2021/07/27時代の変化とともに変わる「履歴書」
履歴書の役割
今も昔も仕事を探す時、そして応募する時に必要になる「履歴書」。
初めて作成したのは学生時代のアルバイトや、新卒の就職活動の時でしょうか。そして今、再就職で久々に作成される方、独立起業をされる方もプロフィールをまとめたり、役所や行政機関へ申請するなど、キャリアの転機にはご自身の分身として先発部隊の役割を担ってくれるものです。久しぶりに履歴書の用紙を書こうとすると、文房具店やコンビニ等で様々な種類があるのに驚かれると思います。またWeb上でも多くのテンプレートが公開されています。2021年4月に厚生労働省からも新たな履歴書の様式例が発表されました。今回はこの履歴書の変化について、またその活用方法をお伝えしたいと思います。
多種多様に変化した履歴書
まず、よく驚かれるのが、大きさです。以前と比べて大きくなっていると感じられる方も多いのではないでしょうか。学生時代に使い残した履歴書があるので、と試しにそれに書いてみて、後に新たに購入された際には皆さん驚かれます。現在はA3の用紙を山折りしてA4の大きさとして提出するものが主流となっています。これは1997年に行政文書の100%がA判化*したこともあり、履歴書もそれに準じています。 もちろん人事の方は既にA判化したものに慣れておりますので、応募者側もA判のものを使用しましょう。
*行政文書の用紙規格のA判化に係る実施方針について
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0034&dataType=1&pageNo=1
次に種類の多さに驚かれます。 もともとJIS規格と呼ばれるものが基本として販売されていました。「JIS規格・A3・手書きで」等の指定が今でも官公庁の募集要領で稀に見受けられますが、その他の業界ではほぼ指定はありません。最近は「パート・アルバイト用」「新卒・第二新卒用」「キャリアアップ用」と応募される用途に合わせたものや、下敷きがついており綺麗な字で書けるという履歴書、また自己PRや営業成績が記載しやすくレイアウトされているものなど履歴書の右側の部分がバラエティに富んできている傾向があります。また、履歴書をパソコンで作成する事が都市部だけでなく地方にも広がってきており、「履歴書・様式」とインターネットで検索すると沢山の様式が出てきます。その様式に入力し、コンビニ等でA3サイズに印刷して郵送される方も一般的になってきました。ご自身のこれまでの経験やスキルを的確にアピールするために、履歴書の様式を選ぶ時代になったということです。
履歴書記載項目の変化
さらに今年になって基本とされていたJIS規格に準拠した履歴書が変化しました。今までも「本籍地」「押印欄」、もっと遡ると「家族の勤め先」等の欄が無くなってきました。今考えると、家族の勤め先まで書く必要があるの?と異様な感じもしますが、当時は何の疑いもなく記入していました。
今年の4月には厚生労働省より「新たな履歴書の様式例の作成について」発表がありました。今までは般財団法人日本規格協会(以下「日本規格協会」という)が、JIS規格の解説の様式例において示していた履歴書の様式例の使用を推奨していました。しかし、2020年7月に日本規格協会が、JIS規格の解説の様式例から履歴書の様式例を削除したことにより、厚生労働省において公正な採用選考を確保するという観点から、新たな履歴書様式例の検討を行い、厚生労働省履歴書様式例を作成したとのことです。つまり、JIS規格が無くなったので厚生労働省が新たに様式を作ったというわけです。今後はこの様式が浸透していくものと思いますが、現在一般的となっているJIS規格の書式がすぐ使えなくなるわけではありませんのでご安心ください。ちなみにJIS規格が無くなったのはLGBTを支援する団体から厚生労働省、日本規格協会等に対して履歴書様式の検討(性別欄の削除等)を求める要請が行われ、これを契機に、JIS規格の履歴書の様式例全体が削除され、厚生労働省が様式を作成したという経緯もあります。
JIS規格の履歴書と厚労省が作成した履歴書様式例の相違点としてはいかが挙げられます。*
- 性別欄を「男・女」の選択ではなく任意記載欄に変更。なお、未記載とすることも可能とする。
- 「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の各欄を様式内に設けない(各欄を削除する)こととする。
*令和3年4月16日 労働政策審議会安定分科会資料 より
「適性と能力、経験」が一層求められる時代へ
今まで当たり前に記載していた内容が変わることに驚きがありますが、世界から見ると、日本の記載内容のほうが驚きだったかもしれません。海外の選考書類には 顔写真、年齢や居住地も記載しないようになってきているそうです。性別・年齢・出身・家族環境・通勤距離さえも関係なく能力や経験、適性を重視して選考されるということが、日本でも定着するものと思われます。これまで以上に、ご自身の適性と能力、そして今まで培った経験や知識を、採用担当者が受け取りやすいボリュームや内容を見極め、伝え漏れなく記載することが重要です。そのためにはキャリアの基本的な考え方*のポイントを押さえ、ご自身の「WILL(やりたいこと)」「CAN(出来ること)」に加え「MUST(応募先から求められていること)」を冷静に捉えることが必要です。この3つが重なりあった部分を意識して作成することでポイントを押さえた応募書類を作成することができます。キャリアカウンセリングを通して一緒に整理していきましょう。
*キャリアの基本的な考え方
https://mpg.rightmanagement.jp/op/service/movie01.html
▼参考:厚生労働省「新たな履歴書の様式例の作成について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_kouseisaiyou030416.html