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2024/06/1760代以降(定年後)の働き方は?収支の「見える化」で老後の選択肢を増やそう!

現在、日本では定年の見直しが進んでおり、20254月からは「65歳までの定年引き上げ」や「65歳までの継続雇用制度の導入」が義務化されます。少子高齢化に伴い労働人口が減少するなか、定年は延長傾向にあり、     また定年後も続けて働きたいというシニアの労働者も増えている傾向です。

しかし、60代以降は、働く目的が変わったり、また体力面でも現役時代とは変わったりと変化が多い時期であるため     ご自身にあった働き方を新たに探したいという方も多いのではないでしょうか。定年後でも納得できる働き方を選ぶためには、収支について十分考えておく必要があります。収支を見える化(可視化)して、必要な資金を明確にしておくことで、収入面でも自己実現の面でも安心できるキャリアを築けるようになります。

本記事では、シニア世代が定年後も働きたいと考える理由や収支を「見える化」する方法、働き方の選択肢について幅広く紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

定年後も働きたいシニアは多い!

内閣府が公表している全国の60歳以上の男女を対象にした調査では、65歳以降も収入を伴う仕事をしたいと考えている人は全体の59%でした。

同調査では、「何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか」との質問に対し「65歳くらいまで」と回答した人の割合が 25.6%で最も多いものの、「70歳くらいまで」が21.7%、「75歳くらいまで」が11.9%、「80歳くらいまで」が4.8%、「働けるうちはいつまでも」が20.6%となっています。一方、「仕事をしたいとは思わない」と回答した人は13.6%でした。同調査から、60歳以降も働きながら収入を得たいと考えている方は多いことが伺えます。

しかし、厚生労働省により2022年に実施された調査では、定年を60歳とする企業は72.3%、65歳とする企業は21.1%となっています。現状では、実際の定年よりも長く働きたいと考えている人が多いといえそうです。

参考:令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果(概要版)|内閣府

参考:令和4年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

定年後も働きたいと思う理由とは

60歳以上の人が定年後も働きたいと思う理由はどのようなものなのでしょう。

60歳以上男女を対象にした「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、現在収入のある仕事をしている人の主な理由は次のとおりです。

・収入がほしいから 45.4%

・働くのは体によいから、老化を防ぐから 23.5%

・仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから 21.9%

・仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから 4.4%

同調査では、収入がほしいという理由を挙げている人が最多となっています。しかしその後には、健康維持の効果を期待したり知的能力や経験を生かしたりすること、そして仕事を通じた人間関係の構築などといった理由が続きます。これらの自己実現的な理由を合わせると全部で「49.8%」となり、「収入がほしい」を超える割合になります。

収入は働き続けるための大きな理由ではありますが、自己実現に関わる理由も人生を豊かにするためには非常に重要でしょう。必要な収入を確保しつつも、自己実現や働きがいといった目的を充実させていくことが、豊かな老後につながるといえます。 

定年後の収入の実態

定年後に働きたい理由として「収入がほしいから」と回答した方も多く、定年後の収入がどのようになるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。そこでここでは、定年後の収入についての実態をご紹介します。

1.年金問題

少子高齢化により年金受給者の比率が増えるなか、公的年金の運用状況が悪化しています。今後も少子高齢化は進むことが予測され、年金保険料の引き上げと年金給付金の引き下げの両方の対処が予想されます。

年金給付金の引き下げや年金の支給開始年齢の引き上げが実施されれば、老後は年金以外の方法で収入を確保しなければなりません。

2.退職金の減少

退職金で老後資金をまかないたいと考えている方も少なくないでしょう。「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合は 74.9%で、すべての企業が制度を完備しているわけではありません。

また、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると退職給付(一時金・年金)制度における形態別の定年退職者1人平均退職給付額(2023年度)は、大学・大学院卒では前回調査の2018年から下がっているのが実情です。

2003年の調査では勤続 20 年以上かつ 45 歳以上の定年退職者2,499万円となっていますが、5年ごとの調査で減少していることがわかります。なお、2023年の調査では1,896万円で、過去20年で約600万円減少していることになります。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

3.晩婚化の進行

近年は晩婚化により、出産時の年齢も高齢化が進んでいるのが実情です。厚生労働省の調査によると、2022年の平均初婚年齢は夫 が31.1 歳、妻は 29.7 歳でした。前年の平均初婚年齢は夫が31.0歳、妻が29.5歳で、年々少しずつ上昇しています。

初婚年齢の上昇に伴い、第1子出生時の平均年齢も上昇傾向です。高齢になって子どもの高校・大学進学に伴う教育費が発生するケースが増えることも想定されます。

参考:令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

収支の「見える化」で自分に合った働き方を!

定年後は、目的に応じた働き方を選択したいものです。しかし、収入面で不安があると金銭的報酬を最優先に働き方を決めてしまうかもしれません。そのような事態を避けるために、60代以降の収支をシミュレーションしてみることがおすすめします。収支を「見える化」することで必要な収入がわかります。そのため収入と収入以外の目的、双方のバランスをとった働き方を選択しやすくなります。

具体的には、以下のように5年ごとの収支を想定し、数字を記入していく方法があります。

月間収支.jpg

予想した数字を記入したら、支出を合計して、①の「月間支出」を記入します。そこから現在の給与や年金を合計し、②の「月間収入」を記入してください。

−①」をすれば、収支の予測が立つため、今後どの程度収入を上乗せするとよいのかが推測できます。

上記表の活用する際の参考として2022年の家計調査報告から、65歳以上の夫婦高齢者無職世帯の月当たりの平均支出を紹介します。

消費支出.jpg

上記の合計額は約23.6万円です。また上記のほか、税金や社会保険料などの「非消費支出」の支出額は平均31,812円です。「消費支出+非消費支出合計」は268,508円。つまり、統計上の平均でおよそ26.8万円の月収が必要となっています。支出のイメージがつかみにくい方は、このように統計上の数字を参考に見える化してみても良いでしょう。

参考:家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要|総務省統計局

定年後におけるキャリアの選択肢    

「見える化」のワークで見えた収支を参考にすることで、必要な収入を確保しつつご自身の目的にあったキャリアが選択できることでしょう。具体的にどのようなキャリアがあるのか、代表的な4つの選択肢を紹介します。

再就職

再就職とは、勤務していた会社を退職し、別の会社へ就職する方法です。これまでとは異なる分野で再就職するケースが多く、新しい仕事にチャレンジできます。正社員での再就職を目指すだけではなく、パートやアルバイトなどの雇用形態も選択肢となります。必要な収入や体力などに応じて雇用形態を選択するといいでしょう。

60歳から再就職を成功させるポイントについては、下記記事を参考にしてみてください。

60歳からの再就職成功させるポイント

再雇用

再雇用とは、勤務していた会社を退職した後、同じ会社に雇用してもらう方法です。これまでのキャリアを生かせるだけでなく、職場環境が変わらないため、働きやすいことがメリットといえます。ただし、給与が下がることや、同じ会社に所属しても別の部署や子会社へ配属になることもあります。再雇用の条件をよく確認し、納得できる水準かどうか判断しましょう。

再就職と再雇用どちらか迷う場合は、下記の記事も参考になるでしょう。

定年後は「再就職」と「再雇用」、どちらを選ぶべき?仕事の探し方も紹介!

シニア起業

収入面を支える手段として「シニア起業」も選択肢の一つです。シニア起業とは定年前後のシニア世代で起業することをいいます。シニア起業は、これまでの経験や人脈を生かして働けることがメリットです。また、定年がないため、ご自身の判断で何歳まででも働けます。

ただし、起業は失敗することもあり、再就職や再雇用のように安定した収入を得られるとは限りません。起業を成功させるには初期費用を抑えることでリスクを減らし、入念な事業計画を立てておくことが大切です。

社会貢献

収支の見える化ですでに収支が見合っている場合は、社会貢献という道も一つの選択肢です。身近なところでは、自治会や地域ボランティアなどの地域貢献が挙げられます。子どもの通学見守りや学習支援、防災訓練への参加など、さまざまな方法で地域貢献している方も多いでしょう。

また、これまでの経験や知識を活かして、非営利団体で活動する方法もあります。海外からの留学生受け入れや発展途上国における支援活動など、活動を通じて社会貢献を実現できます。

本記事では、代表的なキャリアのみをご紹介しましたが、キャリアの選択肢はご紹介した4つにとどまりません。副業や兼業など、複数の選択肢を組み合わせることも可能です。多様な働き方からぜひご自身のご希望にあうものを見つけてみてください。

収支を正しく把握して最適な働き方を見つけよう

政府が実施している調査から、定年後も働きたいシニアは多いことがわかります。働きたい理由は、定年後の収入を確保することや自己実現のためなどさまざまです。また、定年の引き上げをはじめとした世の中の動きとしても、今後働く期間は長くなる傾向にあります。これに伴い、個々にとっての最適な働き方も多様化していくでしょう。

どのような理由にせよ、ご自身にあった働き方を見つけるためには、定年後の生活を具体的にイメージすることが重要です。収支を見える化することで、金銭的報酬以外の目的も考慮しやすくなるでしょう。

老後も生活を安定させながら充実した人生を送るために、現在の収支を正しく把握・管理したうえで、最適な働き方を見つけましょう。

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