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2022/05/23キャリア上の転機をどう乗り越える?「シュロスバーグの4Sモデル」の活用法とは

10179019254.jpg「事業撤退によって、社内で希望退職の募集が始まった」
「今後の人生を見据え、早期退職制度を利用し退職すべきか迷っている」――。

こうしたキャリア上の"転機"に直面し、不安や葛藤を抱えている方もいると思います。社会が非常に不安定な今、突然キャリアの変更を迫られ、迷っている人は決して少なくありません。

実はこのように転機を迎えた方に対して、大いに力になってくれるキャリア理論があります。それが、「シュロスバーグの4Sモデル」と呼ばれる理論です。このモデルを活用することで、現状を冷静に分析でき、新たなキャリアに向けて自信を持って再出発できるようになります。

そこで本稿では、「シュロスバーグの4Sモデル」をキャリア上の"転機"で活用する方法について、分かりやすく解説します。転機をチャンスに変えるために、本稿が一助となれば幸いです。

「シュロスバーグの4Sモデル」とは?

「シュロスバーグの4Sモデル」とは、アメリカの心理学者ナンシー・シュロスバーグによって提唱された、成人のキャリア形成に関する理論のことです。シュロスバーグは、失業や転職、結婚、離別といった人生のさまざまな出来事を「転機(トランジション)」と呼び、それらを乗り越えるための方法を体系的に解説しています。

当理論の特徴は、転機を努力によって乗り越える過程で、キャリアが形成されていくと主張している点です。転機を乗り越える際には、自分のリソース(資源)である「Situation(状況)」「Self(自己)」「Support(支援)」「Strategies(戦略)」を点検すべきとも説いており、4つの頭文字をとって「4Sモデル」と呼ばれています。

転機を乗り越えるための「3ステップ」とは?

シュロスバーグは「4Sモデル」のなかで、転機を乗り越えるための方法を3ステップで説明しています。
本章では、3つのステップそれぞれにおいて、取るべき行動を紹介します。

1)転機のタイプを見定める

転機を乗り越えるためには、今直面している転機がどのようなタイプのものなのかを把握することが先決です。

これに関して、シュロスバーグは転機を「イベント」と「ノンイベント」の2種類で見定めるよう説いています。イベントとは、「予期したとおり起こったこと(就職、引っ越し、結婚など)」と「予期していないのに起こったこと(失業、病気など)」です。一方のノンイベントは、「予期したのに起こらなかったこと(希望していた会社に就職できなかった、昇格できなかった、など)」を指します。まずはこうした転機のタイプを明らかにすることがスタートラインです。

そのうえで、自分が今、転機の「始まり」「最中」「終わり」のどこにいるのかを考えます。「始まり」は喪失感を覚えて否認している状態、「最中」は空虚を感じて混乱している状態、「終わり」は嘆きつつ受容している状態です。こうして転機の状況と自分の感情を客観的に把握することで、冷静に次の行動を決められるようになります。

2)「4S」のリソースを点検・整理する

続いては、自分が現時点でどのような強みや人脈を持っているのかを整理し、「転機との向き合い方」を明らかにするフェーズです。シュロスバーグは、ここで自分の持っている4つのリソース(状況・自己・支援・戦略)をひとつずつ点検するよう説いています(※4Sで点検すべき内容については、次章で詳しく紹介します)。自分が使えるリソースを入念に整理し、逆に足りないものを見極めることで、転機の最適な乗り越え方を考えることができるのです。

3)転機を受け止め、行動する

自分が使えるリソースを整理したあとは、転機を受け止めたうえで実際の行動に移します。希望退職を例に挙げれば、「転機に抗うため、今の会社にとどまれるよう人事に相談してみる」「逆に転機を受容し、知人を頼って転職先を探す」など、人によって選択はさまざまです。4Sのなかに不足しているリソースがあれば、補う努力も欠かせません。このように、冷静に自己分析してから転機に向き合うことで、有意義な意思決定ができるようになります。

現状分析に欠かせない「4S」とは?

シュロスバーグは、自分のリソース「4S」を点検したうえで、転機を乗り切るために利用するよう説いています。

本章では、4Sそれぞれで点検すべき内容をチェックリスト形式で紹介します。また「希望退職の募集が始まった」という転機を例に挙げて点検のサンプルも紹介しますので、ご自身の状況に当てはめて考えてみてください。

1)状況(Situation

□ 原因:どのようなことが引き金になって起こったイベントなのか
□ 予期:社会や周囲の状況から判断して、予期できるイベントだったのか
□ 期間:イベントは一時的なものなのか、しばらく続くものなのか
□ 経験:過去に同じようなイベントを経験したことがあるか、その際どのように感じたのか
□ ストレス:現在のイベント以外でどのようなストレスを抱えているのか
□ 認知:現在のイベントをどのように受け止めているのか(好機なのか、危機なのか)

<例>
■ 原因:市場に大手企業が参入し、自社の経営状況が悪くなったことが原因だろう
■ 予期:自社の業績を確認しておけば、予期できたイベントだったかもしれない
■ 期間:自社の業績は回復の目途が立っていないため、希望退職は今後も複数回にわたって募集されそう
■ ストレス:今後IT化の流れで、自分のスキルが陳腐化しないかやや不安である
■ 認知:業務がマンネリ化してきた感覚があっため、希望退職は挑戦の好機とも考えている

2)自己(Self

□ 仕事の重要性:今の仕事をどれくらい重視しているか(職位や給与など、何に高い関心があるのか)
□ 仕事と他のバランス:私生活(家庭や趣味など)と仕事のバランスをどのように取りたいのか
□ 変化への対応:イベントによる変化とどう向き合いたいのか(受け入れるのか、抵抗するのか)
□ 自信:自分に対して自信を持っているか
□ 人生の意義:自分の人生に対して、どのような意義を感じているのか

<例>
■ 仕事の重要性:給与や福利厚生には、ある程度満足している。一方でやりがいや充実感はもっと得たい
■ 仕事と他のバランス:妻と二人暮らしなので、週末に妻と過ごす余裕があればいい
■ 変化への対応:不安はあるものの、できれば変化を受容して新たな挑戦に取り組みたい
■ 自信:経理財務の経験が20年あり、管理職も務めたことがある。経理分野でのスキルには自信がある
■ 人生の意義:仕事を通じて人や社会の役に立つことが、人生の意義だと感じている

3)支援(Support

□ 人間関係:友人や家族から必要な援助を受けられるか
□ 励まし:自分の挑戦や成功を励ましてくれる人はいるか
□ 情報:仕事や企業、転職市場、雇用などに関する情報を提供してくれる人はいるか
□ 照会:解雇された際の経済的な支援制度について、説明してくれる人はいるか
□ キーパーソン:自分にとって重要な情報を提供してくれる人物はいるか
□ 実質的な援助:経済的に必要な援助を受けられそうか

<例>
■ 人間関係:同世代の友人が他社で希望退職へ応募し、再転職を成功させたため、詳しい話を聞けそう
■ 励まし:妻は挑戦に寛容で、いつも自分の仕事を応援してくれている
■ 情報:過去の転職でお世話になった転職エージェントに相談できるかもしれない
■ 照会:希望退職の優遇条件については、上司や人事から詳しく話を聞きたい
■ キーパーソン:今のところ思い当たらないため、新たに相談相手を探す必要がある
■ 実質的な援助:貯金に少し余裕があるため、半年間程度は援助なしでも諸所の活動を進められそう

4)戦略(Strategies

□ 状況を変える対応:仕事探しや、新たなスキルの習得に向けたトレーニングを進めているか
□ 認知を変える対応:転機の持つ意味をポジティブにとらえようとしているか
□ ストレスを解消する対応:運動やリラクゼーションなどを通じてストレスを解消しているか

<例>
■ 状況を変える対応:仕事探しはまだだが、ITリテラシーを学ぶための短期講座に通うことを検討している
■ 認知を変える対応:「希望退職=セカンドキャリアを充実させるチャンス」ととらえ、挑戦を考えている
■ ストレスを解消する対応:週末にゴルフをしたり、妻と日帰り旅行をしたりして、疲れを癒やしている

キャリア上の"転機"を乗り越えるポイントとは?

「シュロスバーグの4Sモデル」をより効果的に活用するために、意識すべきことがいくつかあります。
本章では、「シュロスバーグの4Sモデル」で転機を乗り越える際に心がけるべき4つのポイントを紹介します。

1)認知バイアスに惑わされない

認知バイアスとは、自分の都合がよい情報や興味がある情報だけを集めてしまい、結果的に不合理な判断をしてしまうことをいいます。例えば、求人探しの際に「シニアの仕事は介護、警備、清掃くらいしかない」と決めつけたり、「自分に見合う求人はほとんど見つからない」と諦めたりする人も少なくありません。しかし、実は見聞きしたことのない企業や条件に適合しない求人を、無意識のうちに除外してしまっているケースも多いのです。

こうした認知バイアスに気づくことが、正しいキャリアを選択するための第一歩です。判断に迷ったときには、「本当に自分の考えは正しいだろうか」と自問自答したり、第三者に客観的なアドバイスをもらったりすることが重要と言えます。認知バイアスを意識的に排除すれば、進路の選択肢が増え、機会損失も少なくなるでしょう。

2)「弱い結びつき」を大切にする

アメリカの社会学者グラノベッター博士が提唱した理論に、「弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ」があります。

これは、友人や家族といった「結びつきの強い人たち」よりも、普段あまり話さないような知人をはじめ「結びつきの弱い人たち」の方が、有益で価値の高い情報をもたらしてくれる可能性が高いという仮説です。というのも、結びつきの強い家族や友人は、自分と同じような価値観を持っており、生活している文化圏も似ています。結果的に持っている情報も自分と似通うことが多いのです。一方で自分が普段関わらないような人たちは、自分とは異なる文化圏で多種多様な価値観を持って生きているため、情報の新規性も高くなりやすい傾向にあります。

転機を乗り越えるにあたっても、ときには友人や家族より、縁遠い人たちにアドバイスを求めることが大切です。例えば、SNSで異なる年代・職種の人とつながったり、人脈を頼って友人の知人を紹介してもらったりという方法があります。こうした「弱い結びつき」から気付きを得ることで、意外な活路を見いだせることもあるでしょう。

3)リスキリングも視野に入れる

リスキリングとは、時代の変化によって発生するであろう業務に対応すべく、新たなスキルを習得することです。

特に近年はDX(デジタル・トランスフォーメーション)が活発化しており、多くの企業がITツールを導入したり、業務をAIに置き換えたりしている状況です。そのため、人材一人ひとりのスキルも陳腐化しやすい時代といわれています。だからこそ、キャリア上の転機を乗り越えるにあたって不足しているスキルがある場合は、リスキリングを検討することも大切です。例えば、キャリアスクールや研修、地域活動などに参加して新たな経験を積むのもよいでしょう。学び直しでスキルを習得すれば、より自信を持って転機に対処できるようになります。

4)「3つのシステム」を活用する

シュロスバーグは「4Sモデル」の理論のなかで、「3つのシステム」の重要性についても触れています。3つのシステムとは、「転機を支援する公的機関・民間団体」、「経済的資源」、「支援してくれる人間関係」のことです。

1つ目の公的機関・民間団体は、ハローワークや転職エージェント、再就職支援会社などのことを指します。こうした人材サービスを活用すれば、キャリアの専門家であるコンサルタントに相談に乗ってもらうことも可能です。ほとんどのコンサルタントは、キャリア理論や市場の動向に関する情報など、豊富な知見を備えています。ひとりで悩むより、専門家に相談相手になってもらう方が心強いのは間違いありません。そのため、複数の人材サービスを活用することも、転機を乗り越えるカギと言えるでしょう。

ひとりで悩まずに、再就職支援会社へ相談を

キャリア上の転機を乗り越えるためには、「4Sモデル」を活用し、現状を冷静に分析することが大切です。「状況」「自己」「支援」「戦略」に当てはめ、今直面している転機を客観的に見つめてみることをおすすめします。

しかし、ひとりで現状を分析しようとしても、これで正しいのだろうか、ほかにキャリアの選択肢はないだろうかと不安になる場面もあると思います。また、本当に早期退職・希望退職へ応募してもいいものだろうかと迷うこともあるでしょう。だからこそ、迷ったときにはぜひ、私たち再就職支援会社を頼っていただきたいのです。

ライトマネジメントでは、キャリア上の転機を迎える方々とキャリアコンサルティングを実施し、意思決定をサポートしています。早期退職や希望退職に関する悩みはもちろん、経済面の不安や職場の対人関係への不満など、どのようなことでも親身に相談に乗ります。今後のキャリアがより良いものになるよう、私たちがパートナーとしてお手伝いいたします。

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