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2024/03/1850代後半の再就職事例:40年以上離れていた地元へ介護Uターン

高齢化社会という背景の中で、介護ついては、実際にかかわっている、もしくはこれからかかわる可能性があるので気になっているという方が多い世の中になってきたように思います。私自身も一人で暮らしている高齢の母をサポートしていますし、ご相談者の方でも介護ありきで再就職を検討される方も増えているように感じます。 

そこで今回は、ご家族の介護を起点にUターンをしてセカンドキャリアを検討された方についての事例をご案内します。 50代後半の男性の事例です。

九州の地元を離れて関東において製造現場でご就業、豊富なご経験をお持ちでしたが、どうしても高齢のお母さまの介護をしたい気持ちが強く、40年ぶりにUターンすることを決意されました。 とはいえ収入確保のために働く必要もあり、再就職をしたいという希望もありました。どのように両立を考えたのか、現在一緒に暮らすご家族はどうするのか、そして40年ぶりとなる地元でどのように仕事を探したのかなど、具体的にご紹介します。 

40年ぶりのUターン、まず何から始める?   

「お母さまの介護をする」というのが最優先の事項でしたので、まずはご家族との話し合いを重ねて、当面ご家族は関東に残るということ、今回は単独でUターンをして自分で介護をしながら仕事をする、ということでご家族の了承を得ました。 

方向性は決定したものの、地元を離れて40年です。学生時代の友人とも連絡が途絶えていますし、これからの地元での生活基盤を整えること、また再就職活動をどのように進めていけばよいのか、など途方に暮れるほど不安要素が多いスタートでした。 

そこで、ただ漠然と不安を持ち続けるのではなく、具体的に一つ一つ一緒に解決していくことにしました。 

まずは、失業給付の問題(住民票が関東にあるため)と荒れ放題の実家のリフォームの問題を解決する必要があるとのことで、ハローワークへの問い合わせやシルバー人材センターなどをご案内し、具体的な解決策を一緒に模索していきました。 

また、地元に知り合いの方がほとんどおらず人脈もないとのことでしたので、自治会長や民生委員の方にご挨拶に行ってみることをお勧めしたところ、自治会長のご紹介で、早速元大工さんと知り合いになりました。シルバー人材センターの力を借り、またご本人と元大工さんの力でほぼご実家をリフォームでき、生活の基盤も整ってきたと伺いました。 

問題を解決していく中で、ご近所の方の知り合いも増えたり、町内会でなじむことができたり少しずつ人脈を増やしていったことにより土地になじんでいくことができました。 

Uターンして再就職、優先すべき条件は?   

そしていよいよ具体的に再就職活動を開始です。介護に必要な時間を確保するために再就職に必要な条件の洗い出しを始めるところから考えました。 

介護の時間を確保するためには、第一に勤務地が近く通勤時間がかからないことが条件です。関東では運転免許を必要としない生活をしており免許を持っていなかったため、徒歩もしくは自転車で通える範囲に絞り、地図を見ながら範囲内にある企業を探すという作業から始めました。幸いにも実家から5分圏内に宅配便の集配センターや食品工場、また経験のある製造業の工場を見つけることができました。 

当初はご経験のある業界の工場勤務も検討されていましたが、あえて未経験の業界の食品工場に応募をすることにしました。一見慣れた環境のほうがなじみやすく、働きやすいのでは?と思いますが、この方の最優先事項は「お母さまの介護」です。 

「経験のある仕事では、どうしても自分のプライドが捨てられず、きっと新しい職場では必要以上に期待に答えようとして、自分が今までと同じような働き方をしてしまうと思う。そうなると、母親の世話をするために帰ってきたのに、時間が取れず本末転倒になってしまう」 という判断でした。確かに未経験の業界であれば、知らないことが当たり前で新たな挑戦となり、それなりの苦労はありますが、心機一転、教えてもらう側の立場ともなるため、「やりすぎる」ということもなく、ある意味気持ちにゆとりも持てるのかもしれません。 

まさに今回の再就職にあたって、「何を最優先したいか?」を体現された選択でした。 

無かったはずの「Uターン先での人脈」で再就職決定 

履歴書・職務経歴書の作成も並行して続け、応募できるように準備を続けていく中でいよいよ具体的に応募という段階になりました。先に記載した食品工場への応募を検討していたところ、なんとUターンで知り合いになった自治会長の出身企業だったことが分かり、ご紹介いただくことになりました。地元に知り合いもいない中で生活基盤を固めようと、その過程で知り合った方に強力な支援をしていただけるという、思ってもみない展開です。人脈作りを重要と考えていたことがここで活きたとも言えます。 

ご紹介という有利な状況ではあるものの、これまで転職経験はなく初めての応募や面接ということでご不安も多く、面接当日に自信をもって臨めるように何度も面接の練習を実施しました。 

その成果もあり、面接は自信を持ってできたとのことで、面接担当者からは「自治会長から紹介された方なので安心感もあり、採用するつもりだったが、実際に会ってみたら書類の内容だけではなく面接での対応も大変しっかりされている方で、とても安心しました」 とのお言葉をいただいたそうです。 

こちらの企業は定年まで勤務が可能とのことで、先のことを気にせずに介護との両立ができる、ご本人も納得の再就職先に決定となりました。 

Uターンに限らず次のステージに踏み出すことを迷っている方へ  

介護に限らず、他の理由でもUターンでの再就職を一つの選択肢として考えられている方は少なくないと思います。今回のケースはご家族を残し、Uターンとはいえ知り合いのいない土地に単身で戻り、生活基盤を整えながら再就職活動を行うという、少し難しい事例だったかもしれません。 

しかし、ご本人の「お母さまの介護をご自身やりたい」という強い思いが、一つ一つの問題を解決したこと、またご自身の力で地元での人脈づくりを積極的に行ってきたことが、成功の要因だったというのはお分かりいただけたかと思います。お一人であれば少し躊躇してしまう行動も、私たちコンサルタントがお手伝いさせて頂くことで一歩踏み出すこともできると実感したケースでした。 

ちなみに、今回の事例の方も、家族の理解を得るための説得も容易ではなかったのではないかと思いますが、今はご自宅を地元の方の協力も得てさらにリフォームされ、ゆくゆくはご家族も九州に来てもらうことになったそうです。 

ただ再就職先を探すだけではなく、セカンドキャリア全般について一緒に考えさせて頂くのが再就職支援サービスです。私たちと一緒に次のことを考えてみませんか? 

キャリアコンサルタント 満田(ミツダ)

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