2021/05/12再就職に人脈を活かしていいのか?
再就職活動の支援をしている方から、「以前、一緒に働いていた方からお声がかかった」、「久しぶりに会った友人に会社を辞めた事を話したら、ちょうど人を探しているところを紹介してくれてあっという間に仕事が決まった」というようなご報告を頂くケースは、実はけっこう多いのです。実際、昨年一年間で私が担当した50代以上のご相談者の中で、3~4割の方はこのような『人との繋がり=人脈』がきっかけで再就職をされました。一方で、「再就職に繋がるような人脈なんてない」「知り合いに再就職のお願いなんてしていいの?」などの声も伺います。おそらく人脈を使うことによる抵抗感や、ご迷惑をおかけするのではないかという漠然とした不安感があるのではないかと思います。
今回は人脈を"使う"のではなく、人脈を"活かす"という視点で、結果的に再就職に繋がる可能性があるということをご紹介したいと思います。
人脈は今までの経験で培った大きなスキル
『人脈』の言葉の意味を辞書などで検索すると、『ある集団・組織の中などで主義・主張や利害などによる人と人とのつながり』と出てきます。そのため、人脈を個人の利害のために使う手段と捉えて、かなりパーソナルな再就職に人脈を持ちだしてきていいの?と、思われる方も多いでしょう。
しかし、私たちが用いる『人脈』は少し意味合いが違います。今までの職業人生を振り返ってみてください。これまで実施してきた仕事は一人では成立しなかったのではないでしょうか。仕事は大小問わず、社内外の方々と関わり、何らかのゴールに向かって進めていきます。その過程で交渉や調整、協力や選択などが繰り返されていきます。たとえいい結果が得られなくても、その過程で関わった方々との間に『人との繋がり=人脈』を築いているのではないかと思います。
皆さんが誠実に一生懸命取り組んできたことに対して築かれた『人脈』は、皆さんの実力や経験、そして仕事への姿勢やお人柄から培われる大きなスキルの一つなのです。これは、まだ期間として経験の浅い20代や30代前半の若手には、まだまだ備わりにくいスキルであり、40代や50代以上の再就職活動で活かせる大きな武器になります。
人脈がどうやって再就職に繋がるのか
ご自身が培ってきた大きなスキルである人脈を能動的に活用するには、『キャリアの棚卸』と併せて『人脈の棚卸』を行うことをお勧めします。ご自身のキャリアを振り返り、様々なキャリア経験を整理する中で、その時に一緒に仕事をした上司や、協力企業やお客様企業のご担当者なども同時に思い出してみましょう。久しぶりに近況をご連絡し、ご自身が『現在フリーの状態である』または、『今後やってみたいこと』などの状況もお知らせしてみましょう。在職されていて、これから会社を退職する場合は、必ず社内の方々に退職の挨拶をされると思います。その際に併せて、社外でお世話になった方々、一緒にお仕事をした方々にも退職のご挨拶をしましょう。メールでもお葉書でも良いと思います。実際にそのアドバイスを実行された方から、早速「元取引先からお声がかかり、トントン拍子に仕事が決まった」という報告を頂きました。ご自身がフリーになったという状況をお知らせするだけで十分なのです。
人脈から発展した求人で再就職する際に気をつけたい事
一方で、人脈を通じて再就職する際には気をつけなければならないこともあります。お互いによく理解し合っているという前提で進む為、その企業のことや業務の詳細を確認しないまま安易に入社してしまい、自分のやりたいことと合っていなかったり条件が合わなかったり、後悔することもあります。場合によっては入社後早々に退職するというケースもあります。
仕事内容やポジション、期待される事などの擦り合わせの他、待遇や社会保障に関することも必ず確認しましょう。知り合いなので聞き辛いことかもしれませんが、口頭だけでなく必ず書面にしてもらい、相違があれば、その点を説明して断るという決断も必要です。「お世話になった方だから」「せっかく声をかけて頂いたから」といって、気になる事を曖昧にしたまま入社し、早期に退職してしまっては、せっかく築き上げた『人脈』をも手放す事になります。
人生100年時代:『人との繋がり=人脈』は人生においても重要
仕事も一人ではできませんが、それ以前に生きていくこと自体、一人ではできません。是非、ご自身の『人脈の棚卸』を元に、久しく会っていない方やあらためて会いたいと思う方に、この機会にご連絡してみては如何でしょうか。懐かしい話を通して、ご自身のやりたかったことの気づきが得られたり、仕事への思いが甦ったり、再就職活動だけではない何か得るものもあるかもしれません。そして再就職をした先で、また新たな人脈を築き、人との繋がりを大切にしていきましょう。