2026/02/17就職活動でAIは使っていい?キャリアコンサルタントが伝えたい正しい付き合い方
近年、就職活動の場面でもAIを活用する方が増えてきました。応募書類の作成や自己分析に使えると聞き、興味を持つ方も多いと思います。
その一方で、使ってはいけないのではないか、評価が下がるのではないかと、不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、実際の活動中の方の事例をもとに、AIとの上手な付き合い方をご紹介します。
事例1:AI任せの職務経歴書に足りなかった要素
まずは、職務経歴書の作成にAIを活用した事例をご紹介します。
私が担当している活動中の方は、これまでの職歴を「アナログ回路設計」や「生産管理」、「生産稼働率5%向上」などのキーワードのみで入力し、職務経歴書の作成をAIに任せました。
出来上がった文章は文章も体裁も整っており、一見すると完成度は高く見えました。しかし読み込んでみると、誰にでも当てはまるようなテンプレートのような文章で、「自分らしさ」が全く感じられませんでした。
その方は本来、自分の仕事に対して並々ならぬ誇りと情熱をお持ちの方です。それなのに、その想いがまったく伝わってこないことに、私は大きなもどかしさを感じました。ご本人も「決して悪くはないが、どこか機械的でオリジナリティが感じられない」としっくりこない様子でした。
そこで、私は「AIに、『仕事へのこだわり』を教えてあげましょう。どうやって生産稼働率を5%上げたのか、その時どんな想いだったのかを、そのままぶつけてみましょう」とその方に提案をしました。
この方は「納期遅延を防ぐために、現場を歩き回って〇〇の仕組みを提案した」「ミス防止のために□□を徹底した」といったようなその方にしか語れないエピソードをAIにインプットしました。
すると、それまで事実の羅列だった文章に、仕事への姿勢や価値観が宿り、その方の熱量がしっかりと伝わる、唯一無二の職務経歴書へと進化したのです。
なぜ自分らしさが出なかったのか
このケースでは、AIに伝えた情報が、職歴や成果といった客観的な事実のみと十分に伝えきれていないことが原因でした。
AIは正確にまとめることは得意ですが、その人の価値観や姿勢までくみ取ることは難しいのです。
- 仕事にどのような姿勢で向き合ってきたのか
- どのような工夫を重ね、どのようなプロセスで成果に繋げたのか
こうした、その人の背景や考え方などの、内面のストーリーが不足していたため、文章としては整ってはいたものの、その方らしさや熱量が感じられない内容になっていました。
まずは、自分の経験や強み、そして、仕事を通じて大切にしてきたことや、考え方を簡単にでも言語化し、そのうえでAIに渡してみましょう。
AIは情報の整理や文章化は得意ですが、「何を強みとして伝えるか」「どの経験が価値につながるか」 そうした判断は、やはり人間の視点が欠かせないのではないでしょうか。
まずは自分で経験や強み、想いを整理し、そのうえでAIを活用することが大事です。そして、最後には必ず人の目で全体を見直し、読み手にどのように映るかを確認しながら整えていきましょう。
ただ、自分一人では、伝えたい想いと読み手の受け取り方にズレが生じることもあるかと思いますので、キャリアコンサルタントなど第三者の視点を通して経験を整理し、「その人らしさ」と「評価されるポイント」を効果的にアピールできるようにしましょう。
事例2:外国人面接官との面接対策で気づいた、AIの意外な落とし穴
続いて、面接対策でAIを活用した方の事例をご紹介します。
外資系企業との面接を控えている方が、AIを使用して、外国人面接官との面接対策を行いました。質問の想定や回答の整理にはスムーズに進み、文法も構成も完璧な英語が短時間で形になることに驚いたそうです。
しかし、実際にやりとりを始めると、ある「違和感」が壁として立ちはだかりました。
日本特有の「行間を読んでほしい」という奥ゆかしさや、周囲との調和を重んじる謙虚な表現が、AIには「自信がない」「結論が曖昧」と厳しく評価されてしまったのです。
その方は「自分の大切にしている価値観が、AIから否定されたような気がする」と少し、落ち込んでいらっしゃいました。
そこで、まずはその方が感じた違和感を、一つずつ一緒に整理し、AIに「回答を教えてもらう」のではなく、「自分の大切にしている価値観を、どうすれば異文化の相手に誤解なく届けられるか」をAIと一緒に徹底的に議論し、理解させることにしたのです。
「私の強みである『調和』は意見を言わないことではない。多様な意見を統合して、皆が納得感のある着地点を作ることを言っています。そこを論理的に翻訳してください」といったように、プロンプトを磨き、根気よく対話を重ねていきました。
すると、AIは翻訳機能だけではなく、その方の想いを世界基準のロジックに変換してくれるツールへと変貌を遂げました。
最終的には面接の場でも無理なく使える、現実的で自分らしい表現へと変化させることができました。
AIは使いながら育てる相棒
上記の経験により、AIは文化的なニュアンスや価値観の捉え方などの微妙な温度差については、上手にくみ取れないことがわかりました。
日本的な曖昧さや間の取り方は、どうしてもずれが生じてしまったのです。ですが、この方はAIの回答に違和感を覚えながらも、その違和感を手掛かりに自分の考えを深めていきました。
自分の想いを注ぎ込み、AIと何度も対話を繰り返すことで、「何を重視しているのか」「自分らしい表現は何か」が徐々に明確になっていったのです。
その結果、面接では落ち着いて自分の言葉でしっかりとアピールでき、見事内定を獲得されました。
AIは簡単に完璧な答えをくれる、魔法の杖ではありませんが、使う人の姿勢によって、最高の相棒にもなるということが実体験として理解できた事例でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。使い方によって、AIは機械的で画一的にもなり、一方で対話を重ねることで心強い支えにも相棒にもなるということがお分かりいただけましたでしょうか。
「代わりにやってくれる便利なもの」ではなく、「自分の活動を支えてくれる相棒」としてAIを捉えてみると違った見方になるかもしれません。
相棒なので、あなたのことを詳しく知らなければ的確な答えは出せませんし、こちらが期待する細かい部分まで完璧な回答を出すものではありません。これまでのご自身の考えやご経験を踏まえ、AIの回答を鵜吞みにはせず、うまく活用して再就職活動に活かしましょう。
とはいえ、具体的にどのツールが良いのか、どのような活用方法が効果的かなどご不明点は担当コンサルタントにもご質問ください。それこそAIに「私は今再就職活動中です・・・あなたをどのように活用したらよい?」 と対話をしていってもいいかもしれませんね。AIと上手に付き合いながら、納得のいく再就職活動を進めていきましょう。