2026/06/1560代の再就職活動(前編) ~こだわりの再定義
「人生100年時代」という言葉が広く浸透して久しくなりました。長く働くことはもはや個人の選択ではなく、半ば社会的な要請となっています。 厚生労働省もその流れを後押しするように、企業に対して65歳までの雇用確保を義務付け、さらに70歳までの就業機会を確保する努力義務を課しています。制度面だけを見ると、「定年は65歳、あるいは70歳」という時代が目前にあるように感じられます。
しかし、多くの企業ではいまだに60歳定年が主流であり、このギャップが60代の再就職において壁になっていることは事実です。
では、60代はどのように再就職活動をしていけばいいのでしょうか。
今回は2回に分けて事例をご案内します。前編では、「こだわりとどう向き合うか」という共通テーマのもと、2つご紹介します。
事例①:長年の経験を応用して新たなチャレンジ!
60歳 男性 医療機器メーカー2社に勤務
医療機器業界にて、機器の修理やカスタマーサポートに長年従事してきた方の事例です。再就職にあたっては、「自宅から30分以内」「今までのキャリアを生かした職務内容」を優先しました。都心からはかなり離れた地域にお住まいだったため、自宅近くとなると正社員だけでなくパートアルバイトも含めて探す必要があることを念頭に置きながら活動がスタートしました。30年以上医療機器に携わってきたため、愛着もこだわりもあり、当初は医療機器に少しでも関係のある業種をあたりましたが、手ごたえはゼロ。また、カスタマーサポートはシフト勤務や客先での対応が多く求められることもあり、若手を好む傾向があったようでした。
そこで担当コンサルタントと共に今一度ご自身のやりたいことを整理したところ、業種以上に「誰かをサポートすること」が優先であることや新たな学びを得るのが好きであることに気づかれました。
また、担当コンサルタントから、自宅近郊が良いということであればハローワークに地元の求人が多いのでは?とアドバイスを受け、ハローワークの求人に重点を置いてサポート系の仕事を検索。結果的に、自宅から徒歩圏内のIT企業にて、契約社員として社内ヘルプデスクの再就職が決まりました。業種ではなく「誰かをサポートすること」が本質であると気づいたことで道が開けました。
業種は違いますが、長年のサポート経験を評価して頂き、また60代でも新しいことを学んでいきたいという熱意が伝わった結果となりました。常駐先は生命保険会社だそうで、医療機器とは違う領域ですが、社内からPC関連の問い合わせを受け、勉強しながら日々対応しているそうです。
【事例のポイント】
・こだわりから脱却し、マインドチェンジを行えたこと
・業種ではなく自分が本当にやりたいのは「誰かのサポートをしたい」ということに気づけたこと
・求人を探す場所(媒体)を地元求人が豊富にあるハローワークに重点を置いて求人探しをしたこと
事例②:好きなことを貫く!切り口を変えてたどり着いた仕事
65歳 男性 メーカー、物流企業など5社で勤務
もともとメーカーで30年ほど国際調達業務に携わっていましたが、物流プロセスに強い関心を持つようになり物流業界へ転職。倉庫の入出庫管理をしながら60歳定年を迎え、再雇用後も倉庫関連業務に従事していました。65歳を迎えていよいよ退職となりましたが、身体を動かしていたい、現場に居たいという気持ちが強く、再就職を希望されました。
英語ができ管理業務中心のキャリアでしたが、さすがに65歳で同業務はなかなか求人がありません。しかし物流への熱い想いや、少しでも長く現場に身を置きたいという希望は捨てきれませんでした。
そこで担当コンサルタントと相談し、倉庫内ピッキングのアルバイトに照準を定めることになりました。応募するにあたり担当コンサルタントから受けたアドバイスは「健康であることをアピールする」「目線は低く」の2つです。
採用側はご年齢から健康面の不安を抱きがちですが、日常的にスポーツをしており、身体を動かすことが好きであるとアピールしました。また、いままで管理する側だったのが管理される側に変わるため、期待する業務をしっかり対応できるのかもポイントですので、「何でもやります」という姿勢もアピールしました。その結果、採用側の不安が払しょくでき、見事採用が決まったのです。
長く関わっていた倉庫でまた仕事ができ、満足できる結果となりました。
【事例のポイント】
・日常的な健康管理をアピールすることで、年齢からくる体力や健康面の不安を払拭できたこと
・雇用形態やこれまでのキャリアにこだわらず、その業界にいられるなら「何でもやる」という柔軟な姿勢
まとめ
この2つの事例に共通しているのは、「こだわりを捨てる」のではなく、「こだわりの本質を見直す」ことです。
- 業界ではなく「役割」に着目する(①)
- 職種ではなく「何に関わっていたいか」に着目する(②)
この発想の切り替えが、選択肢を広げたと言えるでしょう。
後編では、「自ら機会をつくる」「人とのつながりを活かす」という視点から他の事例をご紹介します。