情報収集をする際は、普段あまり話さないような人から話を聞くことも大切です。自分とは違う価値観や経験を持った人の方が、自分にとって新鮮で有益な情報を授けてくれることもあります(これを「弱い紐帯(ちゅうたい)の強み」といいます)。だからこそ、親や友人以外の人からも、アドバイスを受けることが重要でしょう。
(3)選択肢の明確化
次は数ある情報のなかから、選択肢をいくつかに絞る段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、人に紹介された職場や自分の探し出した求人のなかから、候補となる応募先を数社に定めます。このとき、自分のWILL(好きなこと)、CAN(できること)、MUST(期待されていること)を念頭に置いておくと、選択肢も決めやすくなるでしょう。
(4)根拠の評価
選択肢を絞ったら、それらのなかからひとつを選び出すための「根拠となる情報」をそろえる段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、それぞれの求人について企業の安定性や事業の成長性、仕事としての将来性、年収や福利厚生の満足感などに関する根拠を集めます。これらの判断材料を用意したうえで、応募した際のメリットやデメリットを整理しましょう。
このとき、人は自身の経験や価値観をもとに、偏った判断をしてしまうことも少なくありません。これを「認知バイアス」といいます。例えば、ある選択肢にだけ都合の良い情報を集めてしまう「確証バイアス」、先に与えられた情報に引きずられて正常な判断ができなくなる「アンカリング効果」があります。こうした認知バイアスを防ぐには、他人からアドバイスをもらうことが重要です。自分の思い込みや思考のクセに気づき、合理的な判断ができるようになるでしょう。
(5)選択肢のなかから最終選択
根拠となる情報をもとに、最終的な選択肢を選ぶ段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、自分の応募すべき求人を確定します。再就職活動で成し遂げたいゴールを整理しておくと、納得感のある道を選びやすいでしょう。
(6)行動
選択肢を選んだら、それに基づいて実際に行動する段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、選んだ求人へ応募します。
このとき、「本当にこの選択で正しいのだろうか」と迷うこともあるかもしれません。その際、意識してほしいのが「計画的偶発性理論」です。当理論は、キャリア形成におけるほとんどのターニングポイントは、偶然な出来事に左右されると説いています。つまり、偶然応募した企業から予期せぬ魅力的なキャリアが生まれる可能性は大いにあるのです。たとえ不安でも思いきって行動してみる姿勢は、キャリアの充実のために欠かせません。
計画的偶発性理論について詳しく知りたい方は、「計画的偶発性理論とは?再就職を考えた際の計画的偶発性理論の生かし方」の記事もあわせてお読みください。
(7)決定と結果の検討
最後は、行動して得られた結果を分析し、今後の行動について検討する段階です。例えば、再就職の求人探しにおいては、一連の再就職活動の結果を整理して、入社先を決定します。納得のいく結果ではなかった場合は、選考での評価を踏まえて次の行動の計画を立てます。
ちなみに再就職が決まったあとにも、キャリアを一層充実させるためにスキルアップに取り組む姿勢が大切です。というのも、人生100年時代といわれる今では、今後いつキャリアの再選択が必要になり、新たな意思決定が問われるかは分かりません。そのときになって困らないよう、積極的に学び直しに取り組むことをおすすめします。
学び直しの具体的な手法について詳しく知りたい方は、「学び直しは年齢を重ねるほど有利?結晶性知能を生かしたスキルアップの始め方」の記事もあわせてお読みください。
まとめ
早期退職するかどうかなど方向性に迷った際には、ディンクレッジの「7つの段階」を意識して、計画的に意思決定することが大切です。一つひとつのプロセスを経ながら方向性を決めることで、より納得感のあるキャリアを歩むことができるでしょう。
しかし、「自分だけで新しいキャリアを決めるのは不安」という方も多いはずです。ひとりだけで再就職活動を進めていると、「どのような求人が自分に向いているのだろう」「どのように就職先の情報を得ればいいのだろう」という迷いに直面してしまうことも多々あります。
ライトマネジメントでは、早期退職するかどうか悩んでいる方へのキャリア相談や再就職支援サービスを利用する方への求人案件の開拓・紹介や各種セミナーなどを一貫してサポートしています。キャリアコンサルティングではさまざまな意思決定の場面において、最適なアドバイスもご提供できます。再就職活動に臨まれる際には、ぜひ一度ライトマネジメントまでご相談ください。